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ラスボスと空想好きのユア 3 More Adventures  作者: ReseraN


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第2話「やらかし老師」

 異世界・フィーヴェ。

 ここは、イマスト(ファイブ)の舞台となった世界。


 現実世界・リアリティアと空想世界を行き来出来るユアは、時々こちらに顔を出していた。

 今日は、老師・イポンダートに呼び出されていた。


「何と言うことをしたんじゃ?!」


 出会い頭、ユアは怒鳴られた。

 理由は一つしかない。


「チアーズ・ワンドは、異世界で戦うための武器じゃ! それを、戦いとは無縁のリアリティアで使うとはぁ!」


「しょうがないじゃないですか。買ったばかりのゲームを、取られたんですから!」


 怒られても、ユアは負けじと言い返した。


「相手をケガさせたら老師転倒……いや、本末転倒じゃろう!」


 イポンダートはギャグを交えながら叱った。

 彼は時々、わざと言い間違えて人の笑いを誘おうとする。しかし、いつも誰も笑わない。


「金払ってくれるだけいいじゃねぇか。“泥棒はウソつきの始まり”って言うし」


「そういう問題じゃねーし、ウソつきが泥棒の始まりだからな!」


 ツンツンヘアの金髪の武闘家・オプダットが言い間違えながら言った。

 それに対して、赤い髪を一つに結んだ王子であり勇者のフィトラグスが訂正した。


「断りもなく、人のものを盗った時点で泥棒だよ」


 青いうねりヘアをした白魔導士・ティミレッジがユアを庇った。


「相手が悪いにしてもじゃ。異世界の武器を、リアリティアで使うことは許さん! ケガはもちろん、建物を壊したら、どう責任を取るつもりじゃ?!」


 イポンダートは声を荒げ続けた。

 ユアは腑に落ちず、返事すらしなかった。


「人のことを言えるのか?」


 ソファに足を組んで座っていた、紫色の長い髪の元魔王・ディンフルがこちらへ向いた。

 他の者が、一斉に彼を見た。


「どういう意味じゃ……?」


「忘れたわけではあるまい? 前の戦いが終わって、まもなくのことを」


 思わず冷や汗をかくイポンダート。さらに睨みつけるディンフル。

 それは、前の戦いが終わった直後の出来事だった。



 戦いの後、ディンフルはようやく古城を取り戻した。

 しかし、城は半壊し、すぐに住める状態ではなかった。

 そこで、白魔導士のティミレッジに魔法で直してもらうことにした。


「少しでも名残があるなら、すぐ元に戻りますよ」


 彼はディンフルを安心させるため、優しく言った。

 ディンフルは、「これで城が戻る」とすでに安堵していた。


 ところが古城は大きく、ティミレッジ一人の力では不足しそうだったので、イポンダートも力を貸すことにした。

 ユア、ディンフル、フィトラグス、オプダットに見守られながら、ティミレッジとイポンダートは呪文を唱え始めた。


 しかし、詠唱中……。



「ひえっくしょいわぁーーー!!」



 突然、イポンダートが耳をつんざくような声量でくしゃみをし、その反動で別の魔法が発動してしまった。

 魔法による衝撃波により、半壊していた古城は跡形もなく、吹き飛んでしまった。


「あっ……」


 全員、言葉を失った。

 目の前にあった大きな城が、老人のくしゃみ+魔法で吹き飛び、一瞬で更地となったからだ。


「し、城は……?」


「……すまん」


 呆然とするユアへ、イポンダートが謝った。


「ティミレッジ、戻してくれ……」


 さらに、ディンフルも唖然としながら、ティミレッジへ頼んだ。

 だが、答えは……。


「すいません。カケラが一つも無くなったら、戻すのは不可能なんです……」


 ティミレッジはおどおどしながら答えた。

 今のディンフルの心情と、この後、何が待っているのか手に取るようにわかったからだ。


 答えを聞き、ディンフルは時間差で膝から崩れ落ちた。


「ディン様!」

「ディンフル?!」


「俺の城が……」


 ユアとオプダットがあわてて駆け寄ると、ディンフルの口から絶望のトーンで言葉が漏れた。

 残されたフィトラグスは、イポンダートを睨みつけた。


「ほ、本当にすまん……」


 彼は再び謝った。


「し、しかし、あんなところに城があるのも、不運じゃったのう……」


 付け加えられたセリフで、ディンフルの怒りのボルテージが一気に上がり、立ち上がってイポンダートへ詰め寄った。


「なら、城が悪いと言うのか?! 貴様がくしゃみをするから、こんなことになったのだろうが!!」


「仕方ないじゃろ! わしだって、くしゃみを抑えられる年齢じゃないんじゃから!!」


 ディンフルが怒号を上げると、何故か老師までキレ始めた。


「何故、貴様がキレる?! 年齢を言い訳にするなぁ!!」


 こうして、ユアたちはしばらく延々と、師弟のケンカを見せつけられたのだった。



 時は戻って、現在。

 ここはインベクル王国、ビラーレル村、チャロナグタウンより、ちょうど中間の位置。

 今いるアジトはフィトラグスらの手によって作られ、ディンフルはここで暮らしていた。


「イマスト(ファイブ)にビルダー機能があって、よかったね」


「まったくだ。そのおかげで、遠い距離を飛ばなくて済んだからな」


 ディンフルは以前、北の古城からインベクル王国まで、長距離を飛んでいた。


 そして、仲間内だけで集まれるということで、他の者も安堵していた。

 大抵、集まる場所はインベクル王国の中庭だった。

 城下町を通り、門番に許可をもらい、さらにメイドへフィトラグスを呼びに行ってもらうなど、行程が多かった。


 ここは城ではないので皆、のびのびと過ごせた。

 自分たち以外の目がないのも大きかった。


「距離も近くなったし、ここでは体を伸ばせるからな~」


「“はね”って言いたいの……?」


 リラックスしたオプダットへ、ティミレッジが訂正した。


「アジトのことは良い! わしも心から反省しとるから、もう言うな! あれからご飯が三杯しか喉を通らんのじゃぞ!」


「食べられる辺り、反省していないな……?」


 イポンダートを睨みながら、ディンフルが大剣を出した。

 ユアがあわてて「まあまあ!」と(いさ)めた。


 ディンフルが大剣をしまったところで、老師は改めて言った。


「話を戻すが、ユアはしばらくチアーズ・ワンドを没収じゃ!」


「えっ?! 向こうが悪いし、ケガもさせてないのに……」


「倒れた時点でケガになるじゃろう! どっちみちチアーズ・ワンドは、メンテナンスとやらを受けてもらわねばならん!」


 フィーヴェでは聞き慣れない言葉に、ユア以外の四人が耳を傾けた。


「メンテナンスって、不具合を確認するためのか?」


 リアリティアに行き慣れているディンフルが尋ねた。


「そうじゃ。実は、あれにはアップデートが必要なのじゃ」


 さらに「アップデート」まで出て来たので四人は眉をひそめ、ユアは唖然とした。


「チアーズ・ワンドにも、メンテやアプデの概念があるの?!」


「なら、こちらも見ていただきたい」


 そこまで言うと、ディンフルは立ち上がり、自身のマントを掴んで見せた。

 裾がボロボロだったり、ほつれて縦方向へ少し裂けていた。


「どうしたの、それ?」


 他の四人が驚きの目を向け、代表してユアが尋ねた。


「最近、すぐに破れるのだ。白魔法で回復しても一時は戻るが、すぐにこうなってしまう。これは寿命とやらか?」


 仲間たちへ説明した後で、ディンフルはイポンダートへ聞いた。


「このマントは、攻撃を防いでくれるだけでなく、変身や冷暖の魔法もある優れものだ。よほど、強い魔力に当たらなければ破れないが、ここに来て急に劣化している。チアーズ・ワンドと一緒に見てもらいたいのだが?」


 ディンフルが頼むと、イポンダートは急に「あぁ~」と何か思い出したように言った。


「すまん、ディンフル。実はの……」


「何だ? ……今度は、何をやらかした?」


 もうやらかした前提で、ディンフルが尋ねた。


「ユアのケープぐらい短く、あまり使用しないものならともかく、お主のマントは定期的なメンテナンスが必要なんじゃ……」


「何っ?! “定期的”ということは、どれほどの頻度だ?!」


 イポンダートは思わず声が小さくなり、たどたどしく答えた。


「……月一じゃ」


「月一ぃ?!」


 ユアたち四人も声を上げた。

 今の発言で、城を吹き飛ばされた時と同じく、ディンフルの怒りが爆発した。


「ふざけるなぁ!! 何故、そんな大事なことを忘れていた?! このマントは、もうすぐ二年になるのだぞ!」


「本当にすまん……! ほら、わしって忘れっぽいからぁ!」


 イポンダートは老いぼれた顔に似合わず、可愛くウインクをし、ペロッと舌を出して見せた。


「キャラに似合わぬ顔をするなぁ!!」


 もちろん、怒り心頭のディンフルはごまかせなかった。

 結局、ユアたちはこの後も彼の怒号を聞き続けるのであった。

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