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ラスボスと空想好きのユア 3 More Adventures  作者: レセラン
第1章 新たな問題

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第13話「今後」

 ディンフルのアジトに、突然現れた老婆・エプンジーク。

 まずは緊急性が高いとのことで、ディルルについて相談をした。


「う~む……。黒い人影に、戦闘力に()けたディファートの能力すら貫通する力……。そして、その力を浴びたら、性別が変わった上に子供になったと……。前例にないのう」


「ないのか……」


「そう落ち込むでない。異世界へ行けば、何かしらの力を得られるやもしれん。この女子(おなご)がこちらへ来たようにな」


 エプンジークはリサキを指して言った。

 ユアたちは、彼女が異世界から来たことを知ったばかりだった。


「フィーヴェの出身ではなかったのか……?」


 古い知り合いであるディルルも、この事実を初めて知った。


「あとでゆっくり言おうと思っていたのに、残念だ。でもさすがに、どこの世界から来たかって言うのはわからないよな、ばあさん?」


「わしが網羅(もうら)しているのは、フィーヴェのことだけじゃ」


「残念だ」


 リサキは肩をすくめた。

 セリフとは真逆で、声のトーンはどこか楽し気に聞こえた。


「それよりも魔王を戻すには、フィーヴェの力では無理かもしれん。異世界へ行く必要がある」


「そんな……。ジュエルでもダメなんですか?」


 ティミレッジは自身の杖の先端の窪みにはまっている青いジュエルを見せた。

 これは前回の旅で手に入れた宝石で、フィトラグス、オプダット、ディンフルもそれぞれの色のジュエルを持っていた。


「ジュエルは力を高めるもので、願いを叶えるものではない。どんな呪いでも解くというのなら、虹印(こういん)とやらを集めるしかない」


「虹印?!」


 リサキを除く五人が、一斉に声を上げた。


「虹印って……異世界で王様がくれる印のことですよね?」


 ユアが聞くと、エプンジークは驚いた目で彼女を見つめた。


「何じゃ。もう知っておったのか」


「僕たち、今年初めの旅で、それを集めていたんです!」


「久しぶりに聞いたぞ。懐かしいな」


「“ごぶたさ”だな!」


「“ご無沙汰”だ、バカ者」


 ティミレッジが報告し、フィトラグスが懐かしがり、オプダットの言い間違いをディルルが訂正した。


「そういや、集めていた虹印って、どうしたっけ?」


「ユアが超龍に飲まれた時、集めていた五つから光が出た。あの後、超龍が消えたから、虹印も消えた可能性が高い」


 ユアはディルルの説明を聞き、胸を痛めた。

 自身が超龍の体内にいた時、虹印の光が助けてくれた。


 その時に、エンヴィムの幻影も現れた。

 ユアは彼を思い出して、少しだけ気分が沈んでしまった。


「どうした? 急に暗い顔して?」


「あ、いえ……」


 心配したリサキに声をかけられ、ユアは取り繕った。


「虹印は五つ以上あれば、力を発揮すると言われておる。そして、何度使ってもなくなることはない。むしろ、集めれば集めるほど力は強くなり、叶える願いの範囲も広まっていくものじゃ」


「範囲が広がる? 至難と言われて来た超龍を倒す願いも、たったの五つで叶えてくれたぞ」


「あれは、超龍がだいぶ弱っていたからじゃ。もし万全な状態なら、叶えることは不可能じゃった。それよりも、今は魔王を戻すことだけを考えるのじゃ」


 エプンジークがそう言うと、ユアが肝心なことを思い出した。


「そう言えば……虹印帳(こういんちょう)って今、誰が持ってるの?」


 前々回の戦いが終わった後、虹印帳の行方はわからなくなった。

 ディルルや仲間たちは頭をひねった。


「誰も持ってないの……? 捨てたりはしてないよね?!」


「まさか! あんな大事なもの!」


 ユアが悪い想像をすると、ティミレッジが全力で否定した。

 ところが、その彼も虹印帳がどこにあるのかわからない。



 その時、アジト内に強い風が吹きつけた。

 開けた覚えのない窓が開いており、窓際には手帳サイズをした分厚い本・虹印帳が置いてあった。


「タイミング良いな……」


 フィトラグスが呆れながらそれを取ると、虹印帳の下に紙切れを見つけた。


「あれ? 手紙もあるぞ」


「誰からだ?」


「……イポンダートからだ」


 手紙の序盤に記された名前をフィトラグスが読み上げた。

 すると、すかさずエプンジークが手紙を奪い取り、音読し始めた。


「“イポンダートじゃ。急にすまん。わけあって、このまま旅立たせてもらう。わしにしか出来ん用事がある時だけ、探してくれ。虹印帳は超龍の戦いの後、わしがひそかに預かっておった。ディンフルが大変らしいが、虹印を集めれば何とかなるじゃろう。今はそれしか言えん。だから、頑張るのじゃ。追伸。ディンフルのマントと、ユアのチアーズ・ワンドはもう少し待ってくれ。早くても十年以内には出来るはずじゃ! では、サバラン”」


 おそらく、「さらば」をわざと言い間違えて「サバラン」と書いたのだろう。

 最後までイポンダートらしい手紙だと、ユアたちは思った。


 ところが、エプンジークは手紙を読んで、ますます相手への怒りが募っていった。


「何が“サバラン”じゃ?! あのジジイ! 人が怒っている時に、ボケをかましおって! 一度も面白いと思ったことがないっ! あたしへの請求書はどうなっているんだい?!」


 エプンジークにとっては、老師の浪費癖の方が心配だった。


 一方で、ユアは虹印帳を手に取り、久しぶりに開けてみた。

 中には、菓子界、水界(すいかい)炎界(えんかい)緑界(りょくかい)に加え、惣菜界という行ったことがない異世界の虹印がそのままあった。


「本当に懐かしいな……」


「僕たち、フィーヴェへ戻るためにランダムに旅したよね!」


 フィトラグスとティミレッジも横から見て、虹印集めを振り返った。


「今回は魔法も使えるし、みんな前より強くなってるから、虹印集めも楽々だぜ!」


「どうだろうな? 俺はこの有様だし、マントも預けている。ユアもチアーズ・ワンドがないのだぞ」


 楽観的なオプダットへ、ディルルが水を差すように言った。


「これからだが、ユアはディルルを連れてリアリティア、もしくはミラーレにいてくれ」


「えっ?!」


 フィトラグスから告げられると、ユアとディルルが同時に声を上げた。


「ディルルの戦い方からして、戦闘力がだいぶ落ちている。連れて行くのは危険だ」


「さ、さっきのは、大剣が重かったからだ……!」


「でも、パンチも効いてませんでしたよね?」


 言い訳するディルルだが、ティミレッジに指摘され、言葉をつぐんだ。

 再びフィトラグスが言った。


「ユアもチアーズ・ワンドがないから、ディルルについていてくれ」


「わかった」


 ユアも今は、仲間たちの足手まといになる恐れがあったため、素直に受け入れた。

 それを見てディルルも渋々、承諾した。


「どっちみち、ユアちゃんは入試の勉強をしなきゃいけないからね」


 ティミレッジが大学入試を思い出させると、ユアたちの目の色が変わった。

 ユアは恐怖へと、ディルルは闘志を燃やすように。


「……そうだな。体は小さくなっても、勉強は出来る。俺をかくまっている間は、しっかりやってもらうぞ! もちろん、スパルタで行くからなっ!」


「こうなるのか……」


 勉強を教える気満々のディルルに、早くも気落ちするユア。

 今からでもチアーズ・ワンドを返してもらい、旅に出たい気分だった。


 こうして、ユアたちの次の行動が決まった。

 そんな中、リサキが提案した。


「じゃあ、ディンフルと異世界は頼んだ。あたしは、フィーヴェのモンスターを何とかするよ」


「フィトラグスを手伝うのではないのか?」


「本当ならそうしたいけど、フィーヴェのモンスターも心配だからさ」


 ディルルに尋ねられ、リサキが答えた。

 フィーヴェには今もモンスターがいる。そちらも何とかしなければならなかった。


「思ったのだが、リサキは何のためにフィーヴェへ来たのだ?」


 やはり、異世界出身という点が気になり、ディルルが再び尋ねた。


「ある敵を探している。そいつは今、フィーヴェに潜んでいるらしい。そういう意味でも、あたしはこっちにいたいんだ。教えられるのはここまでだ」


 先ほどまでウインクやドヤ顔をして来たリサキだが、目的を話す時の顔つきは真面目そのものだった。

 詳細はわからないが、彼女の目的が少しだけわかった。


(本当に、ただの知り合いなのかな……?)


 それでもユアの脳裏には、ディンフルにキスをするリサキの姿が焼きついて離れなかった。

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