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ラスボスと空想好きのユア 3 More Adventures  作者: ReseraN


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第12話「逃亡」

 フィーヴェ。

 ユアが、倒れたディルルを抱えてリサキに見入っていると、フィトラグスたちが駆けつけて来た。


「リサキ! どこに行ってたんだ?」


 目の前の相手に聞くフィトラグスへ、ユアは違和感を覚えた。


「え? 知り合い……?」


「昨日、フィットが森から一緒に帰って来たんだよ。”リサキさん”って言って、ディンフルさんの古い知り合いみたいなんだ」


「今は、アジトでディンフルと二人で暮らしているんだってさ」


 ティミレッジとオプダットが教えてくれた。

 特にオプダットの説明で、ユアは思わず固まってしまった。


「ディン様と……二人で暮らしてるの?!」


 そんなユアを見て、フィトラグスが「そんな説明じゃ誤解されるだろ!」とオプダットを小突いた。


「安心しな! あたしとディンフルは、恋仲じゃねぇ! ディンフルには、ウィムーダって想い人がいることも知ってるからさ!」


「ウィムーダさんのことまで知ってるの?!」


 リサキはディンフルとは恋仲でないことを男口調で証言した。

 自身たちしか知らされなかった過去を相手が知っており、ユアはまた驚愕した。


 どうやらリサキから事情を聞いたらしく、フィトラグスへの誤解も解けていた。



 気絶したディルルをソファに寝かせ、ユアはリサキについて教えてもらった。

 改めて、自己紹介が始まった。


「あたしはリサキ。素性は言いたくないが、君らの敵じゃないことは確かだ!」


「わ、私はユア! あなた、イマスト(ファイブ)にいないよね?」


「イマスト・ファイブ……?」


 首をかしげるリサキへ、ユアが説明した。


「このフィーヴェが舞台となっているゲームだよ」


「フィーヴェが舞台のゲーム? 君、リアリティアから来たのか?」


「は、はい。リアリティアも知っているの?」


「ああ。異世界の中では“絶対に行けない幻の世界”として有名だからな! そんな子がここにいるなんて、すごいな! どうやって、来たんだ?」


 リサキはリアリティアに憧れがあるのか、目を輝かせながらユアへ尋ねた。


「ユアちゃんには生まれつき、リアリティアと異世界を行き来する力があるんです」


 代わりにティミレッジが答えた。


「行き来? しかも、生まれつき……? 君、もしかして、ディファートか?」


 リサキの率直な質問に、フィトラグスら三人がむせ返った。


「な、何を言っているんだ?! ユアがディファートなわけ……な、ないだろ!」


「そ、そうですよ! ユアちゃんは生まれも育ちも、リアリティアですし、人間ですよ!」


 フィトラグスとティミレッジがあわてて否定した。


「でも、生まれつき変わった力が使えるって、ディファートしか考えられないだろ」


 リサキは容赦なく言い続けた。

 フィトラグスたちからすると、今はユアにバレて欲しくなかった。


「確かにディファートっぽいよな、ユアの力……。もしそうなら、ディンフルに続いて二人目だな、ディファートの友人!」


 オプダットも否定したつもりだったが、どう見ても肯定に近かった。

 ティミレッジは血の気が引き、フィトラグスは「てめぇ、この野郎」と言わんばかりにオプダットを睨みつけた。


「私がディファート……?」


 ユアが口を開くと、仲間たちは一斉に身の毛がよだった。

 もしユアにバレてしまえば、ディンフルからの「まだ言うな」という忠告を破ってしまう。


「それはないな~。だってティミーの言うとおり、リアリティア生まれだし、今まで誰からも“お前はディファートだ”なんて言われたことないも~ん」


 ユアは苦笑いし、まるでおばさんが話す時のように、片手で宙を叩く動作をしながら言った。

 本人があっさりと否定したため、フィトラグスとティミレッジは胸を撫で下ろした。


「いっぺん、調べてもらったらどうだ? だってその力、どう見たって……」


「そ、それより、ディルルをどうするか考えようぜっ!」


 まだ引き下がらないリサキを、フィトラグスが必死にさえぎった。

 ティミレッジとオプダットも、彼に続いて「そうだね」「そうだな!」と熱心に同調した。


「わ、わかった。でも信じられないな。この可愛い子が、あのイケメンに育ったディンフルだとは……」


 ようやく、リサキの意識がユアから離れた。

 三人は安堵から、今度は深くため息をついた。



 その時、一行の前に白い光が輝いた。

 光はたちまち人の形になり、中から老師・イポンダートが姿を現した。


「イポンダートさん?!」


 全員が驚きの表情をし、ユアが代表して声を上げた。


「何の用じゃ?」


 しかし何故か、やって来た側の老師から謎の質問が出た。

 ユアたちは思わず、ずっこけそうになった。


「それ、俺らのセリフだから……」


「冗談じゃ! 実は、お主らに話があって来たんじゃ」


 フィトラグスがツッコむと、イポンダートは急に真面目な顔をして言い出した。


「話? ちょうど良かった。僕らからも、相談があるんです」


 ティミレッジが切り出すが、老師は早速、自分の用件から話し始めた。


「わし、引っ越すことにしたんじゃ」


「えぇっ?!」


 唐突な知らせに、ユアたちは声を上げた。


「引っ越すって……どこに?!」


「わからん」


 オプダットが切迫した様子で聞くも、相手はあっけらかんとしながら答えた。


「じゃあ、もうあの山を登らなくて済むんだな?!」


 イポンダートが引っ越すと言うことは、フィトラグスは過酷な山に登らなくて済むことを喜んだ。

 すぐにティミレッジが、再び切り出した。


「そうじゃないでしょ! イポンダートさん! 僕らからも、聞いて欲しいことがあるんです!」


「すまんが、聞いてやれん。何せ、早めに去らねばならんからのう」


「そんなこと言わないで聞いて下さい! ディンフルさんが大変なんです!」


「わしも大変なんじゃっ!!」


 ティミレッジが声を大にするが、相手からそれを上回る声量でさえぎられてしまった。


「大変って何が……?」


 ユアがそこまで聞いたところで、アジトのドアが勢いよく開いた。

 驚き、振り返る一行。

 ドアは勢いがつけられ過ぎて、外れてしまった。


「ドアが!? ……あれ?」


 ユアがドアに目をやった時、入って来た人物の顔も見えた。

「フィーヴェの物知りばあさん」として知られている老婆・エプンジークが恐ろしい形相で立っていた。

 小柄な体に杖をつき、すっかり白くなった髪は足元まであった。


「エプンジークさん?!」


「イポンダートは?!」


 エプンジークは入って来るなり、憤慨しながら聞いた。

 一行が、イポンダートが立っていた場所を指さすが、すでにもぬけの殻だった。


「いつの間に?!」


 エプンジークは許可を取らずに、ズカズカとアジトの奥まで入って来ては、辺りを見回した。


「……逃げられたか。あのジジイ! 今日は、本格的に離婚手続きするために来たって言うのに!」


 エプンジークは、老師・イポンダートの妻。

 だが、イポンダートの浪費癖が原因で今は別居中。


「離婚するのか?」


「ああ! あのジジイの請求書が、何故かあたしのとこにいっぱい届くんだよ! あの野郎、今月も酒にギャンブルなど、無駄な金使いやがって! しかも、あたしのとこに届くってどういうことだいっ?!」


 エプンジークは怒り心頭だった。

 これには、ユアたちも同情せざるを得なかった。


「酒代やギャンブル代を、エプンジークさんに払わせているんですか……?」


「最低な夫だな……」


「だから、逃げるように引っ越したんだな。まぁ、どう考えても、じいさんが悪いが……」


 ユア、フィトラグス、オプダットの順に、イポンダートの感想を述べた。

 一方で、ティミレッジは自分の両親が離婚しており、複雑な心境からか苦笑いするしかなかった。


 最後のオプダットの意見を聞き、エプンジークの目がさらに血走った。


「“引っ越す”って、あいつが!? 教えてくれ! あいつはどこに行ったんだ?!」



「探索魔法があれば、簡単だ」



 お腹に掛けていたひざ掛けを持ちながら、ディルルが起きて来た。


「ディン様! 具合はどう?」


「どうもこうも、うるさくて寝てられぬ! この際、エプンジークでも構わん! 俺を元に戻して欲しい!」


 ディルルは(わら)にもすがる思いで、老婆へ頼み込んだ。

 しかし、今のエプンジークの頭の中はイポンダートのことでいっぱいだった。


「な、何が起こっているのじゃ……?」


 エプンジークはディルルを凝視した後で、次はリサキへ目をやった。


「あと、お前さんは、この世界の者ではないな? フィーヴェの気配がせんわい」


「おっ、さすがだな!」


 突然知らされるリサキ事情。

 皆が驚く中、彼女のみドヤ顔を決めていた。


 これから始まるであろう話し合いは、確実に長丁場になるだろう。

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