↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラスボスと空想好きのユア 3 More Adventures  作者: ReseraN


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/13

第10話「ディルル」

 十歳ほどの少女の姿になったディンフル。

 この日はミラーレの弁当屋に泊まった。


 翌日の昼頃、ユアがリアリティアからやって来た。

 店内に入ると、弁当屋のとびら家族と図書館から来たキイ、シオリ、ワードが、ディルルを中心に囲んでいた。

 今日は図書館の休館日らしい。


「まさか、この可愛い子が、ディンフルさんだなんて……」


 ディンフルに惚れていたキイの母・シオリは顔が青ざめていた。


「可愛いなら、いいじゃないか。それとも、大人の男性ディンフルの方が良かったのか? 結婚してからも、恋愛体質だし」


「や、やめなさい、キイ! お父さんが目の前にいるでしょっ!」


「普段から、僕がいながら他の人に恋しているじゃないか……」


 からかう息子をシオリがたしなめると、キイの父・ワードが半泣きになりながら指摘した。

 シオリが惚れっぽい性格は直りそうにないが、結局ワードへ戻って来るので、一応セーフ扱いだった。


「そんなことより、これからどうするの、ディンフルさん? フィーヴェの人たちには話したの?」


「いや……」


 まりねに聞かれるが、幼女ディンフルは気まずそうに首を横へ振った。


「実は昨日、この姿になってすぐにモンスターに襲われたのだ。視線がいつもより低かったのと、大剣が上手く持てなかったために、こちらへ逃げたのだ。モンスターがいなくて、安心だからな」


「視線が低かったって、背が縮んだから?」


「そうだ。低い目線に慣れていないのと、大剣も重くて持てなかったのだ……」


 今度はとびらの質問に答えるが、やはり後ろめたさを感じるような口調だった。

 次にユアが尋ねた。


「そういえば、サーヴラスは? 弁当屋を手伝っていたよね?」


「彼なら、飲食店運営のセミナーや研修に行っているよ。庶民の食べ物を扱うのは久しぶりだから、基礎から学び直したいそうだ」


「色々なのを受けて来るらしいから、一週間は帰らないかも」


 キイととびらが、ディンフルの側近の部下・サーヴラスの近況を教えてくれた。


「こんな大変な時に、いないなんて……」


 ユアは苦言を言った後で、提案した。


「じゃあ、これからフィットたちに会いに行こうよ!」


「あ、あいつらに?! ……いや、会えぬ」


 幼女ディンフルは、うつむきながら否定した。


「どうして? みんな、事情を話せばわかってくれるでしょ」


「俺も会った方がいいと思う。同じ世界の仲間だろ?」


「そ、そうだが……」


 とびらとキイに勧められるが、幼女ディンフルには行けない理由があった。

 特に今、フィトラグスには会いづらかった。

 昨日、森の中で自身がリサキとキスをしていたところを、ユアと彼に見られてしまったからだ。


 そういう明確な理由はあったが、ミラーレの者たちには言えなかった。

 ましてや、本来ならユアに一番会いづらかった。


 すると、ユアは幼女ディンフルへ目線を合わせるようにして屈んだ。


「今は理解者が多い方がいいよ。ディン様も、今までに経験したことない状況だよね? フィットたちなら、絶対に助けてくれるから」


 当のユアは、ディンフルが幼女の姿になったので、それどころではなかった。


「……わかった」


 幼女ディンフルは彼女と共に、フィーヴェへ行くことに決めるが、問題があった。

 ミラーレとフィーヴェは異世界同士なので、一旦リアリティアへ帰ってから飛ばなければならなかった。


 ユアは幼女ディンフルと共に、リアリティアへ飛んだ。



 リアリティアのとある場所。

 二人で飛んだはずだが、幼女ディンフルの姿がなかった。


「あれ? ディン様?!」


 きょろきょろしていると、横に幼女ディンフルが現れた。

 自身の空間移動魔法で来たようだ。


「おそらく、お前だけの力では二人以上は難しいようだ。それにしても、面倒くさいシステムだ。ボヤージュ・リーヴルがなければ、リアリティア経由になるとは……」


「ディン様の魔法ならレベルを上げられるけど、私のは魔法って言えるのかどうか……」


 リアリティアに着いた早々、幼女ディンフルが文句を垂れた。

 生まれつき持っている力なので、ユアにもどうしようもなかった。


「じゃあ、フィーヴェへ飛ぶよ」


「ちょっと、待て!」


 幼女ディンフルが、ユアを制止した。

 うつむきながら、気まずそうに彼女へ尋ねた。


「昨日のことだが……フィトラグスにも、見られただろう?」


「……キスのこと?」


 幼女ディンフルは詳細は言わなかったが、ユアはすぐに察した。


「言っておくが、あの女とは恋仲でも何でもない! ただの旧友だ! あいつは“挨拶代わり”とか言っていたが、俺も、まさか、あんな感じで来られるとは思わなかったのだ……」


 幼女ディンフルは途切れ途切れに弁明した。


「……そっか。恋人じゃなかったんだ」


 ユアは少しほっとした様子で答えた。

 相手の反応を見て、幼女ディンフルも安堵した。


 だが、同時に新たな心配も生まれた。


(ちょっと、待て。何故、誤解を解いている……? 昨日も思ったが、ユアは俺の恋人ではない(はず)。ユアも何故、ほっとしているのだ? もしや、俺のことを推し以上の目で見ているのか……?)



「ユアちゃーーーん!!」


 幼女ディンフルが色々考えていると、聞き覚えのある甲高い男性の声がした。

 ソウだった。


「ソウくん?!」


「よかった! 来てくれたんだね!」


「へ……?」


 突然、ソウから身に覚えのない言葉を掛けられるユア。

 わけがわからないでいると、彼が説明し始めた。


「昨日、LIFE送ったんだけど? “よかったら、モールで遊ぼう”って」


 ユアはあわてて自身のスマホを取り出し、連絡アプリ・LIFEを起動した。

 すると昨晩、ソウから誘いのメッセージが届いていた。


「ごめん! 色々あって、読めてなかった!」


「やっぱり……。ずっと既読つかないから、そうじゃないかと思ったんだ。じゃあ、ここへ来たのは?」


 ユアたちは、ショッピングモールの入口に立っていた。

 ユアはここに着くとは思っていなかったので、少し考え込んでから言った。


「……偶然です」


「そっか。偶然で会うなんて、運命みたいだ~!」


 ソウは快く返事をすると、「それよりこの子、誰?」と今度は幼女ディンフルへ目をつけた。


「あ、こ、こ、この子は……」


「すごいな! この子、何だかディンフルっぽいね!」


 さすが、イマストファンのソウは、雰囲気だけですぐにディンフルを連想した。

 ユアは焦りながら言い始めた。


「そ、そうなんだよ! この子、グロウス学園に新しく来た子で、園長から世話を任されてるんだ! ディンフルが大好きなんだよ~! ね~?!」


 ユアに急に話を振られ、幼女ディンフルもノリで「わ、私、ディンフル、好き……」とまるで、ロボットのような口調で答えた。


「ユアちゃんと同じだね!」


 ユアが咄嗟(とっさ)についたウソを、簡単に信じるソウ。

 幼女ディンフルは、別のことで絶望していた。


(自分を“好き”と言う日が来ようとは……)


「名前、何て言うの?」


 そんなことも知らないソウに尋ねられ、幼女ディンフルは飛び上がりそうになった。

 今のこの姿は、ミラーレとフィーヴェだけの秘密にしておくつもりで、仮の名前など考えていなかった。

 そもそも、リアリティアの者から聞かれることすら、頭になかった。



「ディ、ディルルちゃんだよ!」



 ユアが言った名前に、幼女ディンフルは思わず顔をしかめた。

 ソウは目を輝かせて反応した。


「ディルルちゃん?! めちゃくちゃ可愛いじゃん! てか、名前までディンフルに似てるってすごくない!?」


「そ、そう! 私も初めて聞いた時、ビックリしたんだよ~!」


「そうか。ディルルちゃんの世話があるなら、今日は無理だね」


「う、うん。ごめんね、ソウくん。また今度、誘ってね!」


 ユアが謝ると、ソウは「こっちも急に誘ったから仕方ないよ」と許してくれて、別れるとそのまま一人でモールの中へ入って行った。


「よかった、理解のある子で……」


「だが、油断はするな。リマネスかアヨの回し物かもしれぬぞ」


「そんな子に見えないけどな~」


「“見た目だけで判断するな”と言っているのだ! お前は騙されやすい傾向がある! それよりも何だ、“ディルル”とは?!」


「昨日、寝る前に考えた名前! 仮の名前はあった方がいいと思ったんだ」


「……まぁ、今回は助かった。感謝する」


「どういたしまして、ディルルちゃん!」


「その名で呼ぶな!」


 二人はそんなやり取りをしながら、改めてフィーヴェへ飛んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。