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こんな悪女はお嫌いですか?  作者: フオツグ
番外編

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9/11

初夜リベンジ

 ローゼの目的を暴いた舞踏会の後。

 俺は再びローゼと寝室にいた。


「旦那様とまた寝室を共に出来るとは思いませんでした」


 ローゼは俺に寄り添い、嬉しそうに言った。


「お前がゴネたからだろう」

「ふふ。実は今日、注文していたものがやっと届きまして。早速使ってみたいと思ったのです」

「届いたものだと?」


 ローゼは箱をベッドの上に置き、包装を解き始めた。

──まさか、俺の名前でいかがわしい道具を買ったのではないだろうな。

 俺は思わず身構えた。


「こちらです」


 ローゼは手のひらに収まるサイズの容器を見せた。

 俺は容器を受け取り、くるくると回して見た。


「これは……保湿クリームか?」

「はい。旦那様の火傷跡に塗ろうと思いまして。保湿だけでなく、血行促進や抗炎症作用もありますよ」

「必要ない」


 俺は保湿クリームの容器を箱に戻した。

「旦那様」とローゼがため息混じりに呼びかけた。


「初めての同じ寝室で寝た日を覚えていますか。夜中、ふと目が覚めた時、私は見てしまったのです。貴方が火傷跡を掻きむしりながら、苦しそうに唸っているのを」


 ローゼは心配そうに眉を下げた。

 まさか寝ている俺がそんなことをしていたなんて知らなかった。


「ですから、私に何か出来ることはないかと考えたのです」

「それで、保湿クリームを……」


 俺を思ってしてくれたのか、と胸が少し温かくなった。


「さ、旦那様、服を脱いで下さいませ」


 ローゼはパッと笑顔になった。


「良い。自分で塗る」

「家にある保湿クリーム、あまり減っていないようですが?」

「何故そんなことまで把握してるんだ」

「おや、カマをかけてみたのですが、本当に塗っていないのですね」


 ローゼはくすりと笑った。ハメられた、と俺は頭を抱えた。


「旦那様、観念して下さい」

「……はあ」


 俺は寝巻きを脱ぎ、上半身を露出させた。一番火傷が酷い箇所だ。


「では、失礼しますね」


 ローゼは蓋を開け、クリームを指で掬うと肩の火傷跡に塗り始めた。ふわりと花の香りがした。


「そのクリーム、香りがついているのか」

「ええ、薔薇の香りです。ツィノーバーロート邸には素敵な薔薇園がありますから、この香りにしてみました。いかがでしょう?」


 俺は目を瞑り、鼻で大きく息を吸った。


「落ち着く香りだ」

「ふふ。お気に召したようで何よりです」


 ローゼの細い指と小さな手のひらがが肩、腕、胸部、そして、足を撫でる。俺は眉間にしわを寄せ、ローゼの手を目で追った。

──これ……行為をするより恥ずかしいのだが?

 俺はふつふつと湧き上がる邪な考えを心の奥に押し込んだ。

 首から下の火傷跡が塗り終わると、俺はそそくさと寝巻きを着た。


「お顔も塗りましょうか?」

「……自分でやる」


 俺はローゼから容器を奪い取ると、背中を向けて、顔の包帯を解いた。急いで顔へとクリームを塗る。


「隠さずとも良いではないですか。私に一度見せて下さったでしょう?」

「あのときと今では状況が違うだろう」

「ああ……あのときの旦那様は私を疑ってらしたのでしたね」


 俺はバツが悪くて黙り込んだ。


「わかりました。再び、旦那様が見せて下さるまで、待ちますわ」


 言った通り、俺がクリームを塗っている間、ローゼは俺の顔を覗き込むことはなかった。



 顔へクリームを塗り終わり、俺は包帯を巻き直すと、ローゼの方を向いた。

「ちゃんと塗れまして?」とローゼは子供に言うように言った。


「さて、旦那様──」


 ローゼは俺の肩をそっと押し、ベッドに押し倒した。


「……何のつもりだ?」


 俺はローゼを見上げた。


「結婚したばかりの男女が寝室ですることと言えばただ一つ──初夜ですよ」


 ローゼは聞いたことのあるセリフを言った。

「そうか」と俺は淡白な返事を返す。


「初めて伺った時ははお預けを食らってしまいましたからね。リベンジです」

「お預けされたのは俺の方だと思うが」

「おや? おやおやおや旦那様? お預けされたと思ったのですか? つまりあのとき、私に手を出したかったと?」

「失言だったな。忘れろ」

「忘れませんとも。ええ。脳に焼き付けましたとも」

「……はあ。良いから早く寝ろ」

「いいえ、今回こそは手を出して頂きます。献身的に保湿クリームを塗ったことで、私の愛は存分に伝わったでしょう?」

「いいから横になれ」


 俺はローゼの手を引き、横に寝かせた。


「旦那様のたくましい背中、鋭い眼光、大きな手のひら、全て愛しております。私は旦那様に何をされても構わないのです」

「はいはい……」


 俺は片手でローゼの背中をぽんぽんと叩いてやる。


「信じていませんね? 私が旦那様をどれだけ好いているか、じっくりと聞かせて差し上げます。今夜は寝かせませんよ、だんな……さ……ま……」


 ローゼの声がだんだんと小さくなり、最後には、目を瞑り寝息を立て始めた。

──背中を叩くと寝るなんて、子供か? いや、まだ学園を卒業したばかりの子供だったな。

 ローゼに布団をかけてやり、再び横になる。

 彼女は生家で邪魔者として扱われ、十分な愛情を与えられてこなかった。俺と身を繋げることに熱心になるのは、それが原因だろう。

 身を繋げるだけが愛ではない。俺達は出会って間もないのだ。


「ゆっくりと愛させて貰おう」


 俺はローゼの額にキスをした。


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