表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こんな悪女はお嫌いですか?  作者: フオツグ
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/20

幼馴染みの姉弟

「──アプフェル?」


 聞き覚えのある声に、俺は思わず体を硬直させた。振り返ると、見覚えのある金髪の男女がいた。


「アプフェルじゃないの! 久しぶりね! 元気にしてた?」

「イーリス……それに、キーファ」


 金髪の女性はイーリス、隣の男は彼女の弟のキーファだ。キーファは不機嫌そうな顔でぺこりと頭を下げた。

 イーリスは明るく面倒見の良い性格だ。彼女の熱い励ましに何度背中を押されたことか。そのせいもあって、大人になった今でも弟のような扱いされるのは正直鬱陶しいが……。

 キーファは俺と同じ、王宮騎士団に所属している。剣術に秀でており、成長意欲のある、将来有望な若者だ。


「イーリス、口の利き方に気をつけろ。今の俺は公爵で、お前は侯爵令嬢だ」

「私には泣き虫坊やにしか見えないけどねえ」

「いつの話をしてるんだ……」


 余計なことを言うな、と俺は目でイーリスに訴えるが、イーリスはケロリとしていた。

『泣き虫坊や』なんてローゼに聞かれたら、昔のことを根掘り葉掘り聞かれてしまう。

 俺はローゼの様子を伺うため、目を向けた。それに釣られるように、イーリスもローゼを見た。


「あら? そちらは……もしかして!」

「お初にお目にかかります、ローゼ・ツィノーバーロートと申します」


 ローゼはにっこりと微笑んだ。


「ああ、やっぱり! アプフェルのお嫁さんだったのね! 初めまして、ローゼ様──あ、ローゼ様とお呼びするわね? 私はゴルデン侯爵の娘、イーリスです! こちらは弟のキーファ! キーファ、ほら、挨拶して!」


 イーリスはキーファの背中を軽く叩いた。


「……初めまして、ツィノーローバート公爵夫人」


 キーファはイーリスに紹介され、軽く頭を下げた。


「アプフェルが結婚したって本当だったんだ! こんな可愛い人を妻にするなんて、なかなかやるじゃない、アプフェルぅ!」


 イーリスは肘で俺をつついた。俺は相変わらずの騒々しさに呆れて、ため息をついた。

 ローゼは困ったように俺を見上げる。


「……あ! ごめんなさい! 馴れ馴れしくして! 弟のキーファとアプフェルは子供の頃、王宮騎士になるため一緒に訓練を受けていたんです。弟の訓練を見学した時、アプフェルと知り合ってそのまま仲良くなって……。まあ、幼馴染みって奴ですね! そのときの癖がなかなか抜けなくって!」


 イーリスはからっと笑った。


「昔からの仲なんですね」

「ただの腐れ縁だけどね! でも、アプフェル、最近パーティーにも顔を出さないから、すっかり疎遠になっちゃってて……。私もキーファも心配してたのよ?」


 イーリスは俺の方を見た。俺はふい、と顔を背けた。


「お前には関係ないだろう」

「もう! またそんなこと言って──」


 イーリスは頬を膨らませた。

 その後ろで、キーファはじろりと俺とローゼを睨んでいた。


「……姉さん、少し夜風に当たってくるよ」

「あらそう? 気をつけてね」


 キーファは俺とローゼに一礼すると会場を出た。俺達は黙ってキーファの背中を見送った。


「私、よく思われていないようですね」


 ローゼが肩を落とした。


「まさか! ちょっと人見知りしちゃったんですよ! ほら、ローゼ様はお綺麗だから!」

「そんなこと初めて言われました」


 ローゼが悲しげに目を伏せると、イーリスは逡巡したのち、話し出した。


「キーファはその……今日の訓練でアプフェルに怒られて、拗ねてるみたいなんです。あはは、子供みたいでしょう?」

「怒ったんですか? 旦那様」


 ローゼが俺に確認した。俺は「まあ」とだけ言った。


「アプフェルもアプフェルよ。『やる気がないなら帰れ』って言ったんでしょう? キーファが家を継ぐために頑張ってるところ、近くで見ていた癖に」

「フン。やる気のない騎士は足手まといになるだけだ」

「全く、怒りっぽいんだから! 昔はあんなに小さかったのに、いつからこんなに可愛げがなくなっちゃったのかしら」

「だから、昔の話はするなと……」


 俺はちらりとローゼの反応を見た。ローゼはキーファの立ち去った方をじっと見ていた。


「アプフェル様、イーリス様、私も少し席を外しますね」


 ローゼがそう言った。


「ローゼ様も行っちゃうの? 具合が悪くなっちゃったかしら? 付き添いましょうか?」

「心配には及びません。直ぐに戻りますので」


 ローゼは俺達に一礼すると、早足で会場を出て行った。


「……ねえ、アプフェル。彼女、大丈夫なのかしら?」


 イーリスが声を潜めてそう言った。


「何の話だ」

「男遊びが激しいって噂よ! アプフェル、知らないで結婚したの?」


 勿論知っている。その噂はローゼ自身が流すように誘導したことも。

 俺が既に暴いたのだが、イーリスは知らないようだ。


「キーファのこともじーっと見てたし、もしかして狙ってるのかも……。ね、ちょっと様子を見に行きましょうよ!」


 俺はイーリスに手をぐいぐいと引かれ、ローゼを追いかけた。


 俺達は直ぐにローゼ達に追いついた。

 丁度、バルコニーで夜風に当たっているキーファにローゼが声をかけているところだった。

 二人は会話を交わしたあと、ぴっとりと寄り添いながら歩き、別室へと入っていった。


「ああ、嘘! やっぱり、あの噂は本当だったんだ──!」


 イーリスは興奮したように言った。

──そんな。ローゼに限って、俺を裏切るなんてある訳がない。

 ローゼは俺と結婚するためにその身を投げ打ったのだ。簡単に心変わりするはずが──否。そもそも、ローゼが俺を好きになったのも一目惚れのようなものだった……。

 ローゼを疑う自分が嫌になった。俺はまだローゼに愛される自信がないのだ。

 何を悩む必要がある。この扉を開けばわかることだ。

 俺はわざと足音を立てて部屋に近づいた。


「ちょっと、アプフェル?」


 イーリスの制止を無視して、俺は思いきり扉を開いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ