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弟が美エルフだったので育てることにした  作者: 風巻ユウ


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040、娘さんを嫁に下さい

「う、嘘だ、こんな横暴貴族が俺たちのために身銭を切っただなんて────嘘じゃない、だと……!」


 あー、【真眼】くんは嘘つかない(二回目)

 ヘクトル兄、マロくんが治療院の代金を出してくれていたことが真実だと知り、頭を抱えている。

 姉ユリアは普通に「あの、あの、ありがとう、ね」と、マロくんへ御礼を述べた。

 良い子ですね、うちの姉は。


「気にするな。あの時はユリアのことを知らなかった。兄上にアドバイスを受けて支払ったまでだ。結果的にユリアのためになって良かった。私はこういう機微には疎い。兄上の言うことが正解だ。私の兄上はいつも正しい」


 マロくん、兄上しゅごい尊敬ビームを発しながらミッダンテさんを熱っぽく見詰めるが、当のミッダンテさんは、


「マロくん、こういう時は私のことは話さなくてよいのですよ。「当然のことをしたまでです」と返すのがスマート紳士です」


 など、更に具体的アドバイスを盛る。

 スマート紳士とは。


「はい! 分かりました兄上! 今度からそうします!」


 元気に返事するマロくん。


 なるほど。こうやってマロくんを矯正しているのですね。感心した。


 私からも、「兄姉のためにありがとう」とお礼を述べたら、「べっ、別にお前のためなんかじゃ(以下略)」が聞けたので私としては満足だが、ミッダンテさんは困った顔をしている。


 まあ、ツンデレの矯正って難しいものなのですよ。たぶん。やったことないけど。

「私は困ってないので程々にしてあげて下さいね」とミッダンテさんに囁けば、なぜか嬉しそうな顔する彼。

 益々に私を離さない。


 ……うん、いいよ、片腕抱っこ。あなたの腕が痺れるまで、ここにいるよ。


 そんなほのぼのカオスな室内へ、ドンドンドンドン! 急に、扉を叩く音が響いた。


「うおいっ! 開けろゴラァ! ここは俺ん家だぞ!」


 駄目親父の帰宅だ。

 そうだ、うっかり。【安全安眠】していた。ご近所さんが不穏だったからね。念の為である。

 親父のことは忘れていた。


「ごめんねごめんねー☆」


 某芸人の真似して扉を開ける。開けたのはミッダンテさんだが、私のミスなので一応は謝るよ。


「こいつ、ぜってえ悪びれてねえ」


 超絶不機嫌顔だね親父。

 そんな、良好とは言えない雰囲気の中、マロくんが「義父よ、娘さんを嫁に下さい」をやらかした。


 マロくん、空気くらい読もうよ。空気嫁だよ。


「いいぞ。金よこせ」


 あっさり許可出すし、この駄目ダメ親父め。

 しかも、金かーい! そこなの? 第一に気にするとこそこなの?


「無論、結納金を出そう。挙式などの嫁入りに必要な費用もこちらで持とう。ユリアは身一つで嫁いで来てくれれば良い」


 男前ですね、マロくん。


「ユリア? なーんだ、そっちか」


 駄目親父、私だと勘違いしたな。私まだ五歳。五歳児ですぞ。

 と言っても、姉ユリアだってまだ10歳だ。

 どっちにしても、親父の即答にはムカついた。

 とりあえず、殴りたい。


「俺は血縁じゃねえんで。そっちはそっちでやれ。今ならサイモンも、まだ詰所に居るだろ」


 サイモンって誰よ。まさか姉ユリアの実の父親か?


 マロくんが、「詰所ってどこだ。サイモン殿のご職業は」と駄目親父を問い詰めているのを隣で聞くところによると、姉ユリアの父親は高級官吏らしいね。治療院で見た下っ端じゃなくて、官吏を束ねる警吏官僚クラスの人。

 詰所というのは、この都市にある警吏保安所のこと。主に警察機構が委ねられている。

 実はこの都市、王領で自治権がある。王都と繋がる衛星都市で、結構な都会なのである。

 まあ、詳しいことは知らんけどね。拾った新聞で読んだ程度の知識で知ったかぶってみた。


 しかし、そのサイモンさんとやら、もう日も暮れたはずなのに、まだ働いていらっしゃるとは……。

 この国の人達、基本は日の出ている時しか働かない。

 風俗業や、そういう人たち向けの飲食店が集まる歓楽街は賑やからしいけど。

 一般のお勤め人からしたら、日が暮れてからの営業はサビ残だろう。

 官僚であり残業するなんて……生真面目のきらいがある姉ユリアの実父らしいなと思う。


「よし、じゃあ早速、挨拶に」

「よし、じゃありません。こんな夜分にお邪魔しては迷惑になりますよ」


 ミッダンテさん、見兼ねてマロくんを止める。

 まさか今から警吏保安所へ行こうとするとか、親父が唆したにしても、非常識にも程があるだろうよ。いくら相手が、サビ残上等ブラック職場万歳ドM気質な人だとしてもだ。

 まだ見ぬユリア父に対して大変失礼なことを考えた私である。すみませんでした。心の中で謝っておく。


「それでは皆様、夜分に失礼しました。マロくん、帰りますよ」

「ええー、ユリアと」

「迷惑です。また後日、常識の範囲内でアタックなさい」


 非常識なマロくんは、ミッダンテさんに引き摺られるようにして帰って行った。

 ミッダンテさんが常識ある貴人で良かったよ。

 しかし去り際、「エアリーお嬢様、お休みなさいませ。また明日、お会いできることを楽しみにしております」と、握手をする振りしながら私の手の中に手紙を残す。

 これは常識……ではないな。


「さすが兄上、スマート紳士ですね!」


 発車寸前の馬車の中からマロくんの声が届く。

 そうか、これがスマート紳士の常識的行動か。侮れないな。


「ううう……何なんだあの兄弟……うちの可愛い姉妹を狙いやがって……あれで嘘がないから困る……!」


 兄ヘクトルが一人で懊悩している間に、私は姉ユリアと夕飯の支度をした。

 昼に引き続きメインは干物です。美味しいからいいね。

 珍しいことに駄目親父も食卓についた。


「あー、こりゃ、クソエルフんとこのやつか」


 文句言いながらも食べるし。特にイカの炒め物を。そういや、イカの干物を懐に入れていた。好きなのだろう、イカが。

 イカ戻して出汁とった。そこへ野菜を投入、調味料で味を整えた適当な一品だけど、美味そうに食べる父カシオラスは晩酌も進んだらしく、あっさり寝た。

 邪魔なので、ベッドの上に放り投げといた。


 そう言えば、料理しながら動画を観る時に気づいたのだけど、vol.4『人に会ってみよう!』がチカチカ主張。光っていた。

 そこにクソエルフこと乾物屋のギルさんのお名前が。その下にはサイモンさんの名前もあるし、更にその下にも知らない人の名前が続く。

 きっと、いつか出会う人たちなのだろう。


 vol.4『人に会ってみよう!』

 □マロウス・ル・トーチ・エンダニア

 □ギルヴェイ・ユーグ・アソヴィ

 □サイモン・クラウス・ペハヴェスト

 □デュノウ・アルス


 ・

 ・

 ・


 マロくんもね。会った日からポイント貰えていたよ。

 これでポイント貰える人は、どういう基準なのか未だによく分からない。ただすれ違うような人はカウントされないのは分かる。

 会って会話を交わした人かなあとは思う。でも、商店のおばちゃんやおじちゃんは入らないから、更にそれ以上、親しくなる人にポイントが入るのかもしれない。

 まあ、親しくしたくない親(カス)も入るのだけど。一応は身内である。親(・)族と言うくらいだ。本来ならば親しい仲なのだろう。本来ならば。

 私としては、ただのポイント要員に成り下がっている。あと、ユリシスのご飯(おっぱい)要員。


 母乳は、とうとう搾りに搾ったカスのが底をついてしまった。

 初乳をいっぱい搾り取ったのでユリシスの栄養的には満足だけど、これからはマリアさんからの生搾りはもちろん、置き乳も常に搾っていただかなくてはならなくなった。

 マリアさんばかりに負担をかけてしまうと思うと心苦しい。他にも代乳先をみつけれたらいいなと漠然と考えつつ、この日は寝た。

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