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弟が美エルフだったので育てることにした  作者: 風巻ユウ


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037、シスコンVSロリコン

 なんのこっちゃい姉ユリアの言動は不可解で、それでも口を挟まずに見守っていたところ、気づいたらマロくんが姉ユリアを熱烈に口説いていた。


「生まれてこの方、こんな気持ちになったことはない。どうか、私の妻となってくれ」


「あ、え、あの、その、あの、私そのっ」


 戸惑う姉だが顔が赤い。あれは……悪い気してないな。


「うちのユリアを奪うやつは敵だ。失せろ」

「義兄よ。私は本気だ。妹さんを下さい。必ず幸せにしてみせます」

「嫌だねロリコン! 義兄と呼ぶなロリコン!」


 こっちは、シスコン VS ロリコン対決か。


「ちょっと落ち着いて。お茶しながら、話をしましょうか」


 ミアさんが困り気味に提案。テーブルセットしてティータイムにする。


 あー、このスコーンみたいなの、うめー。


「話の腰を折るかもですが、最初から説明していただけますか? マロくんが苦しみ出したあたりから。今は大丈夫なんですよね?」


 こっちのチョコブラウニーらしきものもなかなか。行儀悪くてすいませんが、食べながら説明を求む。


「元気になったぞ。煩いやつら全部、ユリアのおかげでいなくなったからな。ユリア、ありがとう。君は私の命の恩人、運命の女神だ。女神なんて皆かしましくて鬱陶しいと思っていたが、私の本当の女神は貴女だったのだな。好きだ。凄く好きだ。このときめきをどう貴女に伝えたらいいんだ。そうか、これが愛……!」


 すっかり明るくなったマロくんは、ツンがなくなり、ただのデレデレになった。ついでに愛の人になったようだ。


「あー……もう、ここまできたら、全てお話します。その……申し訳御座いませんが、身内になるかもですからねえ」


 ミアさん、投げやりになってません? 大丈夫? 一本いっとく? このカルピスみたいなジュース美味しいよ。なんなら、青汁も作れるよ。

 本当に青汁は出さないが、いつでも出せるよう動画を観ておこう。青汁ね、いつの間にか料理レシピに、しれっと増えていた。

 パンダ神たち、仕事早いなあ。


 青汁後、視界の隅に動画画面を置き、ランダム再生にしたままミアさんのお話を聞く。

 こうしておけば、話が気まずくなっても動画を観て気を紛らわせれるって寸法よ。

 まるでスマホ依存の人みたいな対応である。


「先程のマロくんの症状ですが、彼の固有魔法【天啓通神】に因るものです」


 最重要機密(トップ・シークレット)キタアア。


 多分これ、前回はお茶を濁したやつだよね。ミアさんの【回帰】の話を前面に出して、マロくんの能力は隠しました感あったもの。


 ミアさんからのお話によると、【天啓通神】は神の言葉がひたすら伝わってくるというもの。

 神の使いである天使(エンゼルス)が耳元でボソボソと人の秘密を暴露してきたり、急に空が眩しく晴れてどこぞの神から御告(おつげ)があったり、やっぱり天使の囁きエンゼルス・ウィスパーが続き、これがまた昼夜問わずやられるものだから、神経に触るという。


 ああ……だからマロくん、神経質なツンデレになってたのか。

 頭も痛くなるってもんです。


「弟は、天使(エンゼルス)──引いては神々に、ずっと悩まされてきました。天使たちはお喋りで、しかも一方的に話してくるので無視しようにも勝手に言霊を吹き込んできます。神々も、時と場所など考えず、一方的に告げてきます。特に女神様方は我先にと集まって同時に騒ぐので、聞き取るのも大変です」


 う、うわあ……そんなん、生まれた時からやられたら、本当に神経が狂ってしまうよ。

 マロくん、よく無事だったね。よくこの歳まで、ただのツンデレに見えるくらいで済んだね。


「あえーと、【天啓通神】でしたか、それって、自分でコントロールできないのですか……?」


「できません。常に発動し続けます。向こうは一方的なのに、こちらからは返せないという特徴もあります」


 ええええ、壊れ性能にも程があるやろお。それこそチート、バグってやつ。悪い意味での。


「ですから、我が国の神殿組織にとってのマロくんは、良い贄でした。神子だと祀り上げ、幼かったマロくんは『祭祀の塔』に閉じ込められました」


 そこで始まったのは洗脳教育。

 神の声が聴けるとは素晴らしい、我らにもっと神の声を届けよと、高位聖職者や寄付金の多い王侯貴族を優先的に、マロくんの能力を使い倒した。


「更に、自分たちは神の代弁者だと調子に乗った神殿組織は、下々の者に神の言葉を伝える価値はない、平民にへりくだるなと、繰り返し説きました」


 なるほど。マロくんの偉そうな態度は、根っからの王子様気質の帝王学か何かなのだと思っていたけど、違うらしい。

 幼い頃に塔へと軟禁され、選民思想を植え付けられていたからなのだね。


「だから私は───」


 ここでミアさんの雰囲気が変わった。一瞬でミッダンテさんになった。


「私の名は、ミッダンテ・ル・トーチ・エンダニア。エンダニア双星国の次期王位継承者です。王位を継ぐ者に選ばれた時、マロくんを連れて国を出ました。表向きはこちらの国──キットラス王国からの要請に応えるためです。要請内容はまだここでは明かせませんが、トーエンハイム卿の恩恵に預かっておりますので、感謝の意を込め、ラグバルド様にこうしてお仕えしている次第です」


 お高貴な身分の人だとは思っていた。思っていたけど……これは予想外じゃね?! 次期王位継承者、だとお!?


 驚いたのは私だけじゃない。

 テーブルを囲った横では姉ユリアの「はひゅっ」と息を飲む音。

 兄の「嘘だろ……あ、本当だった」の声。

【真眼】で確かめたのなら真だね。嘘じゃないのだね。本当の本気で、ミッダンテさんは将来的に一国の王様になる人なのだね。そんな人を私、メイドさんとして萌え対象にしていたのだね……!


「あ、お、も、申し訳、御座いませんでえしたああああ」

「え、急にどうしましたエアリーお嬢様」

「いやああ私お嬢様なんて柄じゃああーりませんので、つ、謹んで辞退申し上げまするうう」


 いやもっと早くに辞退しておくべきだった。ミッダンテさんがお高貴な人だってのは気づいていたでしょ私!


「ふふっ、身分のことなど、捨ておきなさい。私は身分も性別も越えて、貴女とは友好関係を築きたいと思っているのですよ」


「ミア、さん……!」


 とっても男前に見えるのですけども! 高貴オーラ的なキラキラエフェクトが全開で私の目が眩むのですけども……!

 メイド服姿なのに……! 解せぬ!


 ……落ち着け私。これはミッダンテさんの女装が完璧だということだ。お胸ボインで声音まで変えてくるから完の璧だ。

 幻の魔法だっけ。クオリティ高ぇ。

 そんなミアさんが好きなのであって、キラキラ王なこれは……ぐう、目に毒だあ。


 視線を逸らし、小画面に集中。やったね役に立ったよ視界端での動画再生。


 動画チラッチラしながら、また聞いた話によると、現在、マロくんへと囁く天使たちは姉ユリアの【魔法無効】で消えたという。

 これまで、ラグお爺ちゃん試作の魔力を妨害する魔法用品を使っていたが、効果は限定的で且つ短時間であったため、完全に天使の囁きを遮断することは無理だったらしい。

 どうやら姉ユリアの【魔法無効】は、天才錬金術師であるラグお爺ちゃんの発明品を軽く超えてしまったようだ。


「正しく貴女は私の運命の人なのだ。結婚」

「黙れロリコンめ」

「義兄よ、私は15歳だ。五歳差で小児性愛者とは」

「成人前の女を口説くやつはロリで十分だ。これだから貴族ってやつは」

「むむっ、それは貴族への偏見というものだぞ」

「うっせえ。身分を笠に着やがって、てめえら纏めて変態だ」


「わっ、お兄ちゃん──!?」


 兄ヘクトル、姉ユリアを担ぎ上げ、マロくんから離す。そして、とっとと部屋を出て行った。


「お世話になりましたー! エアリーを今後ともよろしくお願いしますー! お邪魔しましたー!」


 急ぎながらも礼儀を欠かさない兄は、余っ程ギルド長さんに躾されたのだろう。

 やはり冒険者ギルド方面に足を向けて寝れない。今日から枕の位置を変えようと、心に誓った。

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