030、YESロリータNOタッチ
危険な言葉をいっぱい書いた気がする……。
ちょっと注意
第一話以来のハラハラドキドキ
ええか? ええか? これ、なろう作品であってるか?(ドキドキ
ミアさんは徐にティーカップを掲げ、その手を放した。
当たり前だが、そのままティーカップは床へと落ちて────割れる。
「【回帰】」
割れたティーカップの欠片が、くっつきながら浮き、ミアさんの掲げていた手の中に戻った。
「は……?」
元通りになったティーカップ 。
落ちて割れたはずなのに、まるで観ていた動画を巻き戻したかのように流麗な逆再生が披露された。粉々だったカップは、割れる前の状態まで戻り、そこに鎮座している。
「えーと、これが回帰……ですか」
「ええ。起きた事象を、元に戻すのが私の魔法です」
この場合、ティーカップが割れたという事象を、割れる前の状態にまで巻き戻したということかな。
「この魔法を兄姉にも使って下さったので?」
「いいえ、お二人には使ってませんよ。マロくんが治癒魔法をかけただけです。私が【回帰】を使ったのは、奇跡を目撃した方々にです。記憶だけを以前の状態に戻しました」
なんと。奇跡を叫ぶ治癒術師さん、記憶を巻き戻されちゃったらしい。その他、現場にいた治癒術師さん、官吏の皆さんまで、軒並みパーチクリンにしてしまったという。
……すごい。ミアさんにかかれば色んなことを、無かったことにできるということ……!
隠蔽工作、完全犯罪……やばい。
「こんな強力な固有魔法のこと、私なんかにオープンしちゃって大丈夫なのですか?」
聞いたことで私、消されませんかね。それこそ記憶を【回帰】させられるとか。
「大丈夫ですよ。エンダニアの家系には【回帰】を発現する人物がたまに出るのです。だから、私のことも周知済です。私より、マロくんの方が最重要機密ですね。
この国に滞在中、偶然、現場に居合わせたと私が言えば、これその通りなのです。子供たちを救えて良かったですねえ」
物騒なことを、しれっとのたまうミアさん。
ほんと何者なん……いや、知っちゃダメだ。知ったら消されるかもしれんのだ。記憶を。おそろしや。
ラグお爺ちゃんの権力、まさかこういう形で使われるとは思わなかった。フォロー頼んだ身としては、ラグお爺ちゃんに文句を言ったらいけないよ。
ハーブティーいただきながら、ちょっとブレイクタイム。ああ、このハーブクッキーも美味しいやばいうまい。
ちょっと考える。
もしかして……ミアさんの固有魔法って、本気出したら、私の奇跡も元に戻して、無かったことにできるのでは?
人の記憶まで戻せるのだ。私が魔法を使ったことも、あそこで兄姉たちに面会した足跡まで、都合の悪いことは全て元に戻すことだって可能だったのだろう。
それを敢えてしないで、【毒呪吸闇】【復元復活】で起きたことを残してくれた。姉は毒と呪いから解放され、兄のアソコもビンビンに戻った。良かった。損なわれていたら将来のお嫁さんに申し訳ないからね。
で、その事実というか現象はそのままに、ただ、私のフォローで固有魔法を使ってくれた。これって、ご厚意というやつだよね。私はミアさんから、もちラグお爺ちゃんからも、ものすっごく守られているのでは……。
「あの、ありがとうございます。私がまだ未熟だから……庇っていただき感謝します。大きくなったら、この借りは返しますね」
出世払いってことでツケといてください。ラグお爺ちゃんにも、いつか恩を返さないとね。
「ふふっ、エアリーお嬢様が成長したら、もっと魅力的になるんですかね。楽しみです。ね、マロくん」
「は、え? な、なんで私に聞いたのですか兄上?!」
「だって……おそらく、エアリーお嬢様ですよ。マロくんが導くべき人は」
「うええ……やっぱ、そうなんですかねえ…………」
なぜか金髪兄弟に見つめられている私。
マロくん、ゲロ甘ココアを置いて私の方へ寄って来た。
嫌な予感がして、パンダ籠に眠るユリシスの方へ逃げる。
「おい、逃げるな」
「いやいやいや、近づかないで」
ユリシスの周りをぐ~るぐる。
「避けるな。手を出せ」
「嫌でーす。嫌がる女の子に無理やり触ろうとするなんて空気読めない陰キャですか。セクハラ禁止。YESロリータNOタッチ。痴漢撲滅。変態退散!」
「誰が童貞で処女厨でマザコンで性犯罪者だー!」
「そこまで言ってないでーす」
心の中では思ってたけどね。口に出してないのに、どうしてマロくんはセクハラが性犯罪で、「童貞拗らせてんじゃねえよ。幼女狙うなんてお前は処女厨か。マンマのおっぱいでも吸ってな、このマザコン野郎が」という、私の心の中の悪口まで知っているのか……。
「ぎゃああああああ」
「叫ぶなみっともない! 淑女が上げる声じゃないぞ」
とうとう腕を掴まれたのだ。これが叫ばずにいられようか。
前世では薄暗い地下道で背後から襲われた。
マロくんは正面からで、別に危害を加えようという雰囲気はないけども、それでも、前世で散々っぱら身内に裏切られた私は、人的接触には過敏に反応してしまうのだ。
ただし、お爺ちゃんと赤子は別腹です。お爺ちゃんのなでなでは天国だし、赤子には赤子からしか補給できない栄養があるからね。
あー、ユリシスにhshsしてえよう。と、パンダ籠に寝ているユリシスを見て気を落ち着かせる。
……確かに叫んだのは、はしたなかったかも。
「どしたんじゃ、お嬢ちゃんの悲鳴が聞こえたんじゃが?!」
わお、ラグお爺ちゃんキター。動画を観ていたはずなのに、私のピンチに颯爽と駆けつける。ユリシス攫われた時もそうだった。まるで王子様だね。
「何でもない! 私は悪くない、こいつが叫ぶからっ」
「こーら、マロくん。女の子には優しくしなさいっていつも言ってるでしょ」
「兄上までえ」
マロくん、涙目である。
手が緩んだ隙に、私は逃げ出した。ユリシス持って。ユリシスだいじ。
「あ、待て────!」
マロくんの制止声を背に、私は駆けた。
ドアを開け、廊下に出る。ユリシスを抱える私は逃げるのに不利だ。ここは、【五感増強】で────。
と、魔法を発動しようとしたところで、
「エアリーちゃん、丁度いいところに」
マリアさん、現る。
「うわっと、と、マ、マリア、さん、お邪魔してますっ」
「はい、いらっしゃい。それにしても……どうしたの慌てて………あら、まあ、そうなのね、お客様がね……あらぁ……」
身近にいる精霊から事情を聞いたみたい。
「なら、子供部屋に来るといいわ。こっちこっち、こっちにおいでなさいな」
柔らかな微笑みに促され、私は子供部屋へと誘われたのだった。だって、ほら、聖母のお誘いじゃない。断れないよ。たとえ、金髪ヤンキーに追いかけられていたとしてもだ。
ちらっと後ろを振り向けば、追いかけようとするマロくんの首根っこをラグお爺ちゃんが抑えているのが見えた。
ひらひらっと手を振るラグお爺ちゃん。
こっちは任せておけの合図ですね。
その後ろにはミアさんが控え、これまた手を振っていらっしゃるのだが、そのお手振りの仕方は前世で見た皇后様にそっくりで、やはりミアさんはお高貴な人だと思われる。
手を振るだけでやんごとないとは、庶民の私からしたら胸トゥンク案件である。
しかし、今は聖母。聖母の後をついて、子供部屋へと足を運ぶのだった。




