表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末に向かう世界に希望なんて見つかるのだろうか?  作者: 早寝早起き
第6章:ウイルスの変異と新たな脅威編
83/151

訪問者

 翌日。


 昨夜の騒ぎが嘘の様に静かな病院内で、今日も今日とてトレ-ニングを開始する。

 激しい筋トレも毎日続けては筋肉を傷めてしまうので、今日行うのは体幹トレ-ニングだ。


 先ずはうつ伏せになり、肘を肩の真下に置く。

 そして胴体を持ち上げ、つま先と前腕だけで身体を支える。

 身体が一直線の状態になってる事を確認し1分間キ-プ。


 ヨガやっている人もお馴染みのプランクっていう腹筋を鍛えるポ-ズだ。

 地味だけど結構きつい。


 その次に今度は仰向けに寝転び、膝を立ててお尻を持ち上げる。

 この時両腕は床に伸ばしたまま。背中を曲げない様に伸ばし綺麗に1直線にする。

 これも1分程度ポ-ズをキ-プする。足裏を着けたままやるのが結構辛い。

 ヒップリフトと言って、お尻の引き締めには効果がある。


 後簡単なのはヨガの立ち木ポーズだが、指を伸ばすのがまだ辛いので断念。

 片足でバランスを取るポーズなので、立ったまま出来てお手軽なんだけどな。

 狭い空間でも出来るこれらのトレ-ニングは、気軽にできるから助かってる。


 休憩を入れながら5セット程済ませた頃、俺の部屋のドアが叩かれた。


コンコン。


 ノックの後、ドアの小窓が開かれる。


「とうま君。今良いかな?」


「......丸川先生。ご無沙汰しております。私は良いのですが、面会には許可が要りまして」


「許可はもう取ってある。じゃあ入らせてもらうよ」


「どうぞ」


 また顔を見たくない人が来たなぁ。

 許可ってさ。俺の意見聞いて無いじゃん。

 それにドアの小窓だって、外からしか開かないし。


 プライべ-トなんて、罪人には必要ないって事なんだよね。


 昨日見た時から気づいてたけど、この先生もかなり痩せた。

 黒く焼けた顔にギラギラした目。

 あの温和な先生が、こうも変わるもんなんだな。


「急にすまないな。少し話たい事があって、君に面会を申し出たんだよ」


「俺に話ですか。ちょっと想像もつきませんが、聞かせて頂きます」


「君は狂暴化した動物の事は知っているね?」


「えっと。俺は変異種って呼んでますけど、ヒグマと犬、後はカラスと遭遇しています」


「そうか。私はそれ以外に猿も確認したよ。長谷川村を襲ったのもサルの群れだったから......」


 そこから暫くは、村が襲われた当時の話を聞かされた。

 俺は山でサルは見た事が無かったが、山が枯れた影響で下りて来たんだろうな。

 そのサルがどうして変異したのか? 基本的に雑食だけど、肉とか魚は食べないはず。


 でも実際に村は襲われ、多くの人が犠牲になったと言う。


「先生。その襲われた人達は、ゾンビ化したんですか?」


「ああ。助手のマリコ君も噛まれてね。ゾンビ化するまであっという間だったよ」


「棟梁とか他の人達もその時にゾンビに?」


「そうだ。君さえ......君が要れば状況も変わったんじゃないか!」


 立ち上がり俺を指差して大声をあげる。

 目は血走り、今にも俺に掴みかかりそうだ。

 それでも俺は冷静に答えたよ。


「丸川先生。流石に俺が1人居ても、群れを相手に戦えませんよ。銃の弾薬も数がありませんし、当てる事も難しかったでしょう」


「それでもマリコ君だけなら助けられた! 何故逃げたんだ!」


「理由も知ってるでしょうに。自分で守れなかっただけでしょ? 俺に責任転嫁しないで頂きたい」


 もう勘弁して欲しい。

 丸川先生にとって娘の様な存在だったんだろうけど、そんなに大切なら自分の身を呈して守れよ。

 それをしなかった時点で、自分の身が大事だっただけだろうに。


 この先生ってこんな人だったか?

 あの時の俺の様に、ウイルスにやられてる?

 まさか食人鬼に襲われたとか?


 しかし先程まで怒り狂っていたはずの先生が、突然元の温和な顔に戻る。


「すまない。少し君を試させてもらった。もう体内のウイルスの影響は受けてないようだね」


「はい? ああ。あれから水にも気を付けてますし、怒りに我を失う事もほぼありません」


「そうか。そんな君に頼みがあるんだ。どうか私の研究に協力して貰いたい」


 そう言って頭を下げる丸川先生。

 ちょっと正直意味が分からん。

 協力って何すれば良いのかも言われてないし、そんなの返事が出来るわけない。


 だからもう普通に聞いたよ。

 そしたらさ。丸川先生がここに来た理由を聞かされた。


 丸川先生はあれからもウイルスの研究を続けていたらしい。

 しかし動物にまでウイルスが感染する事を知り、それまでのデ-タが使えなくなったんだ。

 まぁ俺の血液とか村の人間の血液も調べてたのは知ってるけどな。


 そこで俺の出番。ウイルスに打ち勝った俺の血液が欲しいんだってさ。

 出来れば変異種のサンプルが欲しいとか、簡単に言わないで欲しい。

 今の俺では、ゾンビ犬でさえ難しいと思うんだよね。


 装備だって返してもらえないし。


「俺の血液は少量なら良いですよ。今はまだ身体が全快してませんし。変異種のサンプルは金森さんにお願いして下さい。俺って罪人扱いだから、装備が貰えないんですよ」


「罪人......そうか。それなら金森氏に聞いてみよう」


「因みに昨晩の騒ぎは大丈夫だったんですか?」


「ああ。数名被害に遭ったようだが、私も川口氏も無事だよ。暴れた彼らについては、これから研究させてもらうがね」


 そう狂気を浮かべた顔で言う丸川先生。

 やっぱりこの人おかしいよな。

 2重人格みたいになってるじゃん。


 ここでタイムアップな様で、制服警官が丸川先生を迎えに来た。


 もうサッサと出て行って貰いたかったから、内心めちゃくちゃ喜んだよ。

 結局サルの事も考察すらしなかったし、俺への頼みはついでだったのか?

 あの怒りは絶対演技じゃ無かったと俺は思ってる。


 この世界で生きていると、皆壊れて行くけどさ。


 他人のせいにして、自分を正当化するのは辞めて欲しいよ。

 

 言われる方は、たまったもんじゃないんだから。








◇◇◇


 


 


 

 それから数週間。

 丸川先生は何度か会いに来て、俺の血液採取も終わったよ。

 何かに使えるなら、役立てて欲しいもんだ。


 そんな事より、今日は特別な日なんだよ。


「まだリハビリは必要ですが、傷も骨折も完治と言って良いでしょう」


「そうか! 長かったなぁ。全治3ヶ月だっけ? 最初の診断」


「まぁ約3ヶ月ですよ。半月伸びただけでしょ」


「そりゃあ設備も無い病院だけどさ。治りも悪いって事は分かった」


 怪我をしてから、3ヶ月半にもなるんだよ。

 引き籠るにしても、いい加減飽きる。

 たまにしか外に出られないから、体力的にまだ不安もあるし。


 付き合ってくれたゴボウ医師にしか、文句言える相手いないんだよね。

 同じ罪人には弱みは見せられないから。

 それでも此処まで協力してくれた事は、本当に感謝しているんだ。


「経過については金森さんに報告済みです。もう明日にでも遠征許可がおりますよ」


「明日って調査日だったな。いよいよ外へ戻るのか」


「逃げたいからって、怪我しないで下さいね?」


「分かってるよ。大怪我負って、置き去りにされない限りな」


 俺の返答に渋い顔をするゴボウ医師。

 半分冗談だよ。

 置き去りにされるのは、間違ってないけどな。


 そして次の日。


 俺は他の罪人たちと一緒に調査に出たんだ。

 俺の武器は金属バット1本。

 ナイフも無し。


 せめて身体を守れる装備が欲しかったが、それも許可されなかった。

 武器を隠されると困るとか言う理由でな。

 全く信用は、されてないよね。


 俺は一団の最後尾を選択。

 前を歩くと刺される心配があるからな。どうにも信用できないメンツだし。

 罪人は5人で1チ-ム。


 ハヤトも居ないし、知り合いと言えるメンツじゃない。

 1人だけ覚えのある奴もいるけどな。

 女顔の男だ。ほら委員長達がタ-ゲットになった時に居た奴。


 男か女か分からなかったけど、本人申告で男だったと判明したよ。

 見た目通り癖がある奴でさ。

 華奢そうに見えて合気道の達人らしい。


 本人談だから、話半分でしか聞いて無いけどな。

 そんなメンツでの初戦闘は直ぐに訪れた。


ウォオオ―――ン!


 いきなり叫び声が聞こえ、陣形も取れずに戦う羽目に。

 各自それぞれで対応に当たる。

 意外とそれがハマって、撃退とは行かないものの、何とか戦えている。


 俺も久しぶりの戦闘に心が躍った。


 最初こそ相手のスピ-ドに翻弄されるが、目だけは良く見えていたんだ。

 徐々に攻撃パタ-ンも分かり、攻撃をかわした瞬間にバットを叩きこむ。

 威力もそこそこだし、バットの寿命も近い。


 そんな状況でも俺は負ける気がしなかった。

 そして遂にゾンビ犬の前足を1本折る事に成功する。


 1本でも折れれば動きは制限されるので、間髪入れず追撃。

 こうなると全ての足を折るのに時間は掛からなかった。


「良しっ! バットはもう駄目だが、取り敢えずこれで良いだろう」


 予備のバットすら無いから、この次襲われる前に調達したい。

 自分の戦いが終わり気持ちに余裕が出来たので、他のメンツの戦いを見る。

 

 おうおう。

 なかなかやるもんだ。


 1人はナイフを上手く使い、的確に足の腱を切っている。

 もう1人は柔道の投げ技で首の骨を折りに行ったよ。

 あの女男は......自分で言うだけあって戦い方が安定してる。


 技は良く分からないが、ゾンビ犬を投げてる?

 力も入ってない感じなのに、遊ぶように何回も雪に叩きつけてるんだ。

 あれが相手の力を利用するってやつか。


 最後の1人は既に戦いが終わっている。

 失敗した。

 全員の特徴が知りたかったのに。


 たまたま同数だったから、やけにあっけなく終わったな。

 この5人なら変異ヒグマ以外は、問題なく対処できそうだ。

 

 初の戦闘は終わったけど、調査はまだ始まったばかり。

 俺達は再び移動を開始した―――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ