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終末に向かう世界に希望なんて見つかるのだろうか?  作者: 早寝早起き
第6章:ウイルスの変異と新たな脅威編
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知ってから思う事

 戦闘が終われば移動を再開。

 誰も言葉を発しないから、逆に緊張感が出る。

 俺はこう言う関係が心地よく感じてしまうんだ。


 気を使うのも苦手だし、話題を提供できる自信も無いからな。

 病院を出てから思っていたけど、俺達の向かってる方向に高い建物が少ない。

 ここって実際、何処なんだろうな?


 場所に関して誰も教えてくれないんだよ。

 脱走者に覚えさせないためか?

 そんな想像をしている時、先頭をあるくガタイの良い男が右腕を挙げた。


 何か言えよと思うが、止まれと言う指示なのは分かってる。

 男は俺の方へ向きを変え、クイクイと手招き。

 他のメンツは思い思いの方向を見て、その行為に興味を示さなかった。


 特に反発する理由も無いから、俺は男の元へ向かう。


「あの赤いコ-ンが見えるか?」


 そう言われて指差された方向を見ると、100メ-トルほど離れた位置に三角のコーンが見えた。

 俺は頷いて返事を返す。

 すると今度は別の方向を指差して言う。


「もう一つ同じものがあそこにある。それを繋ぐラインの範囲には、絶対に立ち入るな」


 そう言われたので、同じく確認を行う俺。

 まぁまぁ広い範囲を指定されたもんだ。

 入るなと言われたら入らないけど、指定された範囲に特別何も見えない。


 一面が雪に覆われていて、何箇所か突起物が見えるだけ。

 置かれたコ-ンだって、吹雪いたら見えないんじゃねぇのか?

 

「悪い。立ち入り禁止なら入らないが、一体ここは何なんだ?」


「そうだな。落ちたら面倒だ。ついて来い」


 男は少し考えたようだが、俺の問いかけには応じた。

 俺は言われるまま、男に続き進入禁止エリアへ向かう。

 落ちるってなんだろうなと疑問を浮かべながら。

 

 進入禁止エリアの間際まで来て、男はその場にしゃがみ込む。


 そしておもむろに雪を掘り出したんだ。

 俺もただ立っているのも暇なので、一緒に掘る事にする。

 特に礼も言われないけどな。


 そのまま30センチほど掘った際、コツンと固い感触が手に伝わる。

 何だろう? ガラスか?

 

「絶対に割るなよ。強化ガラスだが、この気温では何時割れてもおかしくない」


「こんな場所に強化ガラス? なぁ。これ何なんだよ?」


 男は返事の代わりに、黙々と雪を除けて行く。

 

 すると、そこに驚くような光景が広がったんだ。


「なっ⁉ どう言う事⁉」


 思わず声を出してしまう俺。


 ガラスの下には広い空間が広がっているんだが、そこに大量のゾンビが群がっていたんだよ。

 何でこれ程の数のゾンビがここに⁉

 こんなの落ちたら助からないじゃん!


「これで分かっただろう。落ちればあの連中の仲間入りだ」


「どう言う場所かぐらい教えてくれよ。いくら何でもこんな群れは見た事無いぞ」


「まぁ良いだろう。この場所がどう言う経緯で出来たかを教えてやろう」


 男が話すには、俺達がさっき歩いて来た雪の下は駅らしいんだよ。

 ちょうど2階部分に駅のホームがあり、そこから商店街に向けて続く直通の通路があるんだ。

 屋根も含めて前面ガラス張りで作られている為、通路から下を覗けば商店街が見える仕様。

 この歩道が商店街の屋根代わりにもなってる。降りる階段も複数付いてるし、雨の日も安心。

 

『駅から直通で駅前の商店街に行ける空中歩道!』

 

 なんて愛称まで付けられていたらしいよ。

 でも住民からの評判は最悪。

 かなりの工事費を掛けて作られた物だが、上を歩けば下から丸見えだから女性は激怒。


 更に夏になれば通路内が高温になり、とても歩けたものじゃない。

 観光の目玉として期待されたんだが、結局使用される頻度は低いままだったんだ。

 何故こんな物を作ったのかと聞いたら、ここの市長が視察で関西の有名水族館へ行った際に、感銘を受けたとかなんとか。


 あれは水中だから成り立ってんだよなぁ。

 今は魚代わりにゾンビの群れが見えるけど。


「でもそれとゾンビが集まってる理由は別だろ?」


「俺もそれは分からん。ある日突然、移動したとしか」


 ん?


 俺はここである事を思い出す。

 ちょうど会いたくない人間と会ったから、当時を思い出したんだけどな。

 長谷川村から高原ダムへの移動の際に、ゾンビが集団で移動してた事があったよな。


 あれも原因は分からなかったが、集団で移動する要因はあるだろう。

 あの時はダム付近。今回は......あれ? あの看板って⁉


 俺は考え事をしながらゾンビを見てたんだが、その際に知りたくなかった情報が目に入ったんだ。

 『ようこそ! 鞍馬温泉へ! 美容に良いお湯をお楽しみください!』

 何て言う言葉の入った看板をさ。


 ここって俺達が目指した温泉地かよ!


 叫びたい気持ちをグッと堪えるのに苦労した。

 ああ。色々と夢見て歩いた先にここはあったのか。

 なら兄妹達も委員長やレイさんも無事に辿り着いてたんだなぁ。


 考えれば納得できるんだよ。

 飲み水は普通に出て来てたし、食べる物も罪人以外は野菜とかも食べてるのかも?

 遠目で見た住人は小奇麗にしてたし、風呂とか入れるのかも知れない。


 もしそうなら、子供達も委員長も喜んでるだろう。

 温泉楽しみにしてたし。

 


ピシッ。



「おいっ! 何してる! 早くそこを退け!」



 その叫び声で俺は意識を戻した。

 俺さぁ。知らないうちにガラスの上に立ってたわ。

 今、俺の足元は蜘蛛の巣みたいにひび割れている。


 こんな時ほど焦っちゃ駄目だ。

 ゆっくり移動すれば大丈夫。



ピシシ。



 頼む。流石にここ落ちたら、もう助からん。

 動こうとはするんだけどな。

 今動いたら割れるのが分かっちゃうんだよ。


 だから体重の移動が出来ない。

 

 アカンて。こんな映画みたいな危機はいらない。

 

 その時だ。




ブンッ!




 突如、俺の身体が空中に浮いたんだ。

 もう誰かにぶん投げられたみたいに。


 ......って投げられてる⁉




ドスンッ!



 受け身も取れずに、雪の上へ叩きつけられる俺。

 もっとこう優しく出来ないもんかね⁉

 恨みがましく見上げた俺を、女男君が冷たい目で見てた。


「つまらない男」


 どう言う意味だ⁉ ちゃんとお礼を言うつもりだったのに!

 そして何事も無かったかのように、俺を置いて移動を始めるメンバ-達。

 俺も慌てて立ち上がり、後ろを着いて行ったけどな。


 案外優しいとこあんじゃんって思ってるけど、口に出せないと言う関係性。

 

 初めての調査は、そんなトラブルがありながらも、無事に病院へ帰る事は出来た。

 


 この後に入った住居で、無事に新しい金属バット君ゲット出来たけどな!






◇◇◇



 


 もう事実が分かってから1週間。


 俺は同じチ-ムで数回の奉仕活動をしている。

 身体が本調子に戻るまで、どうするか考える時間が欲しかったんだよ。

 正直、罪人の扱いを除けば、このコミュニティに不満は無い。


 訓練された制服警官もいるし、武器もそれなりにある。

 変異種や公安警察相手でどう戦えるかは不安だが、話によれば金森の賛同者も多いらしい。

 だから川口の様に合流してくる人数も増えて行くだろう。


 対人戦は人数が多い程良いし、制服警官など戦える人間が増えれば、より安全性も増すだろう。

 勝手に心配していた兄妹も、ゴボウ医師の話ではかなり馴染んでるみたい。

 委員長の事は口を濁すんだけどな。俺には知られたくない事もあるのかも知れないが。


 レイさんは姿を見たよ。

 こっちは一切見なかったけどな。

 仲間に知り合いだと思われたくないからだろう。

 別に俺は気にしてないから、無視されても良いんだけどな。

 一応知り合いだし、元気な姿を見て安心はするけど。


 でもなぁ。


 居心地が良いのと、納得できるかは違うんだ。

 俺は集団生活が苦手だし、このままここに居るつもりはない。

 

 それに政治家は嫌いだ。


 大を生かす為に、小を切る。そんな判断が出来るのも政治家だから。

 この考えは自体は、おかしくは無いよ。必要な場面も、こんな世界だからあると思うし。

 でもそれを勝手に決められるこっちは、到底納得出来んよ。

 誰かが決めないと、コミュニティを存続できないのも理解してるけどさ。


 衣食住なら、俺は何とでも出来る。

 水源さえあればだけどな。


 じゃあ俺は何を悩んでるんだろう?


 口では逃げると言っているけど......。


 やっぱり気になるんだよなぁ。兄妹や委員長の事。

 本当に満足できてるか? もう俺の事は忘れたのか?

 なんて柄にもなく思っちゃうんだ。


 でも今の状況じゃ会う事も出来ないんだよ。

 ゴボウ医師だって、多分無理をして情報を聞いてくれてるし。


 駄目だ。駄目だ。


 考え込んでも答えなんか出ない。

 とにかく逃げる前提で情報収集しよう。

 先ずは監視員が誰かを、見極めるって決めてたじゃないか。


 一番簡単なのは今一緒に動いてるチ-ムだ。


 あの4人の中に監視員は居る。

 

 一応の目星は付いているが、どうやって尻尾を出させるかが問題だ。


 考えてる事が、上手く行けばいいんだけどなぁ。


 それを明日、必ず暴いてやるんだ!

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