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終末に向かう世界に希望なんて見つかるのだろうか?  作者: 早寝早起き
第6章:ウイルスの変異と新たな脅威編
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拠点強襲

 翌日は俺の奉仕日。

 何時もの様に朝食を済ませた後、部屋の鍵が開けられる。

 それと同時に罪人達が点呼を取られるんだ。


 もう毎回の事だから、俺も慣れた。

 経験は無いけど、刑務所みたいだと思ってる。

 規律はそれ程厳しくないけどさ。


 それが終わればチ-ム毎に移動を開始。

 俺はこの時に、リーダ-扱いの男に声を掛ける。

 昨日、あの立ち入り禁止区域を教えてくれた男だ。


「なぁ。今日は俺に先頭を任せてくれないか?」


「何故だ。後ろが気にならないのか?」


「少し感覚を取り戻したくてね。最後尾だと感覚が鈍くなってて」


「......まぁ。良いだろう。目的地は覚えてるな?」


「問題ない。地理は覚えが良い方だし」


 無事に提案が通ったから、これで第一段階はクリア。

 病院から出て、指定されている場所へ向かい始めた。

 

 移動中は特に何も起きず、指定エリアまで到着。

 俺は声を掛けてから、偵察目的で建物の中へ。

 この時、俺は敢えて姿を隠した。


「やはりアイツだろうな」


 姿を隠したのは数分だったが、他の4人の内の1人だけが俺を追う仕草を見せたんだ。

 俺はそれを確認してから、皆の元へ戻る。

 ゾンビの有無を確認すると言う前提だから、ちゃんと気配も探っているけどな。


 因みに今いる建物は元学校だ。

 教室のある校舎に用事は無い。

 目的は体育館内にある倉庫に、非常用物資が残っているかどうかの確認。


 でも体育館の入り口が雪で埋まっているから、校舎内には入らないといけない。

 2階部分が渡り廊下で繋がっているんだよね。この学校は。

 学校自体はそんなに大きくない。


 温泉地だけど、街の大きさは川越町より少し大きいぐらいだしな。

 目的の体育館は、地域指定の避難場所なんだよ。

 俺は稲垣の事を思い出すから、体育館は好きじゃないけど。


「じゃあこのまま入るよ。入った部屋を出て右へ進むと渡り廊下へ出るはず」


 俺の言葉に頷く4人。

 もう慣れたけど、返事ぐらい欲しいなぁ。

 まぁこれから少し驚いて貰うから、少しぐらい声は聞けるかも知れないけど。


 俺は素早く建物内へ入り、ある仕込みをする。

 仕込みと言っても難しい事はしない。

 少し音を出して貰うだけだ。



ガシャン!



 俺を追う様に入って来た男が、机の上に置いてあった花瓶を落とす。

 落とした本人は苦笑を浮かべているけどさ。



ゴソ。


ズリズリ。


 

 音に反応したゾンビが、教室の隅から這い出て来る。

 数は多くない。


「おい貴様! 確認したんじゃ無いのか!」


 その男はゆっくりと立ち上がるゾンビを、柔道技で投げ飛ばす。

 

 はいはい。


 流石は警察官だ。俺は今のアクションを見逃してないぞ?

 今ゾンビに近寄る前に、腰に手を回した。

 あるもんなぁ。そこに何時も使う警棒が。


 柔道だけなら、特に疑わなかったけどさ。

 その動作は訓練されてるから、どうしても身についてる。

 上手く誤魔化してるみたいだけど、これで確信できたよ。



「すまん。こう言う事があるから、感覚を取り戻したかったんだよ」



 俺は無理やり申し訳ない表情を作り謝罪。

 直ぐに残りのゾンビの排除に向う。

 校舎内だし子供のゾンビが出たら嫌だが、ここに居るのは大人のゾンビのみ。


 体育館に入りきらなかった人を、校舎内へ受け入れたのかもな。

 数分で排除が終わったので、俺にそれ以上文句は出なかったよ。


 俺の目的は達成したから、後は真面目に調査を再開。

 渡り廊下までは何も無く進む事が出来た。

 しかし問題は体育館の中だ。


 結構な数のゾンビが居る。

 普通なら撤退する所だが、俺達罪人には撤退は認められていない。

 だから当然、戦う事になる。


「じゃあいつも通り、各自で対処って事で」


 俺はそう言った後、1人で2階から降りた。

 動き自体は遅いから無理に戦わず、事前に教えられた倉庫の扉へ向かって走る。

 残りの4人もそれに続いた。


 少しでも走り込みしてて良かったよ。

 体力無かったら捕まって終わりだし。

 邪魔なゾンビをバットで払いつつ、俺は扉へ急いだ。


 倉庫の扉は閉まっていたが、鍵はかかっていなかった。

 ホッとしたが、扉を開けて中にゾンビが居たら堪らない。

 出来るだけゆっくりと、押し開きの扉を開く。


 他の4人は俺を守るように、ゾンビを牽制しながら待った。

 

「良しっ! ゾンビは居ないぞ!」


 俺は素早く中へ。


 続いて女男とガタイの良い男。

 そして俺が唯一、注意している謎の男が続く。

 

 え⁉



ブンッ! 



「貴様⁉ 何を⁉」



 何とその謎の男が後ろを振り返り、俺が警官だと思っている男を投げ飛ばしたんだよ。

 それを見た女男とガタイの良い男が、倉庫の扉を閉めにかかる。

 一体これはどう言う事だ⁉


 もう阿吽の呼吸なんだよ。

 表から扉を開けられない様に押さえ続ける二人。

 万が一に備え、構えを取る謎の男。


 扉の外からは悲鳴交じりの怒声が聴こえた......。


 俺はその場で暫く惚けていたんだが、我に返ると扉を押さえる物を探す。


「おい。手伝ってくれ。このラックを扉の前に移動したい」


 謎の男に声を掛け、二人で重たいラックを移動。

 女男とガタイの良い男も手伝い、何とか扉の封鎖をする事が出来た。


 このまま一息つきたいが、俺は3人に声をかける。



「どう言う事だ? お前ら3人は知り合いなのか?」


 

 俺の問いに暫く無言だったが、ガタイの良い男が口を開く。



「俺の名はタケシ。元々この街の住民だ。そしてこの可愛いのが、俺の妹のナツミ。そっちの無口なのが、同じくこの街出身のケンだ。妹と同じ道場に通っている」


「なるほど。それで? 仲間を見捨てたのは何でだ?」


「何言ってんだ? お前も気づいてたんだろ? アイツが何者なのか」


「良く言うよ。あの警官? 監視員? もお前らの知り合いだろうが」



 何度も一緒に行動していれば、例え喋らなくてもそれぐらい気づく。

 その話以上に驚いた事もあるけどな! やっぱり女じゃん!

 めっちゃ強いけど。


「アイツは裏切者」 「そうだ」


「はぁ。黙ってりゃ良いのに、こいつらはもう。そうだよ。警官の佐竹もこの街出身だ。年齢は少し上だけどな」


 女男改め妹ちゃんとケンが俺の問いに答えたから、仕方なくと言った感じでタケシが認めた。


 そして聞いてもいないのに、身の上話を始めたんだ。

 彼らは幼馴染。

 割と狭いこの街で育った彼らは、大人になっても付き合いが続いていた。


 警官の佐竹は兄貴分。

 面倒見の良い男だった為、皆から慕われる存在だった。

 実際、パニック発生時は率先して住民を守り続けたらしい。


 そんな佐竹が変わったのが、金森がこの街へ来てから。

 あっという間にコミュニティの指導者に収まった金森。

 佐竹を含む警官たちも次々に従うようになった。


 例え知り合い同士であっても、殺傷事が起こるこの世界。

 それまでは余程の事が無い限り、佐竹も黙認していた。

 やむを得ない場合に限っては。


 しかし金森の傘下へ入った途端、それまで親しくしていた人達を罪人扱いするようになった。


「佐竹は仲間を次々に売ったよ。もうどれだけの人数が、怪我も治療されずに逝っちまったか。だから俺達3人は、こんなチャンスを待ってた。とうまだっけ? お前が敵にならないかヒヤヒヤしたけどな」


「俺も良い様に使われたって事だろ。今の所、敵対する気は無いよ。お前ら相手に勝てる気もしないし」



 現在の状況は好都合ではある。

 でも監視員を殺してしまって大丈夫なんだろうか?

 奉仕中だとは言え、俺達が殺ったと思われないか?


 もしかしてコイツら、俺を売る気じゃ無いだろうな?


「とうまが何を心配してるかは分かる。でも心配するな。俺は他の警官とも懇意でな。今回は不幸な事故として報告すっから」


「他の警官と懇意? どう言う事だ?」


「あのコミュニティも一枚岩じゃないってこった。金森のやり方に不満を持ったメンバ-も居る」


「それはそうだろうけど。でもこれからどうすんだよ?」


「俺達は金森からこの街を取り返す。とうま。お前も協力してくれないか? お前の仲間も助けたいだろ?」


 何の話だ。


 話の流れは理解しているし、協力もしないでもない。

 あくまでも金森の排除だけならな。

 危うい計画だったら、俺は手を引くつもりだけど。


 だが仲間を救う? 意味が分からん。

 子供達も委員長もレイさんも既に俺の手を離れてる。

 ゴボウ医師から穏やかに暮らしてるって......待てよ?


 その情報が嘘なのか⁉


 いや......ゴボウ医師は俺にそんな嘘はつかないはずだ。

 アイツはこれまでも危険を冒して俺を助けてくれた。

 ビッチの為だと言って、罪人扱いも受け入れた男なんだ。


「ど、どう言う事だ? 俺の元仲間達は穏やかに暮らしているはず。救うって何の話なんだ?」


「......やっぱり聞かされて無いか。とうまは、かなり警戒されてんだな。俺達罪人は、逃げられない様に人質を取られてんだよ。だから荒くれ者も暴れない。俺も家族を人質にされてるからな」


「人質? じゃあ俺が暴れたら、アイツらが何かされるのか? 教えてくれ! アイツらの現状を!」


「落ち着けよ。俺も詳しくは知らないが、状況は聞いてるから」


 タケシは仲間達の置かれている現実を教えてくれた。

 

 先ず兄妹の話だ。

 りょうたは、年齢以上に危険視されていて、一日中監視されている生活。

 りさちゃんとも会う事は許されず、再教育を受けているらしい。

 この再教育って言うのも、聞けば洗脳に近い内容らしい。


 りさちゃんは心を開かず、このコミュニティに来た時分は、ふさぎ込み衰弱していた。

 そこで俺の提案が渡りに船だった訳だ。

 委員長を側に置く事で、感情をコントロ-ルしようとしたんだろう。


 その委員長も未だに黙秘を続けているので、りょうたと同じく監視付き。

 りさちゃんと会う以外は、外出も認められていない。

 だからゴボウ医師も言葉を濁したのか。


「ちょっと待て。ナミには俺の知り合いが付いてくれてるはずだろ?」


「ああ。あの医者の連れの女か。あの女も監視付きだ。何時裏切るか分からない女が信用されるか? 数少ない医者の枷だから、変な扱いもされてはいない様だけどな」


 クソッ!


 俺がグズグズしている間に、結局アイツらが理不尽な目に合ってる。

 そんな事も知らずに俺は、のほほんとしていたのか!

 

 もう許さんぞ金森!


 絶対にアイツらを全員救い出す!


「分かった。俺はお前らに全面的に協力する。仲間を救い出すまで」


「いい顔も出来るのね」 「武者は嫌いじゃない」


 そこからは今後の彼らの計画について話を聞いた。

 怒りに任せて行動しても失敗するからな。

 俺もそこまで馬鹿じゃない。


 一通り打ち合わせた後、静かになった体育館から出る。

 勿論、残っていた物資も持ち出す。

 色々あって調べるのが遅れたが、少量使える物もあったからな。


 出る時は今までと違い、4人で連携してゾンビから逃げる事が出来たよ。

 ゾンビの中に佐竹が居たが、もう相手にしなかった。

 他の3人は複雑そうな顔をしていたけどな。






◇◇◇






 その帰り道。


 俺は不自然な痕跡を見つけた。

 

 これは(わだち)? それにこの大きな足跡って......。


「おいタケシ! どう言う事だ! これもお前らの計画なのか?」


「何の話だ? 何を怒ってる?」


 俺は状況を説明した。


 俺のみつけた轍は、当たり前だが車の物だ。

 それに続く様に大きな足跡。

 大きさから連想されるのは、変異ヒグマ。


 それらが進む方向は、俺達の拠点である病院なんだよ。


「嘘だろ⁉ 急いで戻ろう!」


 タケシが焦った声で叫び走り出す。

 

 俺は既に走り出してるけどな!




グォオオオオオオオオ!



ドォン! ドォ―――ン! ドォン!



パン! パン! パン!



 遠くからでも聞こえる獣の雄叫びと銃声。


 病院からは何箇所か白い煙が上がっている。


 俺達はとにかく急いだ。


 あの騒ぎの中に、兄妹と委員長が居る。


 待ってろよ。絶対に助けて見せるから。

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