鋼のメンタルを持つ男。(白目)
2階の探索が終わってから、早くも2週間。
現在食材の余裕があるのは水とお米のみ。
さて大変。節約の意味知ってるのかな?
そしてあの日から稲垣君は、毎晩何処に消えてるんでしょうか? (棒)
まだまだ若いからさ。一々突っ込まないけども。
そんな些細な事より、切実な台所事情の解決が先決だ。
「さて稲垣君。当初の予定より食材が減っている。何か言い訳はあるのかい?」
「ハイ! とうま先生! 夜中にお腹が減るんです!」
「へぇ。何で引き籠りがそんなにお腹が減るんだろうね?」
「ハハハ。ま、まぁ若さ爆発ってことで堪忍してつかあさい!」
もうそれは見事なジャンピング土下座を見せる稲垣。
ああ。別に怒ってないんだけどね。
俺だって普通に食べれば同じぐらい食べますから。
「まぁ良いでしょう。兎に角、再びマンション内を探索します。良いですね?」
「よぉ-し! 張り切って頑張りまっせ!」
「このノリしんどい。冗談じゃ無くどうする? やっぱり1階だろうか?」
「そうだな。念の為上階に登れないか確認して、無理なら1階って事で」
本当は1階は避けたいのが本音だ。
だって刺激したくないじゃん。あの未だ整列している彼らをさぁ。
でも多分、上階には登れないんだよね。
収納された梯子は引っ張れそうだけど、あの蓋が開くのかどうか。
取り敢えず稲垣が俺を肩車して、上の階の梯子を引っ張ってみる。
怖いわぁ。高所恐怖症じゃないけども、落ちそうで下が見れない。
でもまぁ意外と上手く行くんだこれが。
せいぜい高さは2メートルちょとだし。えっとこれを引っ張るのか。
スルスルスル。
あっという間に梯子が伸びました。
でだ。ここが問題。この蓋が下から押して開くのかどうか。
「んん。駄目だな。留め金かなんかあるんじゃないか? 硬いし重い」
「ええ⁉ バールか何か無いの? 無理やり差し込んだら一瞬だろうよ」
「お前さぁ。一般の会社員の家にバールあるか? 自慢じゃ無いけど陰キャだぞ俺」
「まったく自慢にならんな。そうは言うが、俺の家には普通にあったぞ」
それは親父さんが日曜大工でもやってたんじゃねぇのかな?
戸建ての家に住んでたら、ちょこっと何か作ったりするんだろうよ。
俺はバ-ルなんて何に使うかわからねぇし。武器にはなりそうだけど。
やるだけやってみたが、今日今すぐの解決は見送る事にした。
怖いけどこればっかりは仕方ないからさ。
ってそうだ。降りるときも一緒じゃん!
「ここを見てみろよ。留め金あるじゃん。上からだと外すの簡単だけど、下からは厳しくないか」
「ああ。だからこの隙間を無理やり通すんだよ。まぁ後日俺がチャレンジするわ」
という事で怖い視線を無視していざ1階へ参る!
◇◇◇
ズルズル......ズルズル
うわぁ。滑って登れないけど頑張ってる音が聞こえる。
絶対見ちゃ駄目だ。見たら張り切る恐れが大。
「じゃあ素早く済まそうか。今回は殴るなよ。音が響くとギャラリ-が興奮する」
「分かってるって。流石に俺も怖いしな。はいバキバキっと」
度胸だけはあるからヤダコイツ。こんな奴だから此処まで来れたんだろうけど。
本当は今日1日で済ませたい。でも今回は、物資を持って上がる手間がある。
なら近い2部屋もしくは3部屋の探索を終わらせようか。
俺は101号室で、稲垣は1つ飛んで103号室を担当にする。
流石に鍵は開いていない、まぁ当たり前だけどな。
という事で慣れた手つきで室内へ侵入する。
もう立派な盗賊っすよ。母さん親不孝者ですまない。
でやって来ました101号室。
実はここの住民は面識がある。
少し年配の男性なんだけど、たまたま引っ越しの際に挨拶したんだ。
とても上品な人で、誰もやらないマンション周囲の掃除もしてくれていた。
きっと避難場所へ向かったんだろう。申し訳ないですが失礼しますね。
この部屋も206号室と同じで、整理整頓がキッチリされている。
A型なんじゃないかな。因みに俺も自称A型だけど、整理整頓には自信ありませぬ。
そんな訳で何時もの様にキッチンへ。
うんうん。予想通り乾物や缶詰がある。
災害対策の非常食なんだろう。
ビニ-ル袋を拝借して全て詰めて行く。
缶詰10個、乾物、お米少々。おっと水もある。これは重いから先に上げておくべきだな。
運動不足だからケ-スが重い。これ持ったまま上がれるんだろうか。
太ももピクピクしてますわ。緊張で汗びっしょり。
えっちらおっちら何とか水を部屋まで上げた。ああしんどい。
そして冷蔵庫も確認。缶コ-ヒ-発見。
微糖だけど糖分の補給にぴったりだろう。
3本あるから1本は今飲んで、稲垣に飲ませてやろうかな。
汗かいた後だから余計に旨く感じる。
さてゴミは殆んど無いから、パパっと終わらせる。
たぶんあの人はキッチリ処分して行ったんだろうね。
まだ時間はあるけど、体力的に無理はしたくない。
取り敢えずこのまま一旦上に上がろう。
◇◇◇
それから待つ事1時間。
一体アイツは何をしているんだろうね。
ゾンビに襲われているとかは無いはずなんだ。
もう嫌な予感しかしないが、敢えてここで待つ。
若気の至りとか見たくないし。
とか考えてたら上がって来たようだ。
「いやぁ豊作豊作。もう時間忘れてたわ」
「へぇーそうなんだ-」 (白い目)
「おいおい。今回は食材も見つけたんだぜ。これを見ろ」
「ほうほう。カップら-めんが3個ね。で? それにしては時間掛ったんじゃない?」
「それはあれだ。企業秘密って事で」
「そうですか。それはそれは大変なこった。ビ〇本マスタ-って呼ぼうか?」 (虫を見る目)
こいつのメンタルは鋼なのか⁉ ちょと艶々なのが余計に腹が立つ!
納得しがたいが、これで数日の猶予は出来た。
明日も探索して早めに1階を終わらそう。
そんな軽い気持ちで居た俺に恐怖が待っている事を、この時考えもしなかったんだ―――
おやおや不穏な気配が致します。




