警察署内での事。
翌朝、吹雪が止み、予定通りに警察署内へ向かう。
何かがいる気配は、建物周囲には無い。
なので全員で一緒に動く。
俺的には委員長に、スナイパー的な役割をお願いしたかったんだけどな。
「1人で居残りなんて、乙女の危機です!」
とか言うからさ。
ジト目で見たけど、本気みたいだし諦めた。
委員長。今の君は接近戦でも、それなりに戦えますよ?
一生懸命、金○を練習してた事、俺は知ってるんだから。
それを教えたのが、何故か姫だったことも。
ちょっと想像して、寒気が来たから忘れようと思う。
それはさておき、警察署は下の階が雪で隠れている為、いつもの様に窓から侵入。
付いていたはずの鉄格子は、グニャグニャに曲げられていたよ。
これだけでも変異ヒグマが、どれだけ危険かわかる。
「これは酷いな」
置かれていたデスクとか、原型が分からないほど破壊されている。
壁や廊下には、夥しい血痕。
肉片もあるし、思わず姫の目を塞いだよ。
本人は気にして無いみたいだけど。
不思議なのは、ゾンビを見かけない事だ。
例え喰われたんだとしても、丸呑みされた訳じゃ無いだろうに。
不安を感じたので、別行動はしない事に決めた。
このフロアは足元に破片などがあり、探索が難しいから上の階へ上がる。
階段にも血痕や肉片がこびりついていたが、もう必要以上に意識しない事にする。
上がった階は、下と違い個室が並ぶフロア。
ここは各課毎に部屋が割り当ててあるな。
交通課、警務課、刑事課など、札が付いている。
書類関係に興味も無いし、時間はかけないつもりだ。
食糧系があればラッキーだけど。
武器関係は、こう言う場所には無い。
日本の警察は、銃の管理は徹底されてるからな。
あるとすれば保管室。今はたぶん上の階だろう。
遺体があれば探るんだけどなぁ。
ガタン。
⁉︎ 突然の音に驚くが、声を出すメンバーは居ない。
これだけでも、お前たちは普通じゃないと言いたい。
窓からの風......では無いな。
音の響きから、このフロア内の様だ。
俺は皆にハンドサインで待機を指示。
静かに廊下へ出て、音の聞こえた方向へ移動する。
ん? 取り調べ室?
そんな部屋がある事は知っていたが、実際に見るとなんだか少し感動を覚える。
たが、今はドラマ的な話は後だ。
俺は部屋の扉に耳を澄ます。
たぶん少しドアが分厚いんだろ。
それでも振動でわかるんだけどな。
ドアや壁が壊れてないし、生存者が居ても不思議ではない。
なんだけども!
この狙ったようなタイミングで、音を立てるのもおかしい。
ゆっくりドアノブを回してみる俺。
ほらほら。
普通は鍵掛かってるはずじゃね?
そう考えたが、俺も捕まった事無いし分からん。
感覚的にヒグマでは無いし、もう一気に確認する事に決めた。
バンッ!
「ひぃいいい」
ドアを勢い良く開けた瞬間、悲鳴をあげる女性が1人。
制服着てるし婦人警官だろう。
コスプレじゃないはず。
「大丈夫っすか? 俺、人間ですけど」
「に、人間⁉ 良かった......はっ⁉ ここで何してるの! 不法侵入!」
何言ってんだ? この人。
今更、不法侵入もなにも、あんたらだってやってんだろうが。
「はいはい。落ち着いて貰えませんか。別に貴女に用事も興味もありませんので」
「な、何しに此処へ? うちの署員に捕まるわよ?」
「ふぅ。何時からこの部屋に居たんですか? もうこの署内に誰も居ませんけど?」
「え⁉ じゃ、じゃあ。皆、あの変なクマみたいなのに?」
本当に警官なんだろうか?
俺は婦人警官の様子に警戒を解く。
聞きたい事はあるけど、協力が得られるか分からないなぁ。
ここは委員長達も呼んだ方が良いかもしれない。
という事で、動揺する婦人警官さんを仲間の元へ。
この婦警さん。名前はレイさんと言って、この署の「児童虐待対策班」所属だと聞いた。
だからなのか? りさちゃんとりょうたには、非常に好意的だ。
俺が親じゃないと分かると、かなり色々質問されたんだけどな。
隠す事でも無いから、掻い摘んで今までの話をしたよ。
その証拠に子供二人が俺に懐いてるし、信用できると判断されたけど。
正義感が強いのは職業柄、仕方ないんだろうけどさ。
警官の押しの強さがどうにも苦手だわ。
「じゃあ貴方達はここに食料補給に? それとその武器って」
「話した通りです。銃も返しませんよ? 今更不法所持とか言われても、警察や自衛隊が動かない以上、文句言われる筋合いは無い。奪うならこの場で戦いますけど?」
俺がそう言った際、レイさんが動くより早く、ナイフを抜く委員長とりょうた。
それを見たレイさんは苦笑いを浮かべ、両手を上げて降参ポ-ズ。
「怖いわね。私も出来ない事はしないわ。それに貴方に言われた事も耳が痛い話だし」
「変な事をしない限り、俺達は貴女を襲いません。敵対するなら容赦もしませんけど」
「わかったわよ。じゃあ提案なんだけど、この署内を一緒に調べるって言うのはどうかしら? 私なら案内役が出来るし。これでも少しは戦えるから、足手纏いにはならないわ」
提案自体は願っても無い話だ。
これが罠じゃ無かったら、と言う前提だけどな。
勘の良い天使が拒否しないから、ここはその提案を飲んだ。
直ぐ上の階が留置場と聞き、俺は興味ないからスル-しようと提案した。
でもレイさんの話を聞いて、その考えを改める。
何とそのフロアが、武器と食料の保管場所になっていると言うのだ。
「意外でしょ? 今は地下が使えないから、鍵の掛かる場所ってここしかないのよね」
そう言われて納得だ。
地下は酸欠の危険があるし、上階で管理するなら鍵がかかる場所になるもんな。
因みに拘留中だった人間は、既に違う場所へ移動されたらしいよ。
何処かは聞かないけどな。
カチャ。
「ここよ。ほら中にどうぞ」
「あはは。レイさん。そんな罠にかかるほど、警戒は解いてませんよ」
俺はレイさんに向けて拳銃を構える。
りょうたと委員長も既に散開して距離を取っている。
「ちょ、ちょっと! 私も迂闊だったけど、そんな気は無いわ! ほら拳銃も所持して無いから!」
言葉通り受け取れる程、俺達には人間関係も出来ていない。
俺も含めてさ。全員が他人を信用するには時間が掛かる。
表面上は気を許していても、悪意が見えれば直ぐに身体が動くんだよ。
レイさんも俺達を信用はしてない。それは警官だから仕方ないのかも知れない。
だから今の様に俺達を試す。
でもその行為は俺達を敵に回すよ?
今なら平気で、委員長もりょうたも撃つから。
俺の影響なのか、二人とも仲間以外には容赦ないんだよ。
「悪いんですが、レイさんは、入り口付近から動かないで下さい。動いたら撃たれますよ?」
そう言って俺と姫だけ中に入り、部屋の中を物色。
残っていた保存食は、あの監視に使った建物にあった物と一致。
結構な数量があるので、皆のリュックに詰めれるだけ頂いた。
俺は銃弾を中心に必要な物を集めて行く。
これ以上ライフルも拳銃も持てないから、勿体ないけど放置するしかない。
「あ、貴方たちはこれからどうするつもり?」
レイさんのその問いかけに、誰も答える事は無い。
俺達の此処での用事は終わったんだ。
もう直ぐにでもこの場を離れたい。
でもそれは無理だから、この留置場を利用させてもらう。
先にレイさんを空いている部屋へ入ってもらい、外から鍵を掛け隔離する。
抵抗されるかもと思ったが、素直に入ってくれたよ。
それから俺達も留置所内の別の部屋に入ったんだけどさぁ。
「何か想像以上に何も無い。トイレあっても今は使えないし。この背中の痛いベットもなぁ」
俺はベットに寝転がって、そう呟いたんだ。
他のメンツ?
委員長と一緒に、看守さんごっこしてますけど?
目的を達成できた事で、気持ちの余裕はある。
これならあそこに向っても問題無いだろう。
俺は仲良く遊ぶ仲間を見ながら、少し仮眠を取る事にしたよ―――




