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終末に向かう世界に希望なんて見つかるのだろうか?  作者: 早寝早起き
第6章:ウイルスの変異と新たな脅威編
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目的地はあの場所

 皆んな知ってるかい?


 人間より犬の嗅覚が優れているのは、もう当たり前の知識だ。


 じゃあさ。

 

 熊の嗅覚はと言うと、その犬の7〜8倍もあるんだぜ?

 そんなクマの襲ったであろう拠点に向かう俺達って、普通に頭おかしいのかも知れない。


「かたぐるまさいこう!」

「良いなぁ。次僕に代わってよ!」

「いや、りょうた君。そこは、お姉ちゃんに頼もうよ」


 委員長。男の子は恥ずかしいんだから、察してあげようよ。

 と言うか何で? 遠足状態になっているんだろう。


 事の始まりは、俺とりょうたが変異ヒグマを追った件からなんだよね。


 どうしても距離的に数泊はしないと、目的地にたどり着けないんだ。

 だから委員長とりさちゃんに、留守番を頼もうとしたんだよ。


 でもそれを聞いた2人が怒っちゃってさ。

 どうせ危ないなら、皆んなで行こうって話になった。

 野営も続くし、ゾンビ犬も出るから危ないって言ったんだけどさ。


 はい。天使の無言の圧力に負けました。

 俺は悪くない。この世の中で1番怖いんだから。

 女性だけ置いて、数日拠点を空けるのも危ないし?

 プンプン姫を笑顔にした俺を、褒めて欲しいところだ。


 ゾンビ犬については、俺の推測が当たれば大丈夫だと思う。

 ほら。犬って縄張り意識が強いから、変異ヒグマの匂いにも敏感でしょ。

 だから近寄らないはずなんだよ。


 現に出発してから、1度も会ってないしな。

 

 だから今の所は、のんびりと前に進めている。

 野外訓練で雪道にも慣れ、体力的に心配なメンバ-もいない。


 今日はこのまま、宿泊予定場所へ到着出来ると思う。

 事前に建物内の安全確認は終わってるし、変にトラブルがなければ大丈夫だろう。


 と言うフラグを立ててしまう俺。


 数分後、全力で走っています。


「りょうた! 先にそこの建物へ入れ! ナミ! りさちゃんを頼む!」


カァ-! カァ-! カァ-!


 知ってます?


 カラスって寒さに強い生き物なんだ。

 それに冬場は寒さを集まる事で補ってる鳥なんですよ。

 雑食だとは思ってたけど、こいつらもゾンビ喰っちゃたんだろうなぁ。


 最初は数匹見て、珍しいなと思ってたんだ。

 でも気づいた時には、上空が真っ黒になるぐらいに増えてたよ。

  

「あ! とりさん!」


 うちのごきげん姫がそう叫んだ瞬間に、スイッチが入った様に動き出したんだ。

 次々と上空から襲い掛かって来る、目の血走ったカラスの群れ。

 逃げ場は近くの建物しかないし、もう必死でバットを振り回しながら逃げる。


 こんな時の為に照明弾を残しておくべきだった件!


 カラスって目は良いけど、嗅覚は弱い。

 後は......音か。


「ええい。あまり音は出したくないが、これでもくらいやがれ!」


バァン! バァン! バァン!


 俺の撃った拳銃の音に反応し、一斉に飛び立つカラス達。

 でもこれは一時しのぎにしかならない。

 音は音でも高周波じゃないと、嫌がらないんだよなぁ。


 銃弾の無駄使いはしたくなかったが、取り敢えず皆の待つ建物へ走った。





◇◇◇





「おい! 倒すな! それを使う!」


 建物に飛び込んだ俺の第一声がこれ。

 ゾンビが居たらしく、りょうたと委員長が排除しようとしていたんだ。

 もうカラスがゾンビを食べるの分かってるし、使える物は使わないと移動すら出来なくなる。


 俺は二人を下がらせ、ゾンビを外へ誘導していく。

 建物には裏口もあったから、3人にそちらから出る様に指示。

 俺の合図で走り出す予定だ。


 俺はなるべく目立つように、建物の外へゆっくりと出て行く。

 それを追ってゾンビがノロノロと出て来る。

 すると待っていた様に、カラスが上空に集まり始める。


 ある程度ゾンビが出た時点で、委員長達に腕を振って合図。

 俺もカラスが下りて来るタイミングを計って、一気に建物に戻りそのまま裏口へ走った。

 幸い委員長達は襲われていなかったよ。


 俺もそこに合流し、宿泊地点へ急いだ。

 何とか吹雪になる前には、到着出来たので良かったよ。


「はぁ。ヒグマ、犬に続いて、今度はカラスかよ。勘弁してくれ」


 そう愚痴が出てしまう俺。

 ウイルスの変異なんて碌な物じゃ無いな。

 空を飛ぶ相手は反則だろう。


 あの人気作の映画なら群れを丸ごと焼くんだろうけど、そんな武器が日本の街中にある訳が無い。

 結構カラスも頭良いしな。知恵を持った変異種とか対応が難しい。

 今は冬で餌が無い時期だから、ゾンビで対応は出来るけど。


 そのゾンビだって、何時でもどこでも居るわけじゃ無いんだよ。

 音を出してしまったから、俺は夜の警戒をする事にした。

 あの人喰いグル-プから逃げてから、数時間の仮眠しか出来ない身体なんだよね。


 だからひと晩ぐらい寝なくても平気。

 

 結果的に心配したヒグマが来る事は無かったけどさ。


 



◇◇◇





 翌日からの移動は、拍子抜けするぐらい何も無かった。

 こちらが警戒しすぎて、余計に移動時間が掛かってしまったよ。

 

 拠点を出てから4日目、遂に目的地近くまで到着。

 直ぐに向かうのは危険なので、目的地の様子が見える場所を探す。

 

 すると監視に最適な建物を発見。


「お前たちはこのフロアで待っていてくれ。少し気になる事があるから、俺は建物内を調べて来る」


 その建物の中に人間の足跡を見つけたんだよ。

 ごく最近の物じゃ無いけど、警戒はする必要がある。

 丁寧に観察し、誰が使用していたのかは分かった。


「ここは公安警察か制服警官の監視場かな」


 上手く偽装はしていたが、見た事の無い保存食の空き袋を見つけたんだよ。

 こんな物は自衛隊か、それに近い組織でしか手に入らないだろう。

 使用されていた場所からは、俺達が目指していた建物が良く見える。


 丁度良いので、俺達も使わせてもらう事にしたよ。

 建物内を隅々まで調べたけど、人間もゾンビも居なかったし。

 今日と明日ぐらいまでここで監視して、動きが無ければ直接見に行く事にする。


 今回は俺だけじゃなく、他の3人にも監視に参加してもらう。

 視点が変われば、見る物も変わるからさ。

 俺がまた先入観で勘違いしない様に、気になる事はその都度伝えてもらいたい。


「とうまさん。アレって警察署ですよね?」

「ああ。その警察署を目指してここまで来たからな」

「でも廃墟みたいですよ?」

「外からはそう見えるな。でもそれを言ったら、ナミ達の居たあの工場も変わりないだろ?」

「ぐっ。確かにそうでした」


 見える範囲で言えば、建物は破壊された跡がハッキリと残ってる。

 窓ガラスも割られていて、どう見ても廃墟にしか見えない。

 人の出入りも無いし、周囲に変異ヒグマの姿も無し。


 それでも警戒は怠らない。

 油断してたら、いきなり襲われる。そんな事も想定しているからな。


「とうまお兄ちゃん。足跡調べに行かないの?」


「りょうた。それは明日見に行くよ。今日はここから観察するから、りょうたも何か気づいたら教えて欲しい」


 2日間、交代で監視を続けたが、特に動きも無いし収穫も無かった。


 そこで俺が代表して周辺を調べる事になった。

 雪がかなり痕跡を消してしまっているし、まだ委員長やりょうたでは難しいんだよ。

 うちの姫もご機嫌ななめだから、急いで調べようと思ってる。


 最初の足跡は警察署へ向かっていた。

 やっぱりあのまま変異ヒグマの群れが、此処に来たのは間違いない。

 足跡はかなり乱れていたが、これは戦闘によるものだろう。


 同じ場所に人間の足跡も混ざっているし、そこを中心に調べて行くと空の薬莢も発見。

 変異ヒグマの足跡は建物へも続いているから、警察署内も破壊されているんだろうか。

 

「ん? これはどう言う事だ?」


 警察署から離れる様に、人間と変異ヒグマの足跡が続いていたんだよ。

 普通に考えれば、逃げた人間を追ったと判断できる。

 でも公安関係者の移動って、あの黒い車両を使っていたよな?


 アイツらが逃げる時に、車両を使わない選択をするのか?

 どうにもその想像が出来ない。


 気になった俺は、警察署敷地内の駐車場を見に行った。

 

「やはり無いな」


 あるはずの物が無い事で、嫌な想像をしてしまう。

 これって上の人間が逃げる為に、部下を囮にしたんじゃないだろうか?

 決めつけるのは危険だから、後で皆に意見は聞くつもりだけど。


 俺は駐車場から続くタイヤ痕を調べる事にした。


 すると先程とは逆方向に続くタイヤ痕を発見。

 間違って無ければ2台分ある。

 もしかして公安関係者だけが逃げて、制服警官が囮になったんだろうか?


 いずれにしろ、公安警察の主力は壊滅していないだろう。


 ここまで調べた時点でタイムアップ。

 外が吹雪いて来たので、急いで皆の待つ建物へ戻った。


「俺が調べた事はこんな感じだ。俺の思い込みかも知れないし、皆の意見も聞かせて欲しい」

「状況的に考えて、私もとうまさんの意見に同意します」

「僕は難しい事は分からないけど、とうまお兄ちゃんの考えてるのが正解だと思う」

「ほうれんそうは、たべれません!」


 俺も状況から予想しただけだから、正解は分からない。

 でも皆の賛同は得れたし、明日は警察署内に入ってみようと思う。

 出来ればここで食料と弾薬を手に入れたいところだ。


 腰に手を当て自慢げに叫ぶうちのお姫様には、今度ちゃんとお野菜を食べさそうと思う。

 見つけられる可能性は低いけどね。

 何時も飲んでるサプリメントに、成分として入ってる事は内緒にしておこう。


 さて。


 明日の結果次第で、今後の予定が決まるだろう―――



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