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終末に向かう世界に希望なんて見つかるのだろうか?  作者: 早寝早起き
第6章:ウイルスの変異と新たな脅威編
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先入観は真実を曇らせる

「撃ったのか?」

 

 俺は委員長に声を掛けた。

 この選択をどの様に、この子が受け止められるのか。

 正直どう声を掛けて良いか分からない。


「はい。残念で仕方ありません」


 夜が明けるまで、遺体の処理は出来ない。

 ホント、この吹雪の中で良く狙えたものだ。

 きっとギリギリまで引き付けたんだろうな。


「朝に吹雪が止んだら、遺体を確認しようと思う。ナミは来なくて良いぞ」

「いえ。最後まで責任を持ちます」


 委員長はそれだけ言って、自分の就寝スぺ-スへ戻って行った。

 駄目だな俺は。

 自分で覚悟を求めておいて、委員長に掛ける言葉がこれかよ。


 この日は寝れそうも無いので、俺は朝まで周辺の監視を続けた。

 

 自分に何が足りなかったのかを考えながら。






◇◇◇





 朝になり朝食を済ませた後、俺達2人は遺体の確認に出向く。


「こっちで良いんだな」


「はい。ちゃんと場所は覚えています。雪が積もっちゃてると思いますけど」


 現場へ向かう俺達の足取りは重い。

 こればっかりは、どうにもならないな。

 どれだけ覚悟を決めても、結果を見る事は怖い。


 それでも前に進もうとする委員長は、一皮むけた感じがする。

 案内役の彼女は、迷うことなく現場を目指す。

 俺は周囲を警戒しつつ、適度な距離を保ってそれに続く。

 

「ここです。かなり雪が積もっていますが、血痕があります」


「そうか。掘り返すのは俺がやる。ナミは周囲の警戒を頼む」



ザクザクザク。


 

 少し硬めの雪は掘るのに少し苦労する。

 それでも暫く掘り進めると、男性の物と思われる足が見えて来た。

 ここからは慎重に遺体を注視しつつ作業を進める。


 ゾンビ化して襲われる場合もあるからな。

 警戒しながらの作業なので、結構時間が掛かる。

 それでも30分程で、下半身が確認できるまで掘る事が出来た。



ザクザクザク。



 俺は違和感を感じつつ、更に掘り続ける。

 下半身は動く様子は無いが、警戒は解かない

 ゆっくりと上半身まで掘り進め、遂に遺体の顔が見えて来る。

 


「どう言う事だ。ナミ!」


 俺は遺体を指差し叫ぶ。

 不敬だがここは許して欲しい。


「......そういうことです。私、間違ってるとは思いません」


 

 俺の問いに毅然と答える委員長。

 俺の怒った顔を見て、少し青ざめているけどな。

 そんな委員長に俺は続ける。


「ナミが撃った弾は全部で4発。この遺体に1発当たっている。残りは何を撃ったんだ?」


「そこから10歩ほど離れた場所に答えがあります」


 委員長はそう言うと、その場から移動し自ら雪を掘り始める。



 俺が掘り出した遺体の正体は......。



 ムライだったんだよ。


 下半身を見た時点で、すぐ違和感を感じていた。

 ゴボウならもっと細いしな。

 案の定、別人だった訳だけど。


 昨日も吹雪だったんだ。

 俺も正確には襲撃者を把握できていない。

 そんな時に響いた4発の銃声。


 微かに人の唸り声も聞いた。

 委員長の様子を見て、襲撃者をビッチ達だと決めつけてしまったよ。

 そこは俺の思い込み。

 遠距離での攻撃を任せていたし、それだけ委員長を信じていたから。


 腕は確かなんだよ。

 実際、ムライの遺体は、眉間を1発で撃ち抜いてるし。


 委員長は無言で遺体がある場所を掘る。

 

 もう今回は女性の遺体の下半身だけで理解した。

 襲撃者の正体は、あの2人だったよ。


 出て来たのは奥さんの遺体。

 こちらも眉間に1発。


「良かったな。友人を撃たなくて」


 俺は皮肉を込めてそう言った。


「いえ。私は撃ちましたよ」


 委員長は寂しそうに言う。

 どう言う意味だ?

 委員長は涙を流しながら、ことの真相を話し始めた。



 襲撃がある事は、探索中にビッチ達と出会った時から知っていたらしい。

 彼らはムライの言われるがまま、委員長にも協力を願い出た。

 勿論、委員長は怒った。自分をあんな風に扱い、切り捨てた人間に従う友人達を許せなくて。

 あの掴み合いの喧嘩の時の話だな。

 

 しかし俺に助けられた際、誤解を含めて腹を割って話した事で、洗脳の様な状態からは脱したらしい。


 それでも2人はムライ達から離れられなかったんだ。

 昨日来た時に委員長が必死に間に入ったのは、無理矢理にでも引き離したかったから。


 それは俺が断ったんだけどな。

 俺は気づかなかったが、監視もあったと言っていたようだけど。



「引き金を引く時、どうしても指が動きませんでした。だから致命傷は与えられたかどうか......」


「それでも撃てたんだろう? なら俺から言う事はない。ムライと言う鎖が無くなったんだ。傷が致命傷じゃ無ければ、この先懸命に生きていくだろうさ」


 優しすぎる性格。

 

 彼女の欠点でもあるが、俺はそのままで良いかもなと思ったよ。


 必死に泣くのを堪え、遺体を処理する委員長。

 俺が肩を叩くと、再び涙腺は決壊しちゃったけど。


 泣いてスッキリしたら、お説教するけどな。

 隠し事は、信頼関係を崩す。

 下手したら、こちらが被害を受けていたんだから。


 俺も反省点が多い。

 人間関係に臆病だから、悪意には敏感だ。

 でもそれが肝心な部分を相談出来ない、そんな雰囲気を作ってしまったんだよな。






◇◇◇






 拠点へ帰り、りょうたの訓練を見た。

 委員長は俺の隣で正座中。

 プンスカ天使が、怖いお説教中なんだよ。


 何故か俺も一緒に怒られてーる。


「ほうこく、れんらく、そうだんなの!」


 今時の小学校では、そんな事も学ぶのか?

 とか考えてたら、頭パシパシ叩かれた。


「とうまおにいちゃん。しっかりきくの!」

「はい! りさちゃん先生!」


 ひと通りお説教が終われば、全員で今回の一件を話し合う。

 情報共有が報連相の基本だからな。

 りょうたも真剣に話を聞き、しっかり自分の意見を言う。


「僕も友達いないから、ナミお姉ちゃんの気持ちがわかるよ!」


 ......りょうた。


 それは言っちゃいけない。

 ほら。委員長が固まったじゃん。

 まぁ俺のハートも滅多刺しだけどな!


 ずっ友の稲垣以外、友人と呼べる人間居ないし。

 委員長は、その辺聞いた事ないけど、この反応を見ると察してあげないとな。


「わたしもいないよ?」


 と言う場を凍りつかせる天使の言葉もあったが、この件で少しは俺達の結束は深まったと思う。


 決して、友達いない同盟では無い。

 




◇◇◇





 拠点に平穏が戻り、探索も再開。

 無人になった食品加工工場も見に行ったよ。

 委員長から聞いてはいたが、あれだけあった物資は見事に無くなってた。


 こんな状態なら、生活も苦しかっただろうな。

 自業自得だけどさ。


 さっと使えそうな物を持ち出し、周囲の探索へ戻る。

 気になる事を調べたいからさ。


 俺とりょうたは、変異ヒグマの痕跡を追っているんだ。

 探索時間が限られるから、少しずつだけどな。  

 まだりょうたには、外で宿泊しながらの探索は無理だからさ。主に体力的な問題で。


 だから今は、技術の習得を優先させているんだよ。 

 

「とうまお兄ちゃん。足跡見えないよ?」


「ああ。このままじゃ分からない。雪の表面を意識して見るんだ。ほら。こことそっち。何か違わないか?」


「う〜ん。あっ⁉︎ 雪の積もり方が違う?」


「そうだ。変異ヒグマは、身体が大きくて重い。その分、深く雪が踏み締められるんだ」


 俺はそう言って雪を丁寧にかき分ける。

 そこには変異ヒグマの足跡。

 りょうたは感心しながら、俺を真似て雪かき。  


 俺も山で教えられた時、何度も怒られた記憶がある。

 まだ雪道の方が分かり易いからな。

 是非、この技術は早く習得して欲しい。


 それが生き残る力に変わるんだから。


 委員長にも教えてるんだが、りょうたの方が筋がいい。

 だから偵察をりょうた、支援を委員長みたいに考えてるよ。

 俺が足りない部分をカバー出来れば、集団戦でも戦えそうだし。


 さて。


 出来れば変異ヒグマが向かった場所が知りたい。


 きっとそこには、新たな物資があるはずだから。

 

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