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終末に向かう世界に希望なんて見つかるのだろうか?  作者: 早寝早起き
第6章:ウイルスの変異と新たな脅威編
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不敬さん?

 皆が寝静まった頃、俺は夜の警戒をする為に部屋の外へ出る。

 心配はしていなかったけど、念の為婦警さんも見に行く。

 

「貴方も大変ね。いつも夜警してるの?」

「そうですね。貴女も起きてたなら、聞きたい事があるんですよ」

「何かしら? 答えられない事もあるけど」

「公安警察の事です。貴女は同じ警察官として、彼らを支持してますか?」


 この質問に対してどう答えるのかに興味があったんだ。

 答え次第では警察組織が完全に敵になる。

 

「私は嫌いよ。公安警察は秘密主義過ぎて、こんな世界になる前から得体の知れない組織だったわ」


 彼女はそう言ってから、公安警察に対する不満をぶちまけた。

 同じ警察官として、一般市民を問答無用で虐殺する様なやり方に賛同は出来ない。

 本当に国の指示で動いているなら、もはや日本は終わっているなど。

 警察官から出る意見としては、かなりぶっちゃけた発言が多かったよ。


 それに彼女は女性に対する扱いについても、不満を持っていた。

 セクハラ行為の横行など、同じ制服警官に対しても放送禁止用語連発。

 あまりにも色々喋るので、答えられない事って何だろう? って思う程だった。

 もう婦警さんじゃ無くて、不敬さんじゃね? とか思っちゃたよ。


「はぁ。スッキリした。こんな事、普段言えないから」


「そ、そうですか。それだけ不満を抱えていても、警察官であり続けるんですか?」


「まさかこんな世界になると思わなかったから、警察官で居ないと自分が壊れちゃいそうだったのよ。でも、もうそれも無理だってわかったわ。あのクマにここが襲われた時に」


 変異ヒグマの襲撃があった際、男性警官は我先に逃げ出したらしい。

 彼女を含む女性警官は、誰に頼る事も無く散り散りに逃げた。

 聞けば、公安警察は制服組に戦う事を指示したらしいが、例え警官でも化け物相手ではその気力も続かなかったらしい。


「もう地獄だったわ。私は外へ逃げることが出来ず、とにかく身を隠すために取り調べ室へ逃げたの。階下から聞こえて来る、悲鳴や獣の叫び声に震えながらね」


 その時の事を思い出したのか、両腕で肩を抱きながら彼女はそう言った。

 まぁ俺達も見たけど、あれだけ暴れられたら、どうしようもないだろうな。

 でも彼女が無事だったのは何故だ? この階だって変異ヒグマが侵入しただろうに。

 気になったので聞いてみた。


「この階にも変異ヒグマは来たんですよね? あの部屋が安全とは思えないんですが」


「それがね。同僚が建物内と外で、公安警察から渡された物を使ったんだと思う......」

 

 内緒だけど、と言って彼女から聞かされた話。

 公安警察がここの警察署へ来た際、渡された支給品があると言うんだ。

 それはマリンホイッスルという、クマ避けに使われる笛だったらしい。


 俺が今一番欲しい物だ。

 元々米国の沿岸警備隊で作られたと言われる、高周波が出る笛。

 アレならカラスにも効果があるし、変異種相手でも一定の効果が見込めそう。

 自衛隊が持ってると思ってたんだけど、思わぬ話にテンションが上がる。


「それ残ってませんか? あれば譲って貰いたいんですが!」


「......あの部屋にもあったわよ。欲しいなら持って行っても良いけど、条件を言って良いかしら?」


「条件ですか。無理難題を言われても困りますよ?」


「私も一緒に連れて行って欲しい。ここに1人で残るのは、怖いし嫌なのよ」


 う~ん。


 これは予想していた発言だけど、皆に相談してからだな。

 俺的には即、お断りしたい。

 理由は簡単。警官の倫理観では、俺達と相容れないだろうし。


 それに女性をこれ以上増やすと、面倒事も増えるだろうからな。


「即答は出来ませんね。ここに居たら、いずれ公安警察も戻って来ますよ? 武器も残ってますし」


「嫌よ。あんな奴らの言いなりになるぐらいなら、戦ってでも出て行くわ」


 うん。


 この人嫌いじゃ無いけど、判断は朝になってからだな。






◇◇◇






「このおねえちゃんは、だいじょぶ」


 

 そんな姫の一声で、俺を含む仲間からの反論は沈黙。

 俺は自分の考えを正直に話した上で、皆に判断を求めたんだけどね。

 色々と騙されて来たし、直ぐに信用も出来ないだろ?


 だからこれからも様子は見るつもりだ。

 

「じゃあ。これからよろしくお願いします」


 隔離していた部屋から出たレイさんは、そう言って俺達に頭を下げる。

 言いたい事言ったから、スッキリした顔してるよ。

 俺はその分疲れてますけどね!


 そんな挨拶の後、軽く朝食を食べた。

 レイさんは人と喋り慣れてるから、場は明るい雰囲気だよ。

 俺には出来ない事だから、ある意味助かる。


 それが終われば出発準備だ。


「レイさんもご自分の装備を持って下さい。手ぶらで歩けとは、言いませんので」


 どれだけ信用が出来なくても、外へ出るのに武器無しはマズい。

 変異種が居ないのなら、それでも大丈夫だったけどな。

 

 例の笛は人数分ゲット出来たし、良い事もあったと意識を切り替える。

 防弾チョッキがあったのも、幸運だったよ。

 銃撃戦もあると思うし。


「じゃあ出発するぞ。周囲の警戒は怠らない様に!」


 ここからは地図でしか、安全な場所が判断できない。

 だから変異種への警戒と、敵となる人間にも注意が必要だ。

 歩く順番は、りょうた、委員長、レイさん、最後に俺とりさちゃんだ。


 本当は委員長に殿を任せたい。

 でもまだ経験の足りない、りょうたの補助を任せた。

 レイさんを間に入れたのは、監視と実力を知りたい為。


「温泉楽しみです~」

「僕行った事無い」 「一緒に入る?」


 皆、ウキウキしているが、本来の目的は温泉に入る事じゃないぞ?


 今から向かうのは、一番近い温泉地なんだよ。

 安全な水を確保したいのが一番の理由。

 それと今後の事を考えて、一番農地として使えそうな場所だからだ。


 今は山も平地も、この急激な気温変化で農作物が育ちにくい。

 そこで少しでも可能性のある場所を考えたんだよ。

 勿論、温泉の性質にもよるけど。


 火山の近い地域と海に近い温泉地は、選択肢からは除外。

 酸性泉、硫黄泉は有毒ガスや塩害などの問題があるし、農地には向かないからな。

 本当は温泉なんてどこでも出るんだけど、1500メートル掘れる機械なんて無いし。


 平地に整備されてある単純温泉なら、ミネラルウォーターとして飲める。

 それだけでも向かう価値はあるんだよ。

 本当は冬が終わるまで待ちたかったけど、もう水の確保が難しいんだ。


 人数が増えたから、消費する量も多いし。

 だから温泉地に向いながら、今まで通り物資の調達もする。

 移動時間が限られるから、どれだけ早くても3週間はかかるだろう。


 途中立ち寄る場所でレイさんにも戦って貰った。


 分かってはいたけど、対ゾンビなら問題がない。

 ただ柔道の技は、今のゾンビには厳しいと思うんだ。

 腐ってるからさ。腕とか足とか引っ張たら......。


「うわぁ。変な匂い。制服に匂いついちゃったよぉおお。何でゾンビって、こんなに脆いの?」


「我慢して下さい。警棒を使えば良いじゃないですか」


「だって短いから怖いのよ! バット貸してよ!」


「嫌ですよ。住宅へ入って探してください」


 とまぁ、ギャアギャアと煩い。

 りょうたがレイさんを、可哀想な物を見る目で見てる。

 キャラが変わっちゃてるよね。


 そこを除けば今の所、問題行動は無いんだけどさ。


 そんな俺達の旅は、まだ始まったばかりだ。

 出来れば何事も無く目的地に着いて欲しいが、期待は出来ないだろう。

 

 だから誰一人欠ける事が無い様に、俺は気を引き締めたんだよ。


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