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終末に向かう世界に希望なんて見つかるのだろうか?  作者: 早寝早起き
第6章:ウイルスの変異と新たな脅威編
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伝わらない事

 変異種とゾンビの大きな違いは、同じ種以外とは一緒に行動しない事だ。

 現にヒグマと犬は同時に現れない。

 ゾンビは同じく餌になっちゃうけど。


 人間側から見ると、助かる性質でもある。

 ゾンビ犬と戦ってる時に、変異ヒグマが現れたら逃げる事も出来ないしな。

 考えるだけで恐ろしいよ。そんな状況は。


 なんて考え事をしつつ、俺は委員長とりょうたが戦っているのを見ている。

 りょうたは身体が小さいので、ゾンビ犬に腕力でも負けている。

 だから接近戦は避ける必要がある。


 普通ならそう考えるだろう?

 

 でも俺の考え方は違う。あえて接近戦をさせているんだよ。

 非力でも戦い方を考えれば良い。

 力がないなら相手をよく観察し、相手の動きに合わせた攻撃をすれば良いだけだ。


「りょうた! ゾンビ犬の動きは単純だ。よく見て避けろ! 上手く避けられたら、そのまま攻撃に移れ!」


 勿論、複数相手は危ないので、事前に排除してあるけどな。

 その担当が委員長だ。彼女も力勝負では分が悪い。

 でも体重の軽さで動きが早いんだよね。


「はぁはぁ。もう無理ですぅ! チョットは手伝ってくださいよぉ」

「手伝ったら訓練にならないだろ? 大丈夫。口は縛ってある。怪我を恐れるな」


 訓練用のゾンビ犬は、俺が雪道に落とし穴を掘り捕まえたんだ。

 簡単じゃなかったけど、ゾンビ肉を餌におびき出したんだよ。

 5頭落としたら、1頭だけ残す。

 

 残った1頭の首にロ-プを掛けて、動けなくしてから口を縛ったんだ。

 足の爪も危ないから切ってある。これだけやれば怪我の心配も無いだろう。

 恐怖はあるだろうけど、それを克服できないと戦えないしな。


 その時に大型ライフルを使ってみたけど、ゾンビ犬には過剰なほど威力があった。

 頭とか吹き飛んだしな。これは間違っても人間相手に使えないよ。

 銃に詳しくないから、何て名前か分からないんだけどさ。


「わたしもやりたい!」

「りさちゃんは駄目。見るだけって約束したよな?」

「だってひまなんだもん」

「よし。雪合戦しよう」


 寒い中頑張ってる2人の横で遊ぶ、オッサンと女の子。

 なかなかシュ-ルな絵面が出来上がった。

 たまにはこういう時間も必要でしょ?






◇◇◇

 


 

 


「疲れたぁ」


「はぁはぁ。とうまさん。スパルタ過ぎませんか?」


「ゆきだるまできた!」


「りょうたお疲れ。よく頑張ったな。冷静に相手の動きを見れてたよ。まだ単独では戦えそうに無いけどな。ナミ。お前はもっと頑張れ。俺達みたいな凡人は、訓練を繰り返さないと強くなれない。りさちゃん。大変良く出来ました!」


「うん。もっと早く動けるように頑張る!」


「とうまさんは凡人じゃ無いでしょう? 私にもよく頑張ったって褒めて下さいよ! 褒めたら伸びる子なんですよ!」


「つぎはくまさん」


 りょうたは性格が素直だし、これからもっともっと強くなれる。

 委員長は何を言ってるんだ? 俺は凡人だよ。

 日々俺だって努力してるし、昨日今日訓練を始めたお前らと一緒にされても困る。


 ある程度戦える技術がついたら、今度は足跡の調べ方とか教える事は山ほどあるんだ。

 コレぐらいで、へばってる場合じゃ無いだろう。


 くまさんはヒグマを連想するから、パンダで交渉しよう。

 きっと喜んでくれるはず!


「断る! ナミは人に甘えるのを辞めろ。 自分1人でも戦えるようになれ。りょうたは、その調子で頑張ろうな。りさちゃん。パンダの方が可愛いと思う」


 訓練ばかりする時間も無いけど、冬の間に力を少しでもつけて欲しい。

 前にも言ったが、冬が終われば公安警察も動き出す。

 そこに変異ヒグマやゾンビ犬。或いは新たな変異種が生まれる可能性もある。

 勿論、通常のゾンビも忘れてはいけないけど。


 全てと戦う必要があるとは思わない。せめて自分の身は、自分で守って欲しいんだよ。

 だから俺が持っている技術は全て教える。

 銃を使うのは、どうしようもない時だけで良いように。


 そんな訓練を続けていたある日、拠点に訪問者が現れた。

 

 来たのは、ビッチとゴボウ医師だ。

 委員長が此処の場所を教えたのか? 

 俺は怒った顔を隠す事もせず、2人の前へ顔を出す。

 そろそろ何か接触はあると思ってたけどな。


「何しに来た? ここはお前らが来て良い場所じゃない」

「とうまさん。私に免じて話だけでも聞いてあげて下さい」


 やっぱりお前か。委員長! 今度は何を企んでる?

 前に居る2人が頭を下げて無かったら、いくら俺でも本気で怒るぞ。

 ここは俺達の命綱なんだ。本当に分かってるのか?


「......早く用件を言え。俺も暇じゃない」

「と、とうまさん。色々と誤解してすみませんでした! この前も助けて頂いて感謝してます!」

「えっと。本当に悪いと思ってます。どうか私達をここで一緒に過ごさせてください! お願いします!」


 謝るだけじゃなく、ここに来たいと言い出す2人。

 顔だけは真剣な表情だ。


「とうまさん。私からもお願いします! ヤヨイとヤナギ君も騙されてたんです!」

「ナミ。お前は黙っとけ。俺はコイツらから直接話を聞く」


 出しゃばるのも、いい加減にして欲しい。

 そうで無くても俺は今、機嫌が悪い。

 それだけ危険な状況だと分かって無いのか?

 一応顔を立てて、話だけは聞くけどな。


 俺への説明は珍しくビッチが行った。

 ムライがかなり増長しているらしく、事務所棟の事を何もしないらしい。

 あの奥さんも一緒になって我儘三昧。

 ヒステリックで誰の言葉も聞く耳を持たないらしい。

 

 物資の調達もゴボウ医師とビッチに任せきりで、本当に辛いと言う話だった。


 そんな事は俺も予想してたよ。だから今更こんな話をされても何も感じない。

 ムライは自分が上に立たないと気が済まない奴だ。

 マジマさんと言う唯一の縛りが無くなり、その本性が表に出て来ただけだろう。


 それにアイツの性格は、ビッチも分かっていたはずだ。

 ゴボウ医師だって知ってたんじゃないか? 人の顔色を見るのは得意なんだし。

 こいつら結局、何も変わって無いじゃないか。


「話は分かった。だがこの拠点へ来る事は断らせてもらうよ」


「え⁉ 何で!? ちゃんと正直に話をしたし、キチンと謝ったじゃない!」


「そ、そうですよ! 私達も辛いんです! お願いしますよ。とうまさん」


「全てを正直に話した? おいおい。バカにするのもいい加減にしろよ? じゃあ聞くが、お前らはムライの性格に気づいていたよな? 何を考えていたか知らないが、分かった上で従っていただろうが。大方、外へ出るのが怖くなったんじゃないか? ゾンビ犬にでも襲われたんだろう。ナミから何を聞いたか知らないが、お前らの本性が俺には透けて見えるよ。違うなら俺の目を見て言ってみろ」


 ビッチとゴボウ医師、そして委員長も俺の言葉に答える事が出来ない。

 ほら。どうせこうなる。

 俺は自分で努力出来ない人間が嫌いだ。

 

 普通の社会なら良いよ。それでも上手く立ち回れたんだろうし。

 でも今は世界が違う。それを何時になったら理解できるんだよ。

 そんなお前たちの為に、俺は命を懸けることは出来ない。


 前にこの3人に言ったけどさ。現実をちゃんと見ないと、人間は変われないんだよ。

 ゾンビ化した知人を始末した時の、あの気持ちは何処に行ったんだ?

 ただの見せかけだったのか? それなら俺も見る目が無かったよ。


「もう良いか? これ以上話すのは時間の無駄だ。ナミ。これ以上勝手な事をしたら、お前も出て行って貰うから。それだけの事をした自覚を持て」


 俺も委員長から見たら変わったんだろう。

 自分も受け入れてくれたから、あの二人を何も言わず受け入れる?

 馬鹿は言わないで欲しい。


 俺には兄妹を守ると言う責任がある。

 りょうたは自分で頑張ってるから、擁護下から外れそうだけどな。

 それだけ理解してるんだよ。あの年齢で。

 りさちゃんでさえ、出来る事を探してやってるんだぜ?


 委員長も良い方向に変わったと思ったんだがな。

 本当に残念だよ。

 情けをかける意味をはき違えてる。


 全然相手に気持ちが伝わってないじゃん。

 裏切られる事を見に染みて知ったんじゃ無かったのかよ。

 表面だけ上手く繕っても、全く意味が無い。


 俺は3人を残したまま、拠点内へ戻った。

 図星だったんなら、ちゃんと受け止めろ。

 そして一回、今の環境を変える努力してみたら良い。


 やる事やって駄目だった時は、相談ぐらい乗ってやるよ。

 俺が生きてたらな。





◇◇◇





 二人が帰った後、委員長は俺に謝りに来た。

 俺の言葉を聞いて、自分の行動の迂闊さに気づいたらしいよ。

 まぁ友人を信じたい気持ちは分かるんだけどな。


 でも目を曇らせてはいけないって事を伝えたよ。

 俺の真意が()()()()()()()()、今晩にでも襲撃があるだろう。

 その時は完全に敵として対処する。


「ナミ。分かってるな? 撃つ必要がある時に撃てないなら、俺が代わりに撃ってやる。でも俺達の関係はそこで終わるから」


「はい。あの二人を信じたい気持ちは今でもあります。だけどまた裏切るなら、その時は覚悟を決めますから」




 その日の深夜。


 拠点に銃声が響いた。

 撃ったのは俺じゃ無い。

 

 静かにライフルを構えた委員長の目に、一体何が映ったんだろうな―――

 

 


 

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