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終末に向かう世界に希望なんて見つかるのだろうか?  作者: 早寝早起き
第6章:ウイルスの変異と新たな脅威編
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誤解

「まさか助けて頂くとは、思ってもいませんでした」


 委員長からの第一声がこれ。

 俺はそれに対して白けた声で返す。


「俺ってどう言うイメージなんだ?」

「他人に興味なくて、自分の大切なもの以外を排除する人です」


 おう。

 大体間違ってはいない。でも排除はしてないだろ。

 これはあれだな。

 マジマさんの死に対して思うところがあるんだろう。


「ナミがどう思ってるか分からないが、俺はマジマさんが死んだ事を残念だとは思ってるぞ。ただ選択した結果だから、終わった事だと思ってるだけだ。知り合いの死なんて、いちいち気にしてたら精神が病む。悲しむなとは、言わないがな」


「......意外です。でも私は、そんな直ぐに割り切れませんが」


「経験の違いだろうさ。ナミ達があそこに籠ってる時、俺は地獄を見たからな。だから自分に不要な物は、自分から切り捨てて来た。これからもそうするけどな。誰かに期待して裏切られるのは、もうコリゴリだから」


「じゃあ私は必要なものなんですか? 期待しちゃいますよ?」


「はいはい。勝手にしろ。お前がそんな言い方する事にびっくりだ」



 気持ちの籠ってない言葉にいちいち反応できる程、俺は誰かに期待はしていない。

 それよりも今後の対策を考える方が大切だ。

 あの変異種の犬達は、運動能力が上がっている様に思える。


 身体が腐ってないゾンビ犬と考えれば良いのかな。

 動いてるものは何でも喰いそうだし、何も知らずに出会ったら危険だ。

 よく二人とも無事だったもんだよ。


「ナミ。あの群れからどうやって逃げたんだ?」

「たまたまゾンビが居たんですよ。そいつに押し付けて逃げちゃいました」


 何だそれ。

 もっとこう頭脳戦みたいなの無かったのか?

 ほとんど喋る事も無かったから、勝手なイメ-ジで委員長呼びしてたんだが。

 単なる不思議ちゃん疑惑が発生したぞ。


 とりあえず、りさちゃんに委員長の怪我の具合を見てもらおう。

 見た感じ大丈夫そうだけど、流石に服の下は見れないしな。

  

 今後の事はそれから話し合えばいいか。






◇◇◇





 

 りさちゃんの診察の結果、負傷は逃げる最中に転けて捻挫。

 手や足に擦り傷。噛まれたりは、していなかったとの事。

 ほほう。りさちゃん先生!

 俺のシャツを白衣的に着る必要はあったのかな?


 少し大きめの感じが可愛いけども!


 そしてりょうた。

 何があった? ほっぺが赤いぞ?

 まさか覗きか⁉ いかんぞ! まだお前には色々早い!


「えっと。とうまさん。ヤヨイとヤナギ君の誤解は解かなくても良いんですか?」


「必要ない。事実を知ろうとしない奴に、何でわざわざ俺が歩み寄る必要があるんだ? 俺はどう思われようが気にしないし、離れて行く奴を止める気も無い。時間の無駄だ」


「でもでも。あのゾンビ犬達と戦うのに、人数が必要ですよ?」


「それこそ少人数の方が戦いやすいだろ。数の力は偉大だが、努力の足らない奴がどれだけ集まっても意味がない」


「し、辛辣です。わ、私も努力しますから、見捨てないで下さいね」


「頑張れば良いんじゃないか? 別に期待はしていない」


 少し面倒な匂いがして来たな。

 こいつは1人になるのが怖いんだろう。

 だからビッチに寄りかかってたのかな。


 だからと言って俺達に依存されても困る。

 変な方向に歪まない様に、注意しておいた方が良いかもしれない。


 俺のそんな危惧が現実になろうとは思いもよらなかったが......。




 やっぱり近い地域で活動していると、現場で出会っちゃうこともあるんだよ。

 その時に委員長がこちらに居るのを見て、ビッチが逆上したんだ。


「何でアンタがその男と一緒に居るのよ! 私達を裏切ったの?」

「違うわ。アンタ達が私を切り捨てたんでしょ!」


 なんて取っ組み合いの喧嘩が始まったんだよね。

 ゴボウはアワアワするだけだし、とりあえずゾンビ犬が集まるから間に入る俺。

 そこで何を考えたか、委員長が俺の腕を組むもんだからさ。


「そんな男の女気取り⁉ 馬っ鹿じゃないの⁉ どうせ都合よく使われて捨てられるだけよ!」

「馬鹿はアンタじゃない! とうまさんを信じないで、クズ男の言いなりな癖に!」


 こいつら好き勝手言いやがって!

 ん?

 遅かったか。



ウォオオ―――ン! ウォン! ウォン!



 俺は腕に引っ付く委員長を担ぎ、近くの建物目掛けで猛ダッシュ。

 ゴボウ医師とビッチも驚いて着いて来る。

 ゾンビ犬も俺達も雪に足を取られて、なかなか前に進めない。


 でも相手は動物だ。

 人間に比べれば適応能力の違いを見せて来る。


「お前らも生きたかったら急げ! もう囲まれるぞ!」


 俺は飛びついて来るゾンビ犬をバットで叩き落とす。

 雪の中から飛び出してくるから、なんかモグラ叩きやってるみたいだよ!

 そうこうしているうちに、ゴボウ医師がゾンビ犬に捕まる。


 ええい。

 面倒をかけるなよ!


ゴンッ!


 モグラ叩きついでに、ゴボウ医師の腰にしがみ付くゾンビ犬をぶっ叩く。


「す、すみません!」

「死ぬ気で走れ! グズグズするな!」


 建物まで5メ-トル。

 もう間もなく入れるというタイミングで、今度はビッチが転ぶ。


 普段から走り慣れてたら、コレぐらいで転ばんだろうが!

 俺は担いだ委員長を建物の方へぶん投げて、ビッチの元へ走る。


「早く立て! 死にたいのか!」

「だ、だって! 腰が抜けて」


 ウザい女だなぁ。

 俺が群がるゾンビ犬をバットで振り払いながら、ビッチを無理やり引き寄せる。

 そのまま担いで思いっきりぶん投げた。


「後はヤナギに助けて貰え!」


 もう乗りかかった船だ。

 腰のナイフも抜き、俺は臨戦態勢に入る。

 動きを止めたらダメだ。


 クソッ。

 数が多すぎる。何か無いのか!


「とうまさん! こっちです!」


 委員長の声に反応した俺は、何も考えずにその方向へ走った。

 前方にゾンビが3体。

 向かっていた建物内に居たのか?


 まぁどうでも良い。

 ゾンビを囮にさせてもらう!


 俺はゾンビに向って走り、直前で頭から雪にスライディング。

 足元を抜けたところで素早く立ち上がり、建物へ走った。

 委員長が大きな仕草で入れる場所を示してくれたので、勢いの付いたまま建物内へ飛び込む。


「ゾンビ犬が侵入する前に、早く窓を何かで封鎖しろ!」

「わ、分かりました!」 「分かったわ」 「これ使いましょう」


 やはり委員長は使える。

 大きめの家具やらソファ-を準備していた様だ。

 俺も動かすのを手伝い、間一髪のタイミングで封鎖は間に合う。


 はぁはぁ。


 息をする度に、あばらが痛む。

 また悪化したかも知れない。

 なんでこんな事に巻き込まれるかなぁ。


 咄嗟の事とは言え、ゴボウとビッチを囮にすれば良かったのに。

 俺は甘すぎだ。

 口に出した言葉が、自分自身に問いかけてくる。


 まだ他人を信じてるのかってさ。

 それで大切な物を守れるのかって。


「とうまさん。大丈夫ですか? 酷いですよ。女性を放り投げるなんて」

「お前なぁ。これを狙ったのか? だとしたら覚悟は出来てるか?」


 含み笑いを浮かべる委員長が腹ただしい。

 基本的に女性に手はあげない。時と場合によるけどな。

 ゴボウとビッチは俯いたまま、何か考えてる。

 

 余計なお世話なんだよ。

 これで誰か犠牲になれば、苦しむのは委員長だろうに。


 ゾンビ犬が諦めるまで、暫くはここを動けない。

 無理ならまたゾンビを探して、遠くへ誘導するしかないな。

 しかしゾンビ犬は結構強い。


 体重が軽いから、吹き飛ばす事は出来るんだ。

 でも直ぐに帰って来るから、数が多い程厄介な相手だ。

 こちらの体力が尽きれば、あの群れに喰われて終わりだろう。


 ヒグマもそうだが、強力な武器が無いと倒す事すら難しい。

 冬が終われば普通のゾンビと変異種、そして人間と戦う事になる。

 どう考えても俺達の分が悪すぎるだろ。

 

 

「あ、あの。とうまさん。ありがとうございました」

「ん? ただの気まぐれだ。無理にお礼なんて求めてない」

「そんな言い方しないでよ。た、助けて貰ったお礼ぐらい受け取りなさい。そ、その。ありがとね」

「はぁ。お礼と悪態はナミに言え。全部コイツが悪い」

「えへへ。なんだか照れちゃいます」


 殴って良いかな?

 何処に照れる要素があった?

 やっぱり委員長じゃ無く、不思議ちゃんだろう!


 俺はため息を吐き、立ち上がって外を見る。

 だいぶゾンビ犬は減ったようだが、まだ近くにはかなりの数が見える。

 今はたまに出会うぐらいだが、こいつら鼻も良いんだろうか?


 もしそうなら、匂いを覚えられると拠点まで追って来るかもな。

 昼間の吹雪が匂いを消してくれてるんだろうけど。

 俺はそんな風に考えつつ、建物内を探索。


 物資なども無く、踏んだり蹴ったりだよ。

 その代わりゾンビを数体発見したから、俺達の拠点と反対方向へ動く様に誘導。

 ゾンビ犬が十分離れた事を確認し、帰路についたよ。

 勿論、ビッチ達とはその場で別れる。


 なにやら委員長とビッチ達が長い事話していたが、お前らも手伝えってんだ。


 ちょっとすっきりした顔の委員長に、拳骨を一発落としておいた。

 涙目で抗議する委員長を無視し、天使で癒される俺。


 誤解なんてものは、する方もされる方も問題があるんだ。

 俺はそれを分かった上で何もしない。

 

 次余計な事をしたら、放り出してやるからな―――



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