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終末に向かう世界に希望なんて見つかるのだろうか?  作者: 早寝早起き
第6章:ウイルスの変異と新たな脅威編
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新たな変異種

 子供2人と大人1人の生活だから、食料消費も抑えられてはいる。

 でも今回の冬が昨年と同じ時期に終わるとは限らない。

 だから日々、物資探しは継続しなければならないんだ。


 鼻の方は問題無いけど、あばらがまだ完全に繋がっていない。

 そんな状態での探索は、どうしても何時もより時間が掛かる。

 雪の装備が手に入らない地域だから、例え2回目の冬でも慣れるものじゃ無いな。


 経験上、身体には適度な負荷を与えた方が良いと考えている。

 だから無理してでも動かしているんだが、痛みで判断が鈍る事を考え今日は帰ろうと決めた。

 そんな時に見えた人影。直ぐに俺は雪に身を隠した。


「あれはどう言う事だ」


 思わず口から出る言葉。


 人のシルエットってさ。一度覚えると中々忘れないんだよ。

 少し距離はあるが、アレは間違いなく俺が知っている人物だ。

 1人はゴボウ医師。


 そしてもう1人は、()()()()()のムライ君だ。

 今すぐにでも問い詰めたいが、沸騰する頭を何とか落ち着かせる。

 これは俺の失敗でもあるだろう。遺体を確認していないから。


 今はもう見慣れたとは言え、損傷が激しいような物は極力見たくない。

 だから言われるがまま信じてしまったんだ。

 でも俺に生存を隠す意味は? 


 色々と推測できるが、吹雪いて来ると困るので撤退を決める。

 兄妹達も心配だしな。

 匍匐前進(ほふくぜんしん)で距離を取り、急いで拠点へ帰った。





◇◇◇





 幸い拠点は無事だった。

 やっぱり子供達だけでは不安だな。


「何でお前がまた此処に居るんだ?」

「わたしがいれてあげたの」 「僕は駄目だって言ったんだよ!」


 うむ。

 またも俺の前で土下座をする委員長。

 何故かニンマリ笑顔の天使。必死で訴えるりょうた。

 何だこれ? 嫌ってるはずの委員長を何故勝手に入れた?


「ちゃんと説明しますから! とうまさんも聞いて下さい!」

「......分かった。俺も聞きたい事あるしな」


 委員長から話された内容は、少し彼女の推測も入っているが概ね納得できる話だった。

 あの変異ヒグマとの戦闘の際、吹き飛ばされたムライは怪我があったが無事。

 その事を俺に隠せと指示したのは奥さんだ。


 委員長達は何が起こったのか理解しておらず、状況から奥さんの言う内容を信じた。

 まぁその内容は俺がヒグマを引き込んで、皆を殺そうとしたとか何とかいう話。

 俺が何も言わなかった事も、その話に真実味を持たせてしまったらしい。


 それからゴボウ医師がつきっきりでムライ君を治療。

 その間も俺にはバレない様に距離を取っていた。

 まぁある事無い事聞かされたら、俺に近づかないのも理解は出来る。

 納得出来るかは別にしてだがな。


 この前ここに来たのは、そんな俺から子供達を引き離そうと思ったそうだ。

 だけどそれに失敗して帰った委員長を皆が罵倒。

 1人になりたくて工場の外へ出た際、回復したムライ君と奥さんが話しているのを聞く。


 その内容は聞いていた話と違い、明らかに俺を嵌めた内容だったんだ。

 もう何を信じて良いのか分からず、事務所棟内でも孤立。

 そうなると今度は委員長への当りが強くなっていった。


 食事の量は減らされた挙句、単身で探索へ行かされる日々。

 慣れない冬の探索は上手く行かず、何も得られないまま帰る事も多かったらしい。

 その度に皆から罵倒され、精神的にも追い詰められた。


 そこで俺の有難みを再認識し、どうしても謝罪がしたくなったらしい。

 

「なるほどな。まぁ概ね予想通りだけど。でも何でりさちゃんは俺が居ない時にナミを入れたんだ?」

「このおねえちゃん。うそいってないもん。ちょっとばかだけど」


 何かうちの天使は日に日に逞しくなっていくな。

 りょうたと違って、人を観察してるのかも知れない。

 俺も今委員長から聞いた話は、信じても良いとは思ってるけどさ。

 そして、ドヤ顔天使も可愛い。


「おほん。ここに来たのは良いとして、この場所はアイツらも知ってるだろ? きっと連れ戻しに来るぞ?」


「それは大丈夫だと思います。ムライ君やマジマ奥さんは、此処を知りませんし。ヤヨイとヤナギ君は、覚えてませんよ。あの二人方向音痴ですし。それに私は戦力と思われてません。居なくなっても、口減らし出来たと思うだけですよ。きっと」


 ああ......確かにゴボウもビッチもヤル気無かったもんなぁ。

 俺に言われて探索には出ていたけど、仕方なく付いて来てる感じがあったし。

 毎日違う場所に行くから、普通の人間は覚えられないか。


 ムライ君って我が強そうだし、誰かに従うの嫌だったんだろう。

 俺に従ったのも、マジマさんが居たからだし。


 だから今の状況は、彼にとって都合が良いんだろうな。

 自分を抑えつける人間は居ないし、やりたい放題出来るから。


 まぁ初めから、俺には反発してたけどな。

 俺とビッチが話してると、嫌な目線を感じる事も度々あったし。

 色々な意味で俺が邪魔だったのは確かだ。


「話は分かった。でも俺の事は信じられるのか? あれだけ態度を変えたのは忘れてないぞ?」

「本当に申し訳ありません! りさちゃんからも、キツイお仕置きを受けましたから! もう二度と疑いません!」


 ......一体、うちの天使はどんなお仕置きをしたんだろう?

 結構怖いんだよ。怒ったらさ。

 若干、りょうたも引いてるじゃないか。


 信用するしないは別にして、もう1人大人が必要だとは思っていた。

 少し思うところはあるけど、天使の顔に免じて受け入れるか。

 

「ふぅ。こっちでも仕事はしてもらうからな」

「わ、分かりました! ありがとうございます!」


 俺の言葉に、ニッコリ天使が頷いたよ。

 

 この日から委員長は、りさちゃんに頭が上がらなくなる。

 ちょっとお姉さんぶった天使に付き合う、面倒見の良いお姉ちゃんだけどな。





◇◇◇






 委員長がこちらに来た事で、りょうたも外で活動できるようになった。

 まだまだ危なっかしいが、久しぶりに楽しそうだよ。


「そうだ。雪で見えにくいから気をつけろ」

「うん! ちゃんと確認する!」


 たまに室内に居るゾンビに出会うが、冬のゾンビだけに対処は難しくない。

 本当は嫌なんだが本人の希望で、戦闘の訓練もやっているよ。

 基本は逃げる事を前提にしてるけど、どうしても逃げられない場面もあるしさ。


 りょうたは怖がることも無く、淡々としているんだよなぁ。

 自信をつける事は良いけど、実力を過信すれば足元を掬われる危険性がある。

 だから俺は口酸っぱく注意してしまう。


 大切な物を理不尽に奪われたくないからさ。

 

 そんな俺の言う事も素直に聞くりょうたは、メキメキと成長して行く。

 すると困った事に、委員長とも外に出たいと言い出した。

 最初は反対したんだけど、ここでまた天使の一言。


「かほご、めっ!」


 うん。

 確かにそうだから、反論も出来ませぬ!


 いちいちポーズが可愛いから、ご褒美にしかならん!


 それはさて置き、本当に平和でトラブルも無く、寒い冬だけど楽しく過ぎせてたんだよ。


 あの日までは......。





「とうまお兄ちゃん! ナミ姉ちゃんを助けて!」


 悲痛な声で叫びながら帰って来た、りょうた。

 ズボンが赤く染まっている。


「どうした⁉ 何があったんだ⁉」

「い、いきなり大きな犬に囲まれて! ぼ、僕を助けるために、ナミ姉ちゃんが残って!」

「とにかく怪我を見せなさい。その間に場所を詳しく教えてくれ」

「でも時間が無いよ。早くしないとナミ姉ちゃんが死んじゃう!」


 急いでいるのは分かっているよ。

 でもりょうただって、深い傷なら放っておけない。

 薬もこの拠点には傷薬ぐらいしか無い。


 幸い手足の擦り傷だけだったけどな。

 服の血は犬の返り血だそうだ。

 少し落ち着いたりょうたから、委員長の居場所を聞き、武装を確認して直ぐに向かう。


 アイツも頭は良いから、無駄に戦わないで逃げると思ってる。

 りょうたを悲しませたくないし、ちゃんと生きててくれよ。

 そう願いながら、俺は雪道を急いだ。



 ⁉ 辿り着いた現場を見た俺はその異様さに驚く。

 見た目は野良犬の群れなんだよ。

 でもその数が多すぎる。


 この雪が降る中、どうやって動物が生きているんだ?

 人間でも生存するのに苦労してるのに。


 しかもこいつらは普通じゃない。

 見た事は無いが、狂犬病か?

 口からは涎を垂らし、狂ったように動き回っている。


 俺は風下に立ちながら、その群れを観察する。

 あの集まっている場所に、委員長が居るんだろう。

 しかしどうやって近づいて良いか分からない。


 流石に群れに突っ込んでいくのは無理だし、かと言って遠回りしようにも風向きが厄介だ。

 風上に立ってしまうと、俺の位置が直ぐにバレてしまう。

 ふむ。


 あれをやってみるか。




◇◇◇




 俺は一旦現場から離れ、下準備を行う。

 

 あの犬達は襲う対象があれば良い。

 それなら、ちょうど良い材料があるじゃないか。


「皆さん。申し訳ない。ここは貴方達の出番です!」


 ゾロゾロと俺の後ろを着いて来る一団。

 はい。入れ歯のゾンビ様です。

 雪道だからかなり歩みは遅いけど、頑張って貰いましょうか。


カラン! カラン! カラン!


 先頭を歩くおじいさんゾンビ。

 首に掛けた缶が良い音出してます。


ウォオオ―――ン!


 ヤベェ。


 俺は素早くその場を離れ、今度こそ遠回りで委員長が居る場所へ走る。

 何匹かは俺に向って来るから、足止めにゾンビ肉を投げる。

 やはりこの犬達はゾンビを食べるみたいだ。


 それが確認できただけでも今回は収穫だろう。

 

「とうまさん! ここです!」


 俺を発見した委員長の声。

 足を引きずっている様だが、比較的軽傷みたいだな。

 話は後にして、今はここを離れる事を優先しよう。


「下を噛むなよ」


 俺は委員長を担ぎ上げ、すたこら逃げたよ。

 しかしマズい事になってるな。

 これからは、冬でも変異した動物と戦う必要があるのか。


 あれに噛まれてもゾンビ化するのかな?


 俺は憂鬱になりながら、子供達の待つ拠点へ急ぐ―――


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