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終末に向かう世界に希望なんて見つかるのだろうか?  作者: 早寝早起き
第5章:集団闘争サバイバル編
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それ騙されてるぞ?

 俺と兄妹の生活が始まって、1週間程経過した。

 その間に大変だったのは、水の確保と兄妹の衣類。

 水の方は代用できる缶ジュ-スや、お茶などが見つかったからまだ良い。


 俺が苦労したのは兄妹の服や下着だ。

 状態の良い物を探すだけも大変なのに、そこに女の子用の服を俺が選ぶという苦行。

 何となく変な物は着せたくないと言う、謎の親バカが発生したのが悪いんだ。


 贅沢は言えないので、マンションなどを中心に探し回り、何とか数着分を揃えるまで5日。

 身体を拭いたり頭を洗う為の水や、シャンプ-、石鹸、歯ブラシ等の小物までせっせと収集。

 食料があるから、そんな余裕も出来たんだけどな。


 りさちゃんの状態も日増しに良くなっているし、りょうたはしっかりお兄ちゃんしている。

 問題があるとすれば、ここ数日感じる視線だな。

 特に敵意は感じないけど、明らかに観察されているのは分かるんだ。


 どれだけ気をつけていても、頻繁に外出してたら見つかるのは仕方ない。

 視線の主については、ある程度予想は出来ているんだよ。

 だってこの敷地内だからさ。視線を感じるのは。


「なぁりょうた。俺が外に出ている間に、誰かここに来たか?」

「......え、えっと」

「来たんだな? 怒らないから教えてくれ。相手は事務所棟の大人か?」

「うん。外から呼ばれた。でも返事はしてないよ。鍵も開けて無いし」


 今いる工場の1階部分にあるドアは、内側からなら鍵を開けて外に出る事が出来る。

 でも俺は絶対に開けない様に言ってあるんだ。

 俺の出入りも入った時と同じ様に2階からだし。


 りょうたを疑いたくはないが、念の為1階ドア付近も調べたよ。

 埃が酷いから足跡も残るんだ。

 うん。嘘は言って無いようだな。


 俺が少し厳しめの対応をしているから、りょうたが委縮して言えなかったんだろう。

 とりあえず頭を撫でて褒めておいたけどな。

 決してデレた訳ではない。まだ子供を信用できない自分が情けないだけだ。


 まぁなんにしても、子供を利用しようとする大人には制裁が必要だ。

 こんな世界だからさ。色々と生きる手段として使うのは別に良いと思う。

 でも自分達が世話もせず衰弱させた子供を利用?


 ははは。

 俺がこいつらの保護者なんだよ。

 保護者を飛び越えるなんて、良い度胸してるじゃねぇか。


「りょうた。妹を守りたかったら、大きな声や音がしても絶対にここから出るな。分かったか?」

「うん。分かったよ。とうまお兄ちゃん」


 さぁ。

 

 お仕置きタイムだ。

 





◇◇◇






 翌朝、俺は何時もの様に外へ出掛けるフリをした。

 

 待つ事数分。


 事務所棟から男が2人出て来て、りょうた達の居る工場へ向かって行く。

 手に棒のような物を持っているな。

 あれでドアを壊すつもりか?


 余計な事をされても面倒なので、後ろから男達に近づいて声を掛けた。


「おいお二人さん。何処へ行くんだ?」

「な!? 貴様はさっき出て行ったはず」 「何時の間に⁉」

「そんな事聞いてねぇよ。質問に答えろ」

「ここは私達の工場だ。何処へ行こうと勝手だろ」 「そ、そうだ。お、お前こそ不法侵入だろ」


 こいつら本気で言ってるのかね?

 私達の工場って何? ここの経営者? だとしてもそんな物に意味はない。

 不法侵入ならゾンビも取り締まれよ。


「はぁ。本気で頭大丈夫か? で? アンタらはここの何? 土地の持ち主? 経営者?」

「も、元従業員だ。だから権利は私達にある」 「その通りだ。侵入者は出て行け」

「元従業員ってただの雇われじゃねぇか。それ言って良いのは経営者だけな」

「う、うるさい! とにかく工場を明け渡せ!」 「そうだ! 出て行かないならこちらにも」


ドガッ!


 もう鬱陶しいから、腰ぎんちゃくの方を殴っておいた。

 実力行使するんだろ? この世界は殺られる前に殺るんだぜ?


「な、何をする! 卑怯だぞ!」 「グハッ」

「卑怯も何もお前らこそ武器持ってるだろ? 言う事聞かないと、それ使って何するつもりだった?」

「わ、私達は平和的に」 「早田主任。あの人達に頼みましょう」

「何が平和的にだよ。立場が悪くなったら他人のせいにする、典型的なクズじゃねぇか。あの人達? どうぞ連れて来いよ。何なら一緒に行こうか」


 俺はそう言ってから二人の首元を掴んで、そのまま引き摺って事務所棟へ向かう。

 何やら喚いているが、聞くに堪えないので無視。

 ズンズン進み階段を上がる。


 居住に使っているフロアは知ってるんだよ。

 そう言う意味では俺の記憶力は良い方だと思う。

 本当は嫌な記憶なんだけどな。


 フロアに着くと俺に注目が集まる。

 大人が10人程度。思ったより元気そうだ。

 これで子供の面倒が見られない? ありえんな。


 俺は引き摺って来た二人を、そいつらの前にぶん投げて言う。


「こいつらが喧嘩売って来たんだが、これはお前らの総意で良いか?」

「あ、当たり前だろう⁉ なぁ皆さん」

「「「......」」」


「お前に聞いてねぇから。それと色々と聞きたい事があるんだが、誰か教えてくんねぇ?」

「お、お前に教える事など」


バゴッ!


「ウゴッ」 「なっ⁉」

「「「ひぃいい」」」


 もう本当に鬱陶しい。思わず足が出ちゃったよ。

 元主任か何か知らないが、どうせその肩書使って今まで偉そうにしてたんだろう。

 誰も助けない所を見ると、嫌われてんじゃ無いのか?


「そこの腰ぎんちゃく! お前の言うあの人達って誰の事だ? 今居るならご挨拶させてくれよ」

「そ、それは」 「あの人達?」 「あの黒ずくめの?」 「確か公安」

「へぇ。公安警察かぁ。此処にも来たんだな。やっぱり」

「そ、そうだ! あの人達に言えばお前なんて逮捕されるぞ!」


 なるほど。

 保管庫とその近くの工場が荒らされていたのを見てさ。

 何か引っかかってたんだよ。

 個人で持って行くには量が多いし、そんなに頻繁に襲われたって言うのも変だし。


「そうなのか? それでその公安警察は何しにここへ来た? どうせ倉庫の食料持って行ったんだろ? その見返りに何を貰った? 非常食か? 水か? アハハ。完全に騙されてんじゃん。笑かすなよ」


「だ、騙されてるってどう言う事だ? あの人達はちゃんと物資も分けてくれた。それで今日まで生きて来られたんだぞ。なぁ皆さん!」


「ブハハハ! どう考えても損してるだろ? 一時しのぎの物資と生きる為の十分な物資なんて比べようも無いだろうが。守って貰う代わりに渡したんじゃねぇの? 無い無い。アイツらそんな暇ないし。アンタらが有用な人間なら、もう安全な場所に連れて行ってるよ」


 もうバカすぎて笑える。

 公安警察だって生きる為に物資は必要だ。

 だからこう言う工場は真っ先に狙うだろう。


 でも物資さえ手に入れば、二度と此処に来る必要は無い。

 ここは工場があるだけで、周囲は住宅街だからな。

 冬になれば雪で完全に埋まる様な地域を重要視なんかしない。


 俺は丁寧に教えてやったよ。

 公安警察が何をやっているのかも含めてな。

 信じる信じないは、勝手に判断すれば良い。


「何をどう判断するかはお前らの自由だが、これだけは言っておく。あの工場は俺が自分の力で手に入れた。奪いたいなら実力行使で来い。それとなぁ。もしあの兄妹に何かあったら、全員覚悟しろよ? 俺は殺られたら、絶対に殺り返すからな? 取引もしないからさ。その代わり隣の工場は手をつけないでやるよ」


 俺はそれだけ言って、兄妹の元へ戻った。

 甘いって? 良いんだよ今は。

 無差別殺人とか流石にしないしな。


 襲って来れば、関係ないけどさ。

 今の所は敵対未満。

 兄妹にした仕打ちは許せる物じゃないが、俺が保護者になる前の事だ。


 りょうた、りさが復讐したいならすれば良い。

 自分で力をつけて、自分の意志でやるなら反対もしない。

 今は子供だしさ。何かあれば保護者として全力で力になるけどな。


 俺の予想では近いうちに仲間割れが起きるはず。

 公安警察と交渉したのも、あの主任だろう?

 さっき俺と話をしている時、他の大人達がどう言う目でアイツを見ていたのか。


 非常用物資も残りわずかになってお尻に火が付けば、人間の繋がりなんて脆いんだよ。

 食料は奪い合いになり、弱肉強食の争いが起きる。

 今まで何も起きて無いのが奇跡なんだよ。


 そんなんだから外の世界が理解出来ていない。

 自分達が恵まれていた事を知れば良いさ。

 そして何もやって来なかった事を後悔してくれ。

 どうせなら俺達と関わらない場所で。





◇◇◇





 それから3日後。

 俺達の居る工場に、数名の男女が助けを求めてやって来た。

 鬱陶しいが、とりあえず話を聞いてみた。


 事務所棟で案の定、諍いが起きたそうだ。

 当たり前だけどな。

 頼みの綱の公安警察に、誰がどうやって連絡を取るのか?

 なんて根本的な話が、今更出たみたいなんだよ。


 あの腰ぎんちゃくがさ。どうやって連絡を取るのか疑問だったんだよな。

 無線? そんな物は見ていない。

 じゃあ定期的にあちらが来るのか?


 少なくとも俺が来てから一度も見ていない。

 りょうたにも聞いたけど、見た事が無いと言っていたよ。

 あの主任がどう答えたのか? もう爆笑だったよ。


「私が念じれば気づいてくれるはずなんだぁあああ!」


 だってさ。何処の超能力者だよ! 

 せめて電話使え。繋がらないけど。

 主任って言っても交渉なんかした事無いんだろう。

 書類も交さない約束なんて、パニックが起きる前でもあり得ないだろうに。


 相手が警察だから信用できる?

 そんなアホみたいな思い込みが招いた結果だろう。

 流石に周りも騙された事に気づいたみたいで、主任さんは皆からの問い詰められる。

 まともに返せる答えなんか無いけどな。


 もう誰も主任の言う事なんか聞かなくなり、残っていた食料は奪い合いになった。

 その争いに負けたのが、俺を訪問して来た男女なんだ。

 勿論俺は拒否。なんで俺が助けないといけないんだよ。


 まだ自分達で努力してさ。その結果、物資が足りないと言う話なら分かる。

 その場合も物々交換なら交渉ぐらいはしてやるよ。

 でもこいつらはそんな努力すらしていない。


 根本的に考え方が腐ってんだよな。

 だから最終的に拳銃突きつけてお帰り願ったよ。

 因みに拳銃に弾は無い。脅すのに丁度良いから使っただけだ。


 まだ波乱はありそうだが、工場での生活は続く―――



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