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終末何処行きますか?

 桜井市に入った俺は、数日に1回は拠点を替えて移動を繰り返している。

 と言うのも生存者に出会う確率が増えたからだ。

 やはり俺の住んでいた小さな町とは違い、大小様々な集団が存在しているらしい。


 俺はそんな話に興味も無いし、人と出来るだけ関わりたくない。

 もうこりごりなんだよ。誰かに期待するのは。

 襲って来た奴を返り討ちにしたら、自分はどこどこに所属してるからどうのこうの唸ってた。


 面倒事も避けたいから、昼間に移動も最近はしていないんだよね。

 生きて行くだけなら1人で十分なんだ。

 どうしても食料が無ければ、山で罠でも仕掛ければ良いし。

 今の所は都市が大きいだけあって、まだまだ食料も残っている場合が多いけど。


 桜井市に入って感じたんだけどな。

 この都市の状態は、スラムというイメ-ジがぴったりくる。

 ボロボロの服。薄汚れた髪や肌。そんな人間が縄張りを持って食料を奪い合う。


 桜井スラムに住む人間は、物を奪う事で自分の力を誇示する傾向がある。

 自分の労力を割かずにさ。まさに他人のふんどしで飯を食う感じ。

 そんな力があるなら、野菜でも育てろよと思う。


 家庭菜園規模でも、数人が食べる分は作れそうだよな。

 俺が入り込んだマンションのベランダにも、小さな野菜を育ててる家あったよ。

 持ち主の代わりに美味しく頂いたけどさ。


 一応手入れもして水もやって来たから、また今度行こうと思ってるんだけどね。

 

 少し話は変わるが、持っていた銃は全部隠した。

 街中で使う機会は無いし。

 下手に使うと市内中のゾンビが集まって来るしな。


 それに銃を持っている所を、生存者にも見せたくない。

 勘違いした若者やその筋の人間に襲われそうだし。

 弾薬が補充出来ないから、切り札としては置いておきたいけどさ。


 なんで思い出したかのように銃の話をしたかと言うと、居るんだよギャング? いやマフィアみたいな連中がさ。


 全身タトゥ-で拳銃を持ち歩いてる集団。

 どうやって仕入れたのかは知らないけど、複数の銃を所持しているのは確認してある。

 そんな武力があるならゾンビ退治すれば良いのに、そいつらは人間に対して牙を向けている。


 元の生活に戻りたくないのかも知れないけどさ。

 心配しなくても、悪化する事はあっても好転はしないよ。

 1年数ヶ月経っても電気もガスも水道も復旧しない。

 自衛隊や国が動いてるなんて話も、噂話すら出て来ないんだ。


 無駄な希望を持つぐらいなら、生き残る手段を考えるべきだろう。

 俺はそんな全体の事より、自分の事だけ考えるけどな。






◇◇◇





「賞味期限切れ1週間。掘り出し物だよ!」

「燻製肉と交換でどうだ?」

「お兄さんお目が高い。こ、拳サイズの肉と缶詰2つでどうだい?」

「缶詰は魚と桃なら」

「あいよ♪ 毎度あり♪ コイツはありがたい♪」


 俺が来ているのは、物々交換の市場だ。

 週に2回ほど開かれる市場は、例の武装集団をバックに品物を用意しているらしい。

 乾物や缶詰が無性に食べたくなってさ。


 肉は貴重品だから、普通の生存者ならお宝なんだよ。

 今交換した店の男も目ん玉ひん剥いてたよね。

 俺は騒ぎになる前に市場から離れる。


 ......やはり監視が付くのか?


 市場から数メ-トル離れた頃から、視線を感じているんだ。

 つかず離れずの距離を保ってるから、素人ではないだろう。

 でもまぁ。鬱陶しいから撒くんだけど。


 市場周辺の建物や裏道も既に把握済み。

 但し下水は駄目だ。絶対に駄目だ。

 アニメや漫画なら下水道を通ってとかあるけどさ。

 現実を見た方が良い。


 虫、ネズミ、その他大発生の地下空間なんて入れませんから。

 それこそ病気になりまっせ。

 だから間違ってもネズミ肉とか食べちゃダメ。

 味以前に病原菌の塊なんだから。

 

 と話はズレたけどさ。

 そんな状況で俺の出したシカの燻製肉を見て周囲がどう思ったのか?

 まぁ聡い人間なら繋がりを持とうとするだろう。

 俺もこちらに利益があるなら、協力はしないでもない。


 でも今追って来ている奴らは違う。

 どうせ俺のねぐらを確認して、俺共々襲う気だろうさ。

 奪えばそれっきりになるのにな。


 ああ。

 頭の悪い連中だから、武力こそ正義なのか。

 後々面倒だから、どうするか考えないとな。

 まぁ元々影の薄い俺が気配消したら、見つけられ無い自信あるけどな。







◇◇◇






 そんな追いかけっこも長く続けば、交渉役なる人物も接近してくる。

 どうやら同じ集団内であっても、一枚岩ではないらしい。

 俺は一応は話を聞いて、利益が合致した交渉人とだけ取引をする事にした。



「終末何処行きますか?」


「地の果てに」


「ではあの砂浜でお待ちしております」


「わかった」



 コレ。

 俺と交渉人との会話ね。


「今週取引できますか?」


「血抜き肉と果物の交換なら」


「では公園の砂場でお待ちしております」


「了解」


 的な脳内変換だ。

 これを真面目にやっている俺と交渉人は、どちらも引くに引けない。

 辞めると負ける気がして。

 オッサン二人がノリノリでやってる姿を想像してくれ。


 黒歴史になる事は間違いないだろうさ。

 毎回拠点で胸が苦しくなるんだ。グフッ。



 そ、それはともかく。

 俺は今、猟師に戻っている。

 罠で得た獲物を捌いて、干し肉と燻製肉を量産。

 拠点も今は山に移した。


 ある程度の物量を確保出来れば、桜井市へ戻り交渉人とやり取りする訳だ。

 まぁ今の形になるまでに、揉める揉める。

 俺を取り込むために暴力に訴える奴もいれば、女性を差し出してくる奴もいた。


 俺はその全てを無視。あるいは排除した。

 暴力は論外。女性に関しても病気が怖いし却下。

 それに女性の気持ちも分からないしな。


 無理やりさせられている場合もあるし。

 個人的な事に関わる気は無いので、詳しい事を知る気も無いけど。


 そんな感じで拒否された相手が次に考えたのは、俺に対抗する事だったんだよ。

 でもな。ど素人が狩猟なんて出来るわけないだろ?

 俺だって1年近くやってるけど、プロでも無いのにさ。


 結果どうなったか? 

 銃を持ち出して数匹狩れたは良いが、その音でゾンビを呼び寄せてしまい全滅。

 俺も巻き込まれたけど、木の上に登って何とかなった。


 その後、同じ集団内で話し合いがあって、やっと最近落ち着いたんだよ。

 もう俺には迷惑な騒ぎでしか無かった。

 知らない他人の思惑に巻き込まれただけだしな。


 だから俺の方が優位の物々交換になっているんだ。

 まぁ文句言われたら、取引辞めるだけだし。

 今は相手からキチンと詫びもあったし続けてるけどさ。


 決して交渉人とのやり取りが気に入ってる訳じゃないよ?






◇◇◇





 

 物々交換が始まって数ヶ月。

 山の動物も今の所は狩る事が出来ている。

 毎回罠の場所も変えて、学習されない様に努力はしているからな。


 変化があったのは、桜井市の方でさ。

 大きな縄張り争いがあったらしい。

 詳しくは知らないが、桜井市内には3つ程大きな集団コミュニティがある。


 その1つが今俺と取引している集団。

 名前はあるらしいが、厨二臭い名前だったので覚えていない。

 絶対あの交渉人が絡んでるはず。奴は何者なんだ?


 いかん。話が違う方向へ行きそうだ。

 ごほん。

 今回揉めたのはその他の2つの集団だ。


 どちらも元避難所が大きくなったコミュニティらしい。

 最初は小さないざこざから、遂に武力衝突まで発展。

 結果どうなるか? 


 負傷者多数。当たり前だけど。

 医療品も無く、重傷者は治療も出来ない。

 それだけ騒げばゾンビも呼び寄せちゃってさ。

 戦えない人も関係ない人も襲われる負の連鎖。

 

 挙句に責任のなすりつけ合いが始まり、コミュニティが存続出来なくなって......。

 

 それを聞いた俺の感想。


「ねぇねぇ。バカなの? 死にたいなら1人でどうぞ。頼むから巻き込まないで?」


 って言ってたな。


 ......それで話は戻るんだが。

 

 今俺の前に、例の交渉人が居るんだ。

 いきなり山まで来て、そんな話をしてさ。


 話し終わってから、俺に言ったんだよ。



「月が......綺麗ですよ?」


「ぐっ。旅人は一等星を見ます」


「星を中心に衛星が回ります」


「狼はケンタウルスが怖いので」


「また来ます」



 こんなやり取りをして帰って行った。

 いきなり直球を投げて来るから、挙動不審になってしまったし!

 恐るべし交渉人。


 でも俺は群れには入りたくない。

 だから他人事としてしか、捉えていなかったんだよ俺は―――


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