ファッ〇ン!クソヤロ-共!
ドォ―――ンッ!
テント内の人影が倒れる。
「終わったか。全く用心の為とは言え、後藤達も容赦ないのぅ」
「まぁ一応は技術を教えた弟子ですからね。最後の介錯ってやつでさ」
「ふぃ。しかしこの辺りは獲物が豊富じゃ」 「狩り放題ってか?」
「おいおい。ちゃんと無様な獲物の最後も確認してやれや! アハハ」
「それもそうだな。ついでに物資も使ってやろうじゃないか。なぁ諸君?」
町長、後藤、斎藤、金城、新垣。
クズ共が揃いも揃ってやって来た。
ああ。良かった。
遠慮はいらないな。
ドパ―――ンッ!
歪んだ顔でテント前に集まる5人が、撃たれた衝撃で地面に倒れる。
流石だよ散弾銃さま。射線にさえ入れば当たる。
わざわざ集まってくれてありがとう。
「何だ⁉ 痛っ⁉ あ、足がぁああ!!」
「ぐっ! さ、散弾か⁉」 「ちぃ! 膝やっちまってる」
「おい後藤! ちゃんと仕留めとけよ!」「......く、来るぞ」
俺は汚物共に近づく。
こいつらみたいに油断はしないけどな。
呻いて転がってるから、大丈夫そうだけど。
「無様っすね。自分達が育てたくせに、弟子の実力も測れない」
クズ共が睨んでくるけど、全く怖くない。
反撃されない様に武器を取り上げ、1人づつ順番に移動させる。
ずりずり引き摺って、深く掘った穴へ蹴落とす簡単作業だ。
その際に何か叫んでいるが、耳栓してるから聞こえない。
ちゃんと耳栓しないと、鼓膜が破れるんだぜ?
聞く気もサラサラ無いけどな。
全員落としたら、優雅にコ-ヒ-ブレイクだ。
勿論、穴の見える場所に椅子を置いて。
醜いジジイ共では景観が悪いけどな。
「ふぅ。外で飲むコ-ヒ-が旨い」
「き、貴様! 私にこんな事をして、許されると思ってるのか!」
「うるさいよゴミの親玉さん。殺されないだけマシなのわかんないの?」
「うるさい! 早く出して治療しろ!」
ギャアギャアうるせえし。町長って醜い性格の割に、打たれ弱すぎでしょ?
許されるって? 誰が誰にだよ? お前は神か? 気持ち悪い。
師匠達はだんまり。悔しくて何も言えないか?
ああ。目だけは感情を隠せないみたいだな。
怖い怖い。
「師匠......って呼ぶのも何か嫌だな。殺しに来た相手だし」
「ど、どうやった? テント以外に人の気配は無かったはず」
「苦労したんすよ。ゾンビの生け捕り。テントに入れるのも嫌でしたけどね。気配は頑張って消しました。以上」
「ワシらをどうするつもりじゃ? 殺しも出来ん若造」
「ええ。アンタらの様なクズを相手に、自分の手を汚すのもどうかと思いましてね。なら任せようかと」
本当に追ってきたら......って考えて準備して来た。
この期に及んで、まだ何かを期待していた俺。
未だに謝罪すらないゴミしか居ないのにな。
町で後藤と町長が話している時、後藤は俺の事を気付いてたんだよ。
一般人とは違い、罠師だから気配に敏感だし。
だから移動する際に、俺は敢えて痕跡を残してきた。
足跡も消さず、火の後もそのままに。
何時まで経っても上達しない半人前ってね。
まぁそれでも慎重だった後藤には、残念賞を差し上げるけど。
俺に誘われてるのが分かっていたから、遠距離から狙撃したんだ。
でも周囲に色々な臭いをばら撒いたら、慎重な人も騙されてくれましたけども。
息を潜めて銃を構えてる間は、何時こっちが撃たれるか分からないからヒヤヒヤしたけどね。
でもさぁ。いくら俺を舐めててもさ。
全員が何の警戒も無く集まったらダメでしょ。
油断しすぎだわ。
侮ってくれたおかげで、最高の結果が出たけどさ。
俺の射撃が上達しないからって、散弾銃を渡したの後藤達なのに。
そんな事も忘れるぐらい興味持たれなかったのか?
......はぁ。
ここまで馬鹿にされても、殺すつもりで銃は撃てないや。
情けないなぁ。
「オ、オイ! 聞いてるのか貴様! 早く助けろ!」
さて。
先にテントを片付けて......ってゾンビ邪魔だなぁ。
イラっと来て穴に投げちゃったよ。
何かわぁわぁ聞こえるけど気のせい気のせい。
散弾って身体に残りやすいみたいだから、血が止まらないと思うんだよね。
早く治療しないと、死んじゃうかもな。
まぁ下半身の何処かにしか弾は当たってないし、簡単には死なないでしょ。
腕だけで登れたら逃げられるかも? 間に合えばだけど。
急がないと生きている事が地獄になるぞ。
「じゃあ俺はこれで。頑張って勝手に脱出してくださいね。あっ。この辺りゾンビ多いので早くした方がいいですよ。って知ってますよね? アハハ」
俺がその場を立ち去る際、大声で叫ぶ町長の声にゾンビが集まり出していた。
都市が近いからゾンビの数も多いんだよね。やだやだ。
結末まで見ても良かったけどさぁ。
正直に言って、もうそこまでの興味も無くなった。
望んだ結果なのに、達成感が湧かないんだよ。
準備している時は、あんなに気持ちが充実していたのに。
復讐心?
そうだな。今回はあちらが本気で俺を殺しに来た。
テント内のゾンビは、頭を撃たれていたし。
俺自身は怪我もしてないけど、見つかれば殺される。
だから撃った。急所を撃てないヘタレだけどな。
まぁ俺自身が手を汚すより、始末を殺しの専門家(笑)に任せるみたいな?
ゾンビってそう言うの得意でしょ。
川越町の住人については、何も思っていない。
子供達も含めて、どうでも良いだろ。
今後の事なんて興味が無い。
ああ。
追われた時の対策で、数十体のゾンビを町方面へ誘導したの忘れてたわ。
まぁその位の数に襲われても問題ないでしょ。
皆に慕われるイケメンさんが居るんだしな。
それ以上の集団になってたら、ごめんなさいって事で。
ファッ〇ン! クソヤロ-共!
さてさて。
囲まれる前に俺も移動しますかね。
◇◇◇
丘の上からは近く感じていた街も、歩いたら遠いんだなコレ。
ゾンビも多いし。誰も戦って無いのか?
俺だってドラマみたいにカッコ良く相手には出来ない。
1年近く経って脆くなったゾンビだから、1対1なら無理なく倒せるぐらい。
あんまり数が多くなると、今の俺でも直ぐに捕まるよ。
銃は持ってるけど、残弾無いしな。
今撃ったらゾンビの大群を呼んじゃうから、絶対に撃てないんだけども!
ぶつくさ言いながらも足は止めず歩く。
結局、2時間も掛かったよ。
それだけ頑張って、何故に人のいる都市へ来たのか?
山での生活はお気楽で自由。
毎日がキャンプで飽きる事は無い。
そんな夢の様な生活だったんだけどさ。
どうしても我慢できない事案があるんだ。
夜寝れないんだよ! 耳元でブンブン、ブンブン!
虫には慣れたけど、蚊だけは無理なんだぁあああああ!
はぁはぁ。
奴らから逃れるには、建物に入るしかないだろ?
そして絶対見つけるんだ。蚊取り線香を。
〇鳥のやつカモン!
そういう訳で桜井市に入った訳だが、パニックから1年足らずで都市機能を失った感じだ。
緑の多い都市だったのか、伸びた枝が建物にまで及んでいる。
誰も手入れする人間が居ないしな。
このままだと、都市全体が植物で覆われるかも知れない。
なんかそう言うアニメか映画を見た事ある気がするけど。
題名がちょっと思い出せない。何だっけ?
まぁいい。
大通りから進み、付近の建物をチェック。
通り沿いのお店関係は、1階部分が全滅だな。
何処もかしこもガラスは割られ、商品棚も倒れて散乱。
期待していなかったから、特にガッカリもしないけどな。
無理に探索はせずに、身を隠せる場所を探す。
当たり前だが、ガラスが割れていない場所を優先だ。
ん?
俺は目線の先にある建物に足を踏み入れる。
まるで探し物を見つけた様に。
これで動かなければ気のせいで済む。
果たして......。
ガサッ。
居る。
何かは分からないが、視線はずっと感じていた。
何者だ? 姿勢を低くして気配を探る。
タッタッタッ。
何だ? この素人丸出しの動き。
囮か? ならば他にも居るのか?
俺は獲物になるつもりは無い。
半人前だが、猟師なのだから。
相手の動きを読み、居るであろう場所へ移動。
無言で相手の後ろへ近づき、そのまま頭に銃を突きつける。
「動くな。妙な動きをしたら撃つ」
「......ま、待って下さい。う、撃たないで」
「そのまま両手を挙げて跪け。抵抗したら......す」
「ひぃ⁉ た、助けて」
両手を頭の後ろで組ませ、武器を探す。
おいおい。何でこんな物持ってんの。
拳銃って。
散弾銃持ってる、俺が言うのもおかしいけどさ。
「先ずは俺の質問に答えろ。お前は誰で、何故拳銃を持ってる?」
「わ、私はエンドウと言います。桜井市の住民です。け、拳銃はゾンビから盗りました」
「へぇ。まぁ安全装置も掛かってるしな。で? 何故俺を狙った?」
「ね、狙ってなんていません! 今も貴方にいきなり襲われて」
「黙れ。そう答えた時点でお前は敵でしかない。俺は誰も信用しないが、噓つき野郎は許さない」
ゴツン。
散弾銃の柄で後頭部を殴り意識を奪う。
手加減は出来ない。しないんじゃなくて出来ないんだよ!
喧嘩もした事無かった俺に、手加減なんて高等テクニックがある訳無い!
意識が奪えたことが奇跡。ちゃんと息はしているからオッケ-。
グッジョブ。
拳銃は回収したが、予備の弾も持ってない。
俺にも必要は無いけど、撃たれても怖いからな。
ただ銃は重いから、持ち歩くのが大変なんだけど。
気を失った不審者エンドウは、只の素人の様だ。
特に身元を証明する様な物は持ってない。
名乗った名前も多分偽名だろう。
これ以上無駄に関わる気は無いので、置き去りにして移動。
外へ出ても嫌な視線は感じない。
前から想像はしていたが、実際に拳銃を持った奴がいた。
警官がゾンビになったんだろうけどさ。
興味が無ければ、使い方も分からないはずなのにな。
夢は壊したく無いけど、警官が使う様な拳銃はゾンビには通用しない。
威力が低いし装填できる弾数も少ないし。
俺みたいにバットか鉄パイプで殴る方が効率良いよ。
映画やドラマの中なら、主人公がカッコ良く撃つんだろうけど。
現実はそんなに甘くないっす。
戦うのに格好は必要無いって理解しないと死にます。
まぁでも。
1年経つと秩序もモラルも完全に崩壊か。
人が人を襲うのが当たり前の都市ってか?
気をつけないと足元をすくわれそうだ。
俺は目立つ行動を避け、拠点となる場所を探し彷徨う。
嫌な事全てを忘れる為に―――




