第85話
「ただいま、フレイヤ」
「…………おかえりなさい」
「おや? そんなに落ち込んでどうしたんだい?」
「それは!! ……それより真は大丈夫なんでしょうね?」
「大丈夫だよ。ほら」
先に戻ってきたファン。そしてファンがフレイヤにある一点を指さすと真が急に姿を現した。
真を見た瞬間フレイヤは慌てて真に駆け寄るのだがそれは悪手であった。
「ちょっとま――ぎゃぁぁぁぁぁ」
真に近づくことその距離は半メートルも満たない距離。そんなことをすれば結果は目に見えていたのだが……。真の方も体制的に悪かった。戻ってきたのはいいが椅子に座らせた状態で戻ってきたものだから逃げるに逃げれなかった。
フレイヤの何が目を曇らせたのかは本人しか知らないところである。
「あーあーあー。なにをやっているんだいフレイヤ?」
「……ごめんなさい」
「仕方ない。こっちの場所よりさっきの場所の方なら真君も素直に聞くだろう。それにこうなってしまっては仕方のない事だし、いいねフレイヤ?」
「………………はい」
「それじゃ行こうか」
「うぅぅぅうん」
「おっ! 目が覚めたようだね?」
「……お前はファン。それにここは……」
「うちの妹が迷惑かけたみたいだね。ここはさっき君が一瞬来てもらったところだよ」
真は先ほどと同じ状態であった。椅子に座らせられ目を開ければ広がるのは光のかけらも許さないような一面真黒な世界。景色も変わらないしあるのは一本のゆらゆらと揺れている蝋燭のみ。
「ここは一体どこなんだ? さっきから寒気が止まらないし、心臓が締め付けられるようにも感じるし……」
「悪いけどそれは教えることはできないんだ。申し訳ないけどね。まあ気を失った君に対して僕たちが都合のいい場所とでも言っておこうか」
「……そうか。それにしても僕達ってお前しかしないようだが?」
そういうと真は周りを見渡す。と言っても見える範囲などたかが知れてるし、あまり見たくもないところではあるが。
「もうすぐ来るから少し待ってってもらえるかな」
ファンがそう言うと二人の間には無言の時間が流れていく。
待つこと五分程であっただろうか。暗闇の向こうから足音が聞こえてきた。そして暗闇からゆっくりと姿を現したのはフレイヤである。
「お待たせ」
「お待たせじゃないんだよ。さっきはよくも……」
フレイヤを見た瞬間先ほどの行為に対して文句を言おうと感情を高ぶらせようとしたのだが、どうも感情を高ぶらせようとすればするほど悪寒が増していく。そして体全体が締め付けられるような感じも増していく。
「ダメだよ真君。この場所じゃあそういうことは禁止事項だ」
「なん……だと……」
息も絶え絶えな感じで真はファンの顔を見つめる。真はその後何か説明のようなものがあると思って待っていたのだがファンは「そうゆうわけだから」しか言わなかった。
「ごめんね真君」
「いや別にもういいから」
「うん……。わかった」
真を心配そうに見つめるフレイヤ。なぜかはわからないが微妙な空気が流れていく。だがそれに割り込んできたファンによってその流れはすぐに霧散する。
「どうやらわかってもらえたようだね。そしたら始めちゃおうかフレイヤ」
「はい」
その言葉を皮切りに真に眼の力の事を詳しく分かりやすく、そしてゆっくりと話し始める。
真はわからないところはちゃんと質問をして一つ一つ理解していく。
ファンはその様子を複雑な表情で眺めているのであった。
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