第82話
「とりあえず場所を移そうか」
真は無言のまま頷く。
真の頷いたのを確認したファンは真を一瞬見た後周りを見渡す。
その瞬間だった
見渡したと思ったら刹那の瞬間に周りの景色は瞬く間に変化した。
よく見るとどこかの部屋の一室のように見えるが、真には全く見覚えのない部屋であった。
しっかりと見ると部屋のすべてが白い石でできており、お世辞にも飾りっ気などは、まったくなかった。そして部屋の中にあるのは先ほどまで座っていた椅子やテーブル。窓が左右対称の所に開いているだけだ。
真はふと気になり窓の外を見てみると、そこは見たこともない風景が広がっており真は開いた口が塞がらずにいた。
そこに広がる景色、まあ窓の見える範囲であるが先が見えないほどの草原が広がっており時折窓からは柔らかで心地の良い風がゆっくりと吹きつけてくる。
「ここは僕たちが住んでいる部屋だよ。まあ君が驚くのは無理もないことだろうね」
笑いながら真に話しかけてきたファンを真は驚きの表情を崩さずファンを見つめる。何か喋りたそうにしているがどうやら真は声が出てこないようだった。
「なかなかいい具合に混乱しているようだね。けど、まず先にやることを済ませてしまおうか」
ファンの言葉にようやく真は我を取り戻す。その表情は驚きの表情から一変してあからさまに嫌そうな顔つきである。
「そんな顔をしないでくれ。先ほど君の意思はしっかり確認したじゃないか」
「ほとんど強制みたいなもんじゃないか!!」
あからさまにこの場を楽しんでいるかのようなファンの笑みに真は声を荒げ文句を垂れる。しかし、ファンの方は真の文句などどこ吹く風だ。
そして、真を無視して話を進めていく。
「さて、フレイヤ。わかっているね」
「……はい」
ファンを睨みつけていた真だったがフレイヤの先ほどとは打って変わって素直な返事に真は困惑してしまう。先ほどなど散々暴言を吐くは罵倒するわと言いたい放題だったのだから困惑するのも仕方のないことだろう。
だがこれにはしっかりと訳がある。
人に能力を授ける。それは真が思っているほど簡単なものではなかったのだ。まあ真の中のイメージは最初のフレイヤに形作られたものであるから仕方のないことなのかもしれないが……
能力を授ける
これは自分の能力
神の力をそのまま譲渡するに等しい行為なのだ。実際能力が失うわけではないが、同等の能力が授けられた人間に備わるのだ。その能力は行使一つで人間のすべてを狂わせてしまうものも多い。すべてが授けられた人間の一任されるのだからおいそれと渡すものではない。
だが疑問もある
譲渡して悪用されてしまったらすぐに能力を奪ってしまえばいいかと思うがそうもいかない。神にも神のルールがあり譲渡された能力は望みもしくは望まれた願いをかなえるまでは取り消すことはできないのである。
その為、神はある程度授ける人間を調べたり観察して慎重に決めて渡すのが慣例だ。
しかし、今回フレイヤはそれを怠ってしまった
その為この時ばかりはファンの言葉にしっかりと従わなければいけないのだった。
椅子から立ち上がりフレイヤは真の前までやってくる。
「じゃあ、真君。今から授けた能力を再度かけるから目を瞑ってもらえるかしら?」
「……ああ」
いつもとは違い真剣な顔つきで真に話しかけてくるフレイヤに、真も不思議とそれに感化されてしまい真面目にフレイヤの言葉に従う。
「そして何も考えないで頭を空っぽにして」
「……はい」
真としては色々考えていたがどうも真面目になった時のフレイヤの言葉には素直に従ってしまう何かがあるようだ。
「よし。じゃあ体の力を抜いてゆっくりと深呼吸して」
真は返事の代わりとばかりにフレイヤの言葉通りの事をやる。
「…………じゃあ始めるよ」
その言葉を言った直後真の瞼の向こう側からは目を瞑っていても分かるくらいの光があふれてくる。
その光は眩しいと感じるよりも優しいと感じられるようだった。
そして、フレイヤは真のきいたことのない言葉をしゃべり始める。さながら呪文のようの言葉であった。
一分ほどそれが続いたであろうか
「もう目を開けていいよ」
真はフレイヤの言葉に従いゆっくりと目を開けた。
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