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神様からのいらない贈物  作者: ケンケン
冬春の闘い
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第73話

 スポーツジムで蒼空と出会ってから数週間過ぎた

 あれから蒼空は欠かさず真のもとに顔を出し一緒に帰る。いつもの日常にそのプロセスが組み込まれた。

 真は当初気にはしていたのだが慣れとは怖いものである。いつの間にやらそれが当たり前だと受け止めて毎日を送るようになっていた。


 しかし、最近はそんなことに気にかけていられないほど真自身ピリピリと感情を尖らせている。話しかければ返すことは返すのだが、そもそもの雰囲気がおいそれと話しかけられる感じではなくなっているのだ。


 原因としては単純明快であった。


 約束の日が近づいてきている


 それだけである。


 普段の日常でも、そしてジムでも真の目には余計な感情は映っていない。勝つことだけにベクトルを向けている目である。


 その真に対して一番の動揺を覚えたのは他でもない蒼空だ。

 蒼空も一応は気を使うことぐらいはできる。そんなことを言ってられないほど見ている真は今まで見たことがないのだ。初めて見る真剣を通り越し鬼気迫ると言わんばかりの真を前に蒼空は対応に苦慮していた。


 その日、蒼空は真の姿を最後まで見届けずジムを後にした。

 そしてそのままどこに行くともなく蒼空はさまよい歩いた。目的もなく道の続く限り。気が付いた時蒼空は自分がどこにいるのかわからない場所におり、蒼空には珍しく途方に暮れてしまっていた。

 どうしたらいいか考えているとふと後ろから車のクラクションの音が鳴る。

 そこは歩道がなく車だけが走る道ではあるが蒼空はきちんと端の方を歩いており邪魔はしていないはずだった。

 そんな思いを持ちながらもクラクションの鳴らした車の方に目を向けるとそこには見知った人が車に乗っていた。車を路肩に寄せ止める。


 「ヤッホー、こんなところで何してるの蒼空ちゃん?」


 「……咲奈さん。それに詩織さんと彩子さんも? どうしたんですか?」


 車に乗っていたのは真の姉達であった。運転席の

窓を開け身を乗り出し蒼空に手を振ってくる咲奈。助手席には詩織。後部座席には彩子が座っていたのが見えた。


 「相変わらずだね蒼空ちゃん。私達はドライブに行ってきた帰りなんだけど……蒼空ちゃんは何でこんなところにいるの?ここって隣町だよ?」


 呆れるような顔でと疑問が入り混じったような顔で蒼空を見ている咲奈。隣にいる詩織も、後ろに乗っている彩子も多少の差異はあるものの似た感じの顔である。

 蒼空も流石に真の姉達の表情に気が付いたのであろう、顔をうつむき幾分か気まずそうであった。


 「ちょっと……」


 蒼空はそれだけの声を絞り出すだけに留まりそれ以上喋ることはなかった。


 すると咲奈の隣に座っている詩織が車から降りて蒼空に近づいてきた。


 「こんなところで話すのもなんだから乗っていかない?」


 「…………はい」


 詩織の言葉に蒼空は誘われるがまま車に乗り込むのであった。





 車に乗り込んでからも蒼空は押し黙ったまま一言も喋ることはない。そんな蒼空の様子を見かねてか彩子が懸命に話しかけてきたのだが、それもどうやら無駄な努力にだったようで蒼空は彩子の言葉をことごとく無視した。

 蒼空は車に乗ってからもうつむいたままで顔は一度も上げていない。

 前の座席と後ろの座席の違いがはっきりと分かれていた。前側は詩織と咲奈が楽しそうに会話しているのに対して後ろでは沈黙が続いていた。

 

 しかし、後ろの座席の沈黙は前の座席の会話によって破られることに。


 「それにしても最近真の様子変よね」


 「咲奈もそう思う? なんか昔にもどったみたいだものね。あの目つきは間違いないと思うわ。お母さんに報告しとかないとまた昔みたいになるわよ」


 「そうだよねー。それは私達にとっても困ることになるしね」


 とりとめのない詩織と咲奈の会話。それに蒼空は珍しいともいえる素早い動きで顔をあげるやいなや会話している二人に声をかける。


 「昔みたいってどういうことですか!?」


 蒼空には珍しく大きな声で前の二人に話しかける。蒼空の声に一緒に乗っている三人はかなりビックリしているようで声も出せずにいた。


 しかしその中でいち早く回復したのは詩織だった。


 「あら、真の昔のことが気になるの?」


 蒼空は首を縦に振り肯定をしめす。

 「ならこの後も少しつきあってもらっていいかしら?」


 人が悪そうな笑みを浮かべ詩織は蒼空を見つめるのであった。


お読みいただきありがとうございます

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