第67話
「……誰か来たみたいだからちょっと待って」
電話の向こうにいる真琴に断りを入れると携帯を耳から離しインターホンのディスプレイに目を向ける。実際のところ悪い予感というか話の流れ的に確信しか真にはなかったのだが。
その間電話からは真琴が何か話しているようであったが真には届いていなかった。
そしてディスプレイを見て来客を無視することにした真は話の続きをするため携帯を耳元に戻す。
「ちょっと真聞いてるの?」
元に戻した瞬間聞こえてきた言葉はそれであった。
耳から話して聞こえてなかった真は再度言ってもらうため尋ねなおすことにした。ついでに詳細についても求めることに。
「聞いてなかったからもう一回言ってくれる。……詳しくね!!」
まあ聞いた内容は思っていた通りというか予想通りのものであった。
簡単に言えば…………
『真に会いたい病』
この一言に尽きるであろうということだ。
真琴と話しているその間も何度もインターホンは鳴っているのだが、真としては断固として出るつもりはなかった。
だがしかし、インターホンの音が真琴にも聞こえていたようで最終的には出迎えることになってしまうのであった。
そして、真琴との電話を終わらせて出迎えようと通話を切ろうとしたのだが最後に特大の爆弾を真琴は落としていった。
「じゃあ、一ヵ月詩織達をよろしくね、真」
「…………ちょっ、ちょっとま――」
再度聞き直そうとしたのだが無情にも耳から入ってくる音は通話の切れた「ツーツー」という音だけであった。
もう一度掛けなおそうかと思ったのだがその間もインターホンは常に鳴り続けていた。
重い腰を上げ仕方が無いと言わんばかりの表情でインターホンの受話器を取る。
「どちら様ですか?」
真の言葉には何も感情のこもっていない無機質な言葉で応対をしたのだが向こうはそれすらも気にしないようであった。
「やっと出てくれたぁ。居留守なんてしたってお姉ちゃんにはお見通しなんだぞ」
「そうだよー」
「そうだそうだー」
「どちら様ですか?」
真の方もそんな姉達の言葉を意に介してはいなく再度同じ言葉を投げかける。近くにいなければ真としても何も恐ろしいものはないのだ。
そんな真の様子を感じ取ったのだろう先に折れたのは姉達の方だ。というかだいたい折れるのは姉達がすぐに折れるのだが……。
「詩織姉ちゃんだよー。わかっているんでしょう真。ここは寒いから早く入れてほしいなぁ」
「彩子もいるよぉ」
「咲奈姉ちゃんもだよー」
三人の言葉を聞いてさすがにこれ以上は同じことを言っても無駄かなと思った真は普通に受け答えをすることにした。
ただし、感情は拒否感をかなり滲ませる感じである。
そして真にはわかりきっている言葉を三人投げかける。
「三人そろって何しに来たの?」
「真に会いに来たにきまってるじゃない。そんなこと聞かなくていいから早く中に入れてよ真」
真の質問にはインターホンの一番前にいる詩織が代表して答えてきた。
真はその言葉を聞いた後すぐ大きく息を吸い込むと受話器に向かって叫ぶ。
「入れるわけないだろ!! ましてや俺一人しかいないんだぞ。そんなことするわけないのはわかっているだろ!!!!」
怒声の孕んだ真の声に驚いたのがディスプレイの向こう側の顔は一瞬悲しげな顔つきになるのだがすぐに笑顔になる。
笑顔を言うよりどちらかというと余裕のある笑みに感じられた。
「真一人じゃなければいいんだよね?」
詩織がそう言うと後ろを振り向き手招きをする。
そして後ろから現れたのは真のよく知っている、というか幼馴染の男。
慧であった
慧の顔を見た瞬間何か言ってやろうとしたのだがすぐに異変を感じ取った。
どうも慧の表情は冴えないものであった。
そして詩織に手を引かれ一番に前に来ると慧は真に一言言ってきた。
「……すまん、真。詩織さん達に捕まっちまった」
その言葉を聞いた真は溜息しか出なかった。
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