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神様からのいらない贈物  作者: ケンケン
冬春の闘い
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第65話


 「ふう。こんなもんか」

 

 真は額から滝のように流れ落ちる汗をタオルで拭うと傍にあったベンチに腰掛けた。

 

 バイト先のオーナー、優志の父親、優樹に会ってから一週間が過ぎていた。そして真は今家の近くにあるスポーツジムに来ている。


 目的は一つ

 自分の身体を鍛えなおすためだ。

 

 なぜこのようなことをしているのかという理由は簡単な事である。優樹に勝つ為だ。

 当初あまり乗り気ではなかった真がここまでのやる気を出しているのは優志が真に告げた勝利の報酬が真にとってそこまでやる価値があるものであったからである。

 

 ただし真はこんなことをしていてもすんなり勝てるかどうかというところに関しては結論は出せないでいる。

 たった一度交わしただけの握手。力の強さはその一度だけでいやがおうにもわかってしまったし、身体つきを見た時もその身体は年齢とは対照的に若々しいものだと服の上からでも見て取れたからだ。


 試合の日にちも挨拶をした日の三日後に優志から連絡が来ており、連絡をもらった日から一ヵ月後と連絡はもらっている。

 

 絶対に勝てるとは言い切れないが勝つ為の努力だけは怠らないように、自分の身体を日にちが決まってからというもの毎日このスポーツジムに通い苛め抜いていたのである。


 ベンチに座り、身体を休めながら次はどの器具を使おうかと見回していると見知った顔が視線の先に留まる。

 その人物も真の存在に気が付いたようで、真を見つけるなり傍に近づいてきた。


 「今日も頑張っているみたいだな。けどあんまり無理はしないように。無理に鍛えすぎるとそれはそれでオーバーワークになっちまって筋肉にはあんまりよくないからな。まあ単純に筋肉だけつけたいんだったらそれでもかまわないんだがな。お前はそうじゃないだろう真?」


 近づいてきた人物の言葉に真は力強く頷く。


 話しかけてきたこの人物はここのスポーツジムのトレーナーで石田という人物だ。


 このスポーツジムに入会するにあたり最初から石田さんに見てもらうつもりで真は入会したのだ。この石田という人物は世界的にそれなりに名の通った人物であったからだ。何人ものスポーツ選手や格闘技者のトレーナーを務めた実績がある。その中にはオリンピックや世界大会などといった大きな大会で金メダルや優勝者を出すほどの実績なのだ。


 しかし、なぜこんな人物がこんなところにいるのかはそれなりに訳があったりするのだが、そんなに深い理由でもなかったりする。

 あっさりと言ってしまえば実はここのスポーツジムは大学の施設、正確には大学から民間の業者に委託して運営している施設であり、石田は大学の講師でもあるからなのである。

 

 石田は真の昔(病気の事ではなく総合格闘技)の事を知っており時々モニターとしてや実験等に付き合った縁で今回のトレーナーの件をお願いするに至ったのである。

 ちなみに石田は真のバイト先で行われている興行の事を知っている人物でもある。


 「それにしてもお前が鍛えて挑むなんて余程の事なんだが……相手はそんなにすごいのか? お前の試合は色々見させてもらったけど今までこんなことなかっただろ?」


 まだ息が整っていない真は軽く深呼吸をして整える。そしてある程度落ち着いたところで石田の問いかけに答える。


 「そうですね……今までなかったですけど今回はどうしても負けるわけにはいかないので。それに簡単に勝てそうではなかったのは事実ですから」


 苦笑いを浮かべながら真は優樹姿を思い浮かべる。

 そんな真の様子を石田は真と同じような顔つきで真を眺めていた。

 しかし、石田はすぐさま表情を変え何かを思い出したように話題を変えてくる。


 「そうだ! この後もやっていくんだろ?」


 「ええ……」


 急な話題転換に真は嫌な予感しかしていなかった。

 この石田という人物はある方面でも有名なトレーナーであったりするからだ。


 「後で味の感想を聞かせてほしいんだよ」


 そういって手に持っていたバックから保温効果のある水筒を取り出した。

 それを見た瞬間


 「丁重にお断りさせていただきます」


 掌を石田の前に出し拒否の姿勢をアピールする真。だが真の抵抗も石田の一言でバッサリと切り落とされ退路を断たれてしまう。


 「じゃあトレーナー代払えよー」


 その言葉に真は言葉を詰まらせてしまう。

 

 石田は身体の鍛えるだけを目的にしているわけではなく、食事とトレーニング、とりわけプロテイン系の物を摂取してするトレーニングに注目をしているトレーナーであった。

 それだけで終わるのならば特に問題はなかったのだが一番の問題は自作の飲み物を作ってくるところに問題がある。

 一応作ったものに対して味見はしてくるのだが、味覚のほうが新鋭的で禄でもない物を作ってくるのが有名なのである。

 真も何度か飲まされた事があるのだが何回かはトイレの住人になったこともある。


 そんな経緯もあって真としては断りたかったのだがお金のことを出されると何も言えなくなってしまう。 

 頼んだ当初はそんな話は一言も言わず引き受けてくれたのだが真の見通しは甘かったようだ。


 真は差し出された水筒を受け取ると肩を落とし次のトレーニング器具に向かう。

 その後ろからは嬉しそうな様子を隠そうとしない石田が付いていく。

お読みいただきありがとうございます

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