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神様からのいらない贈物  作者: ケンケン
冬春の闘い
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第62話

 春の息吹がそこらかしこから聞こえてくるようになってきた三月初め


 今日はまだ冬らしさが残る冷たい風が吹きすさむ夕方の時間帯に真はとある道をのんびりと歩いていた。

 冷たい風に晒された両手を擦りながら向かうところはバイト先である。


 正月を慧達と過ごしてからそれ以降は特に何があったわけも無く、普段どおりの日常を一日一日過ごしていた。

 帰ってきた当初、真は何かしらあるのではないかと戦々恐々しながら日々を送っていたのだが何も無く一ヶ月……二ヶ月と日にちは過ぎていった。

 だが、それもつかの間の休息であったと今日のバイト先で思い知る事にあるとは夢にも思わないであろう。


 家を出てからバイト先まで歩いて十分少々。

 バイト先のある建物に到着した。真はすぐに準備をする為建物に入ろうとしたのだが、真は足を止める事になる。 

 職員専用の入口の前に見知った顔がいたからだ。誰だか気がついた真はその人物の傍に行きすぐに話しかける。


 「おはようございます、オーナー」


 入口にいたのは真のバイト先のオーナーである大道優志であった。

 挨拶をして横を通り抜けようとした真に優志が声を掛けてきた。


 「おはよう、真。ちょっと話があるんだが俺の部屋に来てくれないか?」


 「今すぐですか? もうすぐ仕事の時間なんですが……」


 呼び止められた真はあからさまに嫌そうな顔をしてかわそうとする。

 真の嫌そうな顔など意も返さずすぐさま真の言い分はバッサリと一刀両断されてしまう。


 「別に俺が用事あるんだからそんな事気にしなくていいからさっさとついて来い」


 「じゃあ、最初から聞かないでくださいよ……」


 真の言葉を背中で聞きながらも優志の歩みは止まる事は無かった。真は渋々と言った感じで優志の後に付いていく。

 優志が向かった先はオーナー室。優志自身の部屋であった。


 部屋の中に入ると真はすぐに部屋にあるソファーに断ることなく座る。優志もその事には特に何も言わず自分の椅子に座る。

 そして唐突に優志はとある話を切り出してきた。


 「話しと言うのは興行の話なんだが……」

 

 優志がそう切り出した瞬間真はソファーから立ち上がるとすぐに部屋から出て行こうとするがそれも優志によりすぐに止められてしまう。


 「出て行くのは最後まで話を聞いてから出て行ってもらおうか、真。それにお前にとっても悪い話ではないのだから。とりあえず戻って座れ」


 優志の話を最後まで聞いた真は一瞬戻るのを躊躇するのだが、優志の言葉に従い再度元いた場所に戻る。だが戻ったときの真の態度は最悪で、最初座ったときは姿勢を正して座っていたのだが、座りなおしたときには足を組み背中を寄りかかって座ったのだ。

 優志は真の様子を見て目を細めたのだがすぐに表情を戻し話の続きをはじめる。


 「さっき言いかけたが興行の話だ。だがその前にお前に聞きたい事がある。お前、俺の親父に会ったんだってな。うちの親父が珍しく人の事褒めるもんだからよくよく聞いたらお前だって言うじゃねえか。どうだった、うちの親父は?」


 「どうだったと言われても……見たまんまの感じって言うぐらいだけですけど。そんな話より興行の話をしてほしいんですけど……」


 「まあ、焦るなって。実際のところ興行の話に親父が関係してるんだしな。それにしても見たまんまか……ハッハッハッハッー」


 「…………」


 優志は真の言葉に対し声をあげながら笑っていた。真はそんな優志を驚きの表情で見つめていた。

 この優志という男は真が今まで接してきた中でも笑う事等は滅多になかった。常に眉間に皺をよせ笑ったとしても声をあげて笑う事等無かったのを記憶している。それが今目の前で笑っているのだ。驚かないわけがない。


 「久しぶりに笑ったわ。そうかそうか、見たまんまか。まあそれには俺も同意せざる得ないな。……それでだ、正直に答えて欲しいんだが親父とやったとして勝てそうだったか?」


 「は?」


 あまりにも唐突な質問に真はそれしか言えなかった。そうなっても仕方ないだろう。話の流れなど関係なく聞いてきたのだから。


 「だから俺の親父と興行やったとしたら勝てそうか?」


 「ちょっと待ってくださいよ。なんでそんな話がいきなり出てくるんですか? まずはそこから説明してもらわないと……」


 困惑した表情で聞いてくる真に対し優志はニヤリと口角を歪めると語り出した。

 その言葉は真にとって更に困惑させるものであった。


 「なんか親父がお前とやってみたいんだって」


 その言葉を聞いた真はただただ茫然と口を開けて固まるしかなかった。

お読みいただきありがとうございます

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