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神様からのいらない贈物  作者: ケンケン
実家への帰郷
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第58話

 真は驚愕の表情を浮かべたままその場で固まっていた。

 固まっている理由は先程言った蒼空の言葉を聞いたからだ。『真の眼の事』という言葉は今の真にとっては衝撃以外には何ものでもない。

 何も考える事ができずに思考が停止しているところに再度蒼空から声を掛けられる。


 「真の眼の事を教えて」


 蒼空の言葉でようやく意識が表層に戻ってくる真。しかし、口からはうまく言葉が出てこないようで、口を開けたまま再度停止してしまう。


 頭の中では聞きたい事がありすぎてどれから聞いていいのか順路立てが出来ていないのだ。パンクしそうな思考に対し一息入れる為一度大きく深呼吸をする。そして再度問いかけてこようとしている蒼空に対して待ったをかける。

 蒼空もそれには従うようで「わかった」と言うとおとなしくその場で待っていた。

 

 何とか時間をもらった真はまず考えるよりも冷静になる事を第一に考える事にした。そしてその後に何から聞いていき最終的にはどうするかという事を順路立てしていく。


 目を瞑り、思考回路の深呼吸をする。まずはそれで心を落ち着かせ思考を空っぽにする。ある程度落ち着いたところで今度は聞きたい事を整理する。

 第一に、なぜその事を知っているのか。第二に、知っていたとして誰からその事を聞いたのか。第三に、なぜそのような事を聞くのか。大きく分ければこんなところであろう。


 (けど……まずは素直に聞くより……)


 考えが纏まったところで真は閉じていた目を開き蒼空の方を見る。しかしその瞬間再度思考は崩壊しそうになる。

 原因は目を開けた瞬間真と蒼空の距離が若干縮まっていたからだ。すぐに後ろに下がろうとするのだがすぐに何かぶつかり下がる事はできなかった。後ろに木があったのを忘れていた。


 「ちょっと、蒼空。な、なんで近づいてきてるの!?」


 「……え?」


 蒼空は真に言われすぐに自分の足元を確認する。蒼空自身もかなり驚いているようでそしてすぐに距離を開ける。どうやら蒼空の様子を見る限り無意識で近づいてきていたようだ。


 距離が離れた事により上がった心拍数は落ち着きを取り戻してくる。仕切りなおしの意味を込めて真は再度深呼吸をするとようやく口を開く。


 「とりあえず蒼空の質問に答える前にこっちの質問に答えてもらいたいんだけどいいかな?」


 蒼空の頷くのを見て真はそのまま言葉を続ける。


 「眼の事を聞きたいって言ってたけど何の事を言っているの? 別に俺の目は何にもないけど……」


 まずは蒼空が聞いてきた事に対して問うのではなく、何もないフリからはいった真。これで蒼空がどういう反応をするのか様子を見る事にしたようだ。

 そして、あわよくばこのまま何もないことを心の中で神様に祈りつつ目を瞑る真。

 しかし、真のそんな祈りは神様に届くどころか予想外のところから答えがくる事に。


 (残念だったね真君。その娘は大体の事は知ってるみたいだよー)


 頭に響き渡る聞き覚えのある声。聞こえた瞬間に目をすぐに開けると先程までいた場所とは違っていた。白い靄がかかり廻りを見渡す事が出来ない場所。真すぐに見覚えのある場所だと思い出す。

 そして、靄を掻き分けて現れたのはレイヤ、元いフレイヤであった。



 ◆



 『なかなか面白そうな事になってるねー真君。いやー青春してるねー。私は嬉しいよ。それより私の格好どうかな? 初めて着てみたんだけど真君何にも言ってくれないから聞きに来ちゃったよ』


 姿を現したフレイヤは先程一緒にいた時と同じ格好。振袖を着て現れた。しかし、真にとってはそんな事はどうでもよかった。


 『そんな事はどうでもいいんだよ! それよりさっき言っていた事は本当なのか?』


 『ひどーい、真君。少しぐらい感想言っても罰は当たらないと思うけど』


 『だからそんな事はどうでもいいんだよ、俺には。いいからさっき言った事話せよレイヤ』


 『ホンット酷いよね真君。いいもーん。ちゃんと言ってくれるまで教えてあげないんだから』


 『はっーあ。意味がわからないんだけど。何で俺がそんなこと言わなきゃならないのよ。いいからすぐに話せよ』


 『つーん』


 『おい! レイヤ』


 『つーん』


 それ以降真が何も言ってもフレイヤは「つーん」としか言わなくなってしまった。流石に真もこのままでは話が進まないと感じてはいるが言いたくなくと言う感情も少なくはない。二つの感情が真の中で鬩ぎあっていたが、時間が過ぎていくにつれ真も最後には妥協をする事になった。

 嫌々ではあるがフレイヤに艶姿に対し感想を言ってあげる。まあ、真の思っている事をそのまま言ったので大した言葉ではなかったのだが。

 フレイヤ的には完全には納得はしていないようであったがとりあえず話してくれるようだ。


 『どこで知ったのかはわからないけど蒼空ちゃんは真君の眼に何が起こっているのか知ってるみたいだよ。さっき真君に話しかける前に心を覗いてみたらそうだったから』


 『知ってるってどういうことよ!? いったいなんで!!』


 『だかーらー、知らないって言ったでしょう!! そこは蒼空ちゃん本人から聞いてよー。私は思ったことを知っただけなんだし』


 『わかったって。そんなに怒るなよ。わるかったって』


 『わかってくれればいいのよ。わかってくれればさー』


 『教えてくれてありがとうな』


 真には珍しくフレイヤに対し頭を下げてお礼を言う。


 『いいよー、別に。教えたほうが面白そうだって言ってたしねー。まあゆっくり影から見守っててあげるよ。それじゃあ頑張ってね』


 それだけ言うとフレイヤの体が消えていく。しかし、真はそれどころではなかった。


 『おい!! ちょっと待てって。面白そうだって言ってたってどういう事よ。それに影から見守るってどういう事よ。おい!! 本当に待てって!!!」


 しかし、真の叫びはその場に木霊するだけでフレイヤには届かなかった。それに加えて真は嫌なものを見てしまう。消えていくときのフレイヤの顔だ。その時のフレイヤの顔は真には見覚えのあるものであった。その顔は真と蒼空をおいていった慧の顔にそっくりであった。


 そんな事を感じたのもつかの間、周りの景色が急に一変する。靄に覆われていたのがフレイヤが消えた瞬間視界を遮るほどの白さに覆われたのだ。

 そして、真の意識はそこで途切れる事になる。



 ◆



 「どうしたの、真?」


 蒼空の声で真の意識が浮上する。すぐに閉じていた目を開け声のしたほうを見る。そこには心配そうに真を見つめる蒼空がいた。

 しかし、真には心配している蒼空には悪いが先に確認するべき事があった。

 すぐに首を振り回しまわりを確認する。辺りは暗くて何も見えなかったが、一瞬真の目の端にそれを捉える事が出来た。


 薄暗い中、少し木が茂っているところ。そこに人影のようなものが見えたのだ。それも一人ではなく複数。それだけで真は確信する。


 あいつら見てるな……


 大きく溜息をつく真に蒼空がすぐに声をかけてくる。


 「大丈夫、真?」


 「あ、ああ。大丈夫だよ」


 「本当?」


 「ああ」


 「そっか……。じゃあさっきの嘘はどうでもいいから本当の事を話して」


 安堵の表情を見せたと思ったら一変して真剣な顔つきになる蒼空。その表情には真を気圧されてしまう。

 多少たじろいでしまった真だが、蒼空の真剣な表情に自身の顔も心も真剣なものになる。

 まあ、多少意識は覗き見をしている奴らのほうにはいってはいるが。


 そして何より蒼空の口から『嘘』と言う言葉が出た事で、真も腹をくくる事にした。


 「わかった。蒼空は何が聞きたいの? いや……その前に蒼空が何で知っているのか聞いていいかな?」


 「うん」


 そして、蒼空はポツリポツリと真の目の事を知った経緯を語ってくれた。


 どうやら蒼空が知った経緯は平野先生のところであると言う事であった。

 真が通院した日。蒼空は平野先生の手伝いで先生のところに行っていたらしく、そこで偶然真のカルテを見てしまったのだと言う。

 まあ、偶然と言うには違いがあるかもしれない。蒼空は手伝いと言っているが実際のところポジション的には助手に近いものであるのだ。診察に同席する事もあるし、カルテの整理もすることもある。そのカルテの整理をしている時に真のカルテを見たと言うのが本当のところである。

 まあ、真のカルテを見たのは本当に偶然ではあるが。


 平野先生は蒼空に助手をやらせているが手伝わせているのだが、同席させたりカルテを整理させているのは比較的症状の軽い者など一部でしかない。ましてや真のように色々と抱えている者等の人達のは扱わせてはいない。蒼空が真のカルテを見たのは平野先生のちょっとした不手際なのである。

 

 真は来た瞬間に平野先生に文句の一つでも言ってやろうかと思ったが、そこはTPOを弁えやめることにした。

 

 蒼空が知った理由を大方聞いた真は覚悟が決まったようで、意を決した顔つきになる。

 そして、蒼空の目をしっかりと見つめると真は蒼空に語り出す。


 真の意識には覗き見をしている存在等はもうなくなっていた。

お読みいただきありがとうございます

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