第51話
外でご飯を食べることが決まり全員で目的の場所を目指して歩いていく。と言ってもその場所を知っているのは三姉妹だけで真達は案内されるがままに付いて行くしかなかった。
そしてその場所まで行くのに結構な距離を歩いていた。
「何処まで行くんだろうなー」
真の横に一緒に歩いている慧がぼそりと呟く。
真はそれには答えることなく無言で歩き続ける。しかし慧の呟きには同じことを思ってはいた。
その真の考えに横から口を出してくるのもいる。
(何かもうすぐ着くみたいだよー。良かったねー)
(いちいち俺の考えに答えなくていいわ。まあ教えてくれたことには少しは感謝するが……)
(少しと言わずもっと感謝してもいいんだよー。真君は私に対して敬いがかなり足りないみたいだからねー)
(うっせ!)
頭の中でレイヤとの会話を続けながら歩き続けること五分少々であろうか、ようやく目的の店に着いたようだ。トータルで二十分ぐらいは歩いていただろうか。
「着いたよー」
咲奈がそう言って店の入口に着くと真達のほうに顔を向けてくる。
真はようやくたどり着いた店の看板に目を向ける。そして真は大きく目を見開いて驚くことになる。看板に書いてあった店の名前は
『クルール』
であった。
真が目を見開いて驚くのは無理も無かろう。店の名前もそうだが書いてある文字もまんま同じだったのだから。真がバイトをしている店の名前と……。
店の扉を三姉妹が開け中に入っていく。それに続いて梓、レイヤ、七海、蒼空、慧、真の順で扉を潜っていく。そして店の中に入ってすぐ店員の声に迎えられる。
「いらっしゃいませー」
来たのは真達と対して歳の違わない男性の店員であった。先に入っていた三姉妹のうち長女の詩織がその店員と何か話しているのだが真の耳には聞こえていない。
一言、二言、詩織から何かを聞いた店員は店の奥に消えていく。そしてその後すぐに奥から違う男性が出てきた。見た目はそれなりに歳をいっている様でおよそ五十歳前後であろうか。頭にはタオルを巻き、口の周りには髭をたくわえ、鋭い目をしており身長も一九〇はありそうなほど高い。身長以外でいうなら屋台の親父みたいな感じの人だ。
しかし真はそんな外見には興味を惹かれていなかった。真が興味を引かれていたのは顔そのものである。なぜならその顔は髭をなくしてしまえば見たことのある人物に似ていたのだ。他人の空似とは思えないその顔に真は聞こうと口を開きかけたのだが聞くことを無く確信してしまう。
「急にこんなに大勢で押しかけてごめんね、大道さん」
「なに、気にしなくていいよ。詩織ちゃんの頼みなら断れないだろ」
大きな笑い声を上げながら大道と呼ばれる人は詩織と話している。そしてその横から咲奈と彩子も会話に加わっていった。どうやらかなりの馴染みの店というのが言葉の一つ一つから理解する。
三姉妹と少し会話した後最初に来た店員に真達全員を案内するように大道と呼ばれる人が指示を出していく。若い男性店員に順番に付いていこうとそれぞれが案内されるところに行こうと動き出したのだが真と大道と呼ばれる男性だけがそこに留まる。
「自分に何か用でもあるんですか? 先程からずっと見ていたようですけど」
「いや、特にこれといって用があるわけじゃないんだ。見ていたのは息子から聞いていた男がどんな男か気になっていただけだ。気に障ったのならすまんかったな」
「息子!? じゃあもしかして?」
「ああ。お前が思っている通り大道優志の親父で優樹っていうもんだ。そして一応あそこの店のオーナーでもある。よろしくな真君」
優樹はそう言うと真に握手を求めるように右手を差し出してきた。
「…………よろしくおねがいします」
真も右手を差し出し握手をする。そして次の瞬間、優樹はつかんでいる手に力を込めて握ってきた。その力強さに真も一瞬遅れながらも力を込め返す。どちらの顔にも青筋が浮かび上がっている。
「……なるほどな。すまんが力を緩めてくれるか? 流石にこのままいるわけにもいかんしな」
優樹の言葉に一瞬戸惑いを見せるものの真は力を緩めお互い手を離す。真は手を離した後も優樹の顔を睨みつけている。
「そう怖い顔しないでくれ。ちょっとした試験みたいなもんなんだから。それにしても優志が推薦するだけあってなかなかの力だな。これなら納得だ」
「試験? 試験って一体なんですか?」
「おっと、余計なことを口にしてしまったかな。だが今はそれについては教えることは出来ない。時がきたらそのうち分かるだろう。今日のところはうちの店の料理を楽しんでいってくれ」
優樹はそれだけ言うとその場から立ち去ろうとする。それに気がついた真は止めようと声をかけようとするのだが
「何やっているんだ真? 早くこっちに来いよ」
慧に呼ばれ意識を慧のほうに傾けたのが失敗だったのだろう。視線を元に戻すと優樹は既に奥の方に行ってしまった後でだった。
真は追求するのを今は諦め慧が呼ぶ部屋に向かうのであった。
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