第48話
咲奈に促され全員が玄関の扉をくぐる。一つの扉を開けるとそこはどうやら居間の様で意外や意外、とてもシンプルでしっかりと整理された綺麗な空間が広がっていた。
真の姉達が三人で住んでいるこのマンションは実際のところは家族向けのマンションであり姉達が住んでいるこの部屋の間取りとしては4LDKという広さを誇っている。しかしここでおかしいことが一点ある。三人で住んでいるのであれば3LDKでいいのではないかと言うことだ。実際のところこのマンションは今住んでいる4LDK以外にも3LDK、2LDKもある。そして真の姉達が入居したのもこのマンションが出来たのと同時であったので他の部屋を選ぶ選択肢もあったのだ。だがそれを選ばなかったのはそれなりにちゃんとした訳があるのだ。
居間に全員が揃ったところで咲奈は台所へと赴き全員分の飲み物を持って再度居間までやってきた。
「どうぞー」
全員の前に其々飲み物を置いていく咲奈。真の分は慧に手渡すと咲奈は自分のポジションを見つけると座って全員を見回した。そして梓の方をに目がいったところで梓に語りかけてきた。
「今、姉さん達に連絡するからちょっと待っててねー梓ちゃん」
そう言うと咲奈はスマホをを取り出し真の残り二人の姉達に連絡を取り出す。因みに普通にメールとかでは電話をかけている。
連絡を待っている間梓はとても嬉しそうで尚且つ期待の眼差しを咲奈に向けていた。それを見ていた残りの全員はなんとも言えない表情をしている。そんな状況の中、蒼空が梓に対して話しかける。
「さっき言っていたことは本当なの?」
蒼空が話しかけてすぐには梓は話すことは無かった。気がつかなかった理由は2点ほどある。まず自分に話しかけられてるとは思ってなかったのが一点と、連絡の返答がどうなるのか待ち遠しくてそれ以外意識の中に入ってこなかったのが一点である。
流石に梓の隣に座っている七海が梓に教えてあげた。
「ちょっと梓」
「んー。何ー?」
七海は梓の身体を揺らし梓もそれにより現実に戻ってきた。しかし返事としては若干上の空であった。
「何じゃなくて……。蒼空が梓にさっきの言ってたことは本当なのか聞いているんだけど……」
「……さっきの事……。あーっ!! アレね。言ってたことは本当だよー」
一瞬何の事を言っているのか分かっていない感じだったがすぐに思いいたったのであろう、嬉しそうな笑顔で全員に告白してきた」
さっき言っていたこと……それは……。
マンションの入口で梓が何で真の姉達に会いたがっているのかという理由の事であった。
梓が真の姉達に会いたがっていた理由。
それは価値観や思想といった考え方が似ていると思った事が起因する。
簡単に言えば梓は真の姉達と同じ気持ちを抱いていたと言うことである。もっと分かりやすく言うと
『梓も自分の弟の事が好きだ』
と言うことである。
マンションの入口でそれを聞いていた全員は最初は梓に対して怪訝な目を向けていた。しかし、胸の内を咲奈に対して熱く語っているのを見てしまってはそれが嘘とは思えなかった。
だからこそ蒼空は確認の意味を兼ねて梓に聞いたのである。
そして淀みなく且つ嬉しそうに話す梓を見て全員が全てを覚ったのである。
咲奈が連絡の返事を待っている間、終始その話をずっとしていた。主に話していたのは梓とレイヤであり蒼空と七海は相槌を打つ程度、慧は心なしかガッカリしている。そして真は表面上はドン引きしているのだが心の内では梓に対して安心感を持っていた。
なぜなら自分に対して恋愛としての対象が全くないと宣言されたようなものなのだ。そんな安心をしている真の頭の中で声が響く。
(なーんか安心しきっているようなところで悪いけど私の魔眼の能力はその程度じゃ揺るぐことはないわよー)
声が聞こえたと同時に真はレイヤのほうにすぐさま顔を向ける。だがレイヤは梓と楽しそうに会話をしているように見えたのだがそれは違っていたらしい。不思議な顔をしてレイヤを見ていた真の頭の中に再び声が響く。
(なんか私がどういう存在なのか忘れているようねー。意識を分ける事なんて簡単なことなんだからその程度で驚かれては困るなー)
勝ち誇ったような声に真は怒りのメーターが上がりそうになるがすぐに心を落ち着かせ先程レイヤが言っていた事に対して質問をぶつける。
(その程度で揺るぐことはないってどういうことよ?)
(言葉の通りよ。基本的には血縁以外の異性なら相手がどんな感情を抱いてようと抗う術はないわ。…………まあ例外は在るみたいだけどね)
(…………例外?)
(まあその話は今度してあげるわ。それよりお姉さんのほう終わったみたいよ)
言われて意識をあげて咲奈のほうに目をやるとちょうど電話が終わったと事であった。
「お待たせ梓ちゃん。姉さん達すぐに帰って来るらしいよ。良かったねー」
「本当ですか!?」
「本当よ」
再度聞いてきた梓に間違いないことを教えてあげる咲奈。それを聞いて梓はとても嬉しそうだった。そんな状況を横目に真は咲奈に気がついた事を聞く。
「詩織姉も彩子姉も仕事だろ? すぐに帰ってくるってどういう事さ?」
真の質問に対し咲奈は含み笑いをした後話してくれた。
「真が家に来てるって言ったら二人共会社早退してくるって」
それを聞いた瞬間真は掌を額に当て天上を仰ぐのであった。
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