第41話
部屋にいた三人を隣の部屋に追い出すと真はすぐさまとあることに取り掛かる。
それはもちろん扉の封鎖に他ならない。真は部屋に人がいないことを確認するとまずは自分の部屋の鍵を掛ける。これは姉達が何時帰って来るかわからない為の用心だ。
鍵を掛けたのを確認するとすぐさま真は取り掛かる。
真の部屋のほうからは押す形のタイプの扉だ。向こうの部屋は本棚に閉鎖されていても一抹の不安はある。
如何にかして開けられないようにする為真はその場で唸りながら考えに没頭する。
考えること数分
思いついたのは物を置いてこちらの部屋に来れない様にするしかなかったので身近にある物で一応の解決を見る。
但し一応なので絶対的なものではないのだが……。
何とか扉の閉鎖と言う仕事を終えた真は呼びに来るまでの間休憩することにした。とはいっても少し前まで寝ていたのだから体のほうはそれほど疲れているわけではない。
とりあえず、両親から言われたことを整理するためにベットに横になりながら考えることにする。
それ以外特にこれといってすることが無く、時間はすぎていくのだった。
あれからどれくらい時間が立っただろうか。
横になっていた真はそんな事を考えていると家の玄関が開く音と、聞き覚えのある騒々しい声が聞こえてきた。
姉達が帰ってきたようで真はそれを聞くや否やベットから起き上がり急いで部屋の扉に向かう。そして鍵がしっかり掛かっている事を確認する。
一応は掛かっていることはわかっているのだが万が一と言う事も否定は出来ないので家にいた頃は何時ものようにやっていた行為である。
その行動に懐かしさを覚える一方であからさまに溜息を付く真もいた。なぜなら……。
ベットに戻ろうと歩みを進めようとしたところに階段を激しく上ってくる音が聞こえてきたのだ。それも一人ではなく複数の足音。
この光景も家に居た頃は毎度の事で家に帰るとすぐに来るのだ。姉達が……。
部屋の前で足音が止まり扉がノックされる。もちろん真は開けて出迎えること等はしない。
「「「ただいま、真」」」
声を掛けてきたのは姉達である。
「……おかえり」
真も最低限の挨拶はする。但しそこにあるのは家族としての最低限のものを言っているだけで帰宅を喜ぶような感じなどは一切ない。
そんなそっけない会話でも姉達は嬉々として喜ぶのだ。
「今日の晩御飯は真の好きな物いーっぱい買ってきたから楽しみにしててね。それとね――」
「私達の愛情一杯の手料理なんだからそれも楽しみにして――」
「ちょっと姉ちゃん達だけ喋ってないで私にも言わせてよ」
其々が其々の言葉を遮りながら話し出すので実際のところ辛うじて聞こえる程度にしか内容が理解できない。これも家に居た頃は毎度の事であったがその中で真は気になる単語を耳にした。
何時もであれば姉達の会話は適当に流すだけで終わらせていたのだが今回は違った。
真は気になった事を聞こうと姉達の会話の流れが終わるのを扉越しに見計らっていたのだが会話を終わらせたのは慧であった。
「詩織さん、咲奈さん、彩子さん、買い物から帰ってきたんですね。おかえりなさい。それとお邪魔しています」
扉の向こう側では慧が姉達に挨拶をしているようだ。まああれだけ隣が騒がしければ帰ってきた事に気がつくのは容易であろう。
「あら。慧君いらっしゃい。…………あと後ろにいるのは蒼空ちゃんとレイヤちゃんだっけ?」
詩織が慧の言葉に反応して言葉をかけたのだがどうやら慧以外に蒼空とレイヤも廊下に出ているようだ。
しかし、少し詩織の反応が気になるのを感じた真。慧に対してはいつもどおりの声のトーンだったのだが蒼空とレイヤに対しては少し心無いかトーンが低く感じられた。
話しを聞いていた真は首を傾げてしまう。実家に帰るときの車の中ではそれなり談笑をしていたのを若干ではあるが記憶している。まあ蒼空はそれほど積極的に話していなかったが。それでもレイヤのほうはそれなりに話はしていたはずだ。
そんな記憶を持っている真としては首を傾げてもおかしくはないだろう。
「……はい」
「そうでーす」
対照的に詩織の問い掛けに答える蒼空とレイヤ。蒼空は抑揚がなく感情の起伏もない感じで、レイヤは明るく活発的な感じだ。
「後で貴方達に聞きたいことがあるのだけどいいかしら?」
表情はわからないが声の感じとしては決意が篭っているような感じで蒼空とレイヤに問いかけているようだ。
そして真はその言葉を聞いた瞬間すぐに何を聞きたいのかも予想が付いてしまった。
「いいで「駄目だね」」
蒼空が詩織の問い掛けに肯定しようとしたのと同時ぐらいに扉越しから真の声が割り込んできた。
真の言葉の後誰もが声を発しなくなってしまった。流石に顔が見えていないと状況が把握できない。仕方ないので誰かが喋るまで黙っていようと思っていたのだが……。
「なんでよー真。別に聞きたいことあるなら聞いてもいいじゃないの」
「そーよ。何で駄目なのさー?理由を教えてよー」
咲奈と彩子がすぐさま反論してきた。
二人には珍しく若干怒り気味だ。真は苦笑いしつつも二人に話しかける。
「理由なんて得に無いって言いたいところだけど、強いて言うなら聞きたいことは何となく予想が付いているからだね。それに二人に迷惑かけそうだからって言うのもあるしね」
「……そっか。そうだよね……」
最後の言葉は詩織の声のようだがあからさまに落ち込んでいるのが声でもわかる。
流石に一瞬真も悪いかなと思ったのだがそんな事を許してしまうとどんどんエスカレートしていくのは目に見えているので気を引き締めなおす。
「わかったわ……」
その言葉の後足跡が遠ざかっていく足音が聞こえる。その足音に何時もの勢いは無くかなり重そうである。
真はこれで終わりと思いベットに歩みを向ける。そして聞きそびれた事をハッと思い出すのだが今となってはどうでもいいかと思っていたところに蒼空が爆弾を投下する。
「私も聞きたい事ある。だから別に気にしない」
蒼空の言葉の後遠ざかっていた姉達の足音が勢いよく戻ってくる。
真も余りの予想外の一言に茫然自失になりその場に立ち尽くしてしまう。
「蒼空ちゃん。本当にいいの? 何を聞いても答えてくれる?」
「私の質問にも答えてくれるならいい」
「本当に? 何でも答えるからこっちも色々教えてね。約束だよ」
「はい」
茫然としている真を尻目に話はどんどん進んでいく。約束が成立した時点でようやく真は我に返ることに。そして真は勢いよくドワノブに手に掛け扉を開けようとするが鍵が掛かっていた為開くことは無かった。それぐらいに真は動揺していた。
「ちょっと待て。蒼空本当にいいのか!?」
「別にいい」
真はその場で頭を抱えてしまう。
如何にかして辞めさせようと試みようと再度蒼空に声をかけようとしたところに下から誰かが二階に上がってきた。
「こんなところであなた達は何をやっているの?」
上がって来たのは真琴のようで状況はよくわかっていないようであった。
「なんでもないよー」
「そうそう、なんでもないの」
「特になんでもないから」
真琴が来た事により嬉しそうな声でその場を去ろうとする姉達。
流石に不審に思った真琴が姉達三人を呼び止める。
「ちょっと待ちなさい。本当に何も無かったのね?」
真にも怪しんでいるのを感じられたので、真は今あったことを話そうとしたのだが……。
「大丈夫ですよ真琴さん。何も無かったですから」
「そう。慧君がそう言うなら。あなた達もこんなところにいないで早くご飯作ってきなさい」
「「「はーい」」」
「慧君たちはご飯はもう少し待って頂戴ね」
姉達はそのまま階段を降り一階へ行ってしまう。真琴も慧達に声をかけると一緒に下に下がってしまう。
廊下にいた三人もそのまま部屋に戻ってしまう。
真は言いようのない怒りを心の中で慧にぶつけるのであった。
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