第39話
あれから間もなくして真達は真の実家に到着した。
車が家の前に到着するや否や中からすぐに人が出てきた。真琴だ。
どうやら車の音でも聞きつけてきたのだろう。車から降りた真はすぐに声を掛けられた。
「おかえり真。疲れてないかい?」
「いや、大丈夫だから……」
真琴はすぐに真の荷物を持とうとしたのだが真はそれを断るかのようにすぐさま家の玄関のほうへ歩いていく。
あからさまに落胆している真琴にすぐさま健司が近づき、何か声をかけているようだったが小さかったので聞こえはしなかった。
何を言われたかは定かではないが真琴の落胆した状態はすぐによくなりそのまま乗ってきた家族以外の三人に降りてきたところから声をかけていく。
「いらっしゃい皆さん。今日は疲れたと思うからゆっくりしていってね。……慧君はどうするの? 家に少し寄っていくの?」
「いえ。一度帰ってからまた来ますよ。一応家の親にも顔は見せないといけないんで」
「そう……。そうだあなた、せっかくだから慧君を送ってあげて」
「そんな。近いですしいいですよ」
「遠慮しなくていいわ。今回真が帰って来てくれたのは慧君のおかげでもあるんだから遠慮しないで頂戴」
随分な勢いで送ることを迫ってくる真琴に対して慧は苦笑いを浮かべるしかなかった。いつの間にか慧の傍まで来ていた健司も溜息をついていた。
健司の溜息を見ていた慧は何か言いたそうにしているのだが言いよどんでいた。
慧と健司のこの様子にはちゃんとした訳があるのだが言い出せずにいる所に車から降りてきた長女の詩織があっさりとその訳を言ってきたのであった。
「何言ってるのお母さん。慧君の家もう見えてるじゃない」
そう。慧の家は真の家から五軒隣にある。だから慧は送ってもらわなくても良かったし健司も溜息をつくだけで送ろうとはしなかったのだ。
真琴は「あら、そうだったかしら」等と惚けた感じで話しているのだがどう考えても確信犯以外には感じられなかった。
そして、そんな三文芝居を見せられていた蒼空とレイヤは特に何も言うこともなく車の後ろから自分の荷物を降ろしているのであった。
先に降りて家の中に入った真はすぐさま二階にある自分の部屋に駆け込むと扉に備え付けられている鍵を閉めて誰も入れないようにする。この鍵は外側からは鍵穴等は無く内側からしか空けれないようになっている代物だ。
これは真の家の部屋に全て付いている訳では真の部屋だけについている物で、もちろん何の為に付いているのかは言うに及ばないところであろう。
真が鍵を閉めてから数分後
急に部屋の外から激しい足音が聞こえたと思うとドワノブからガチャガチャと音が聞こえてくる。
どうやら扉を開けようとしてるのだが鍵が掛かっておりそれは叶うことはない。
数十秒間の間開けようと試みているようだがドワノブから音が止み声が聞こえてきた。まあ真にとっては家に居たときはお馴染みの光景だったのだが。
「ちょっとあけてよー真」
聞こえてくるのは次女の咲奈の声であった。
今日の一番乗りは咲奈姉か。などと思いながら真は声を何時ものように無視を決め込む。
「聞こえてる真? 開けて姉ちゃんと遊ぼうよ。ねえ――」
咲奈が懸命に声をかけるのだが真のほうは一切反応を示してはあげないでいると扉の外からは声に混じってドタドタと複数の足跡が聞こえてきた。
もちろん誰かはわかっている。詩織姉と彩子姉だ。
「「「真開けてよー」」」
三人纏めて同じことを喋ると流石にかなり響いてくる。だがしかし真はそれでも開ける事はなく、ベットの上で何時ものように次の人物が来るのを待っている。
扉の外で騒いでいる姉達に優しそうであるが恐ろしさも篭っている声がかけられる。
「何時も何時も言ってるけどまだわからないの。いい加減にしなさい。真の友達が見ているのに恥ずかしいとは思わないの」
その言葉を姉達に言っているのは真琴である。
真がこの家に住んでいるときに日常的に会ったパターンがこれであった。
姉達が騒ぎ、真琴に窘められ、そのまま帰っていく。これが本来のパターンであったのだが今日はどうやら違っているようであった。
「「「だって久しぶりに真が帰ってきたのに……」」」
何時もであったのであれば真琴の言葉に何も言うことはなくそのまま立ち去っていく姉達であったがどうやら今回は違うようである。
真琴のほうも何時もと違うことを感じたのであろう姉達にすぐには追い返すようなことはしないで訳を聞いていく。
「あなたたちの言いたいことはわかるけど今は我慢しなさい。蒼空ちゃんとレイヤちゃんが見ているんだから。それに真が今日すぐ帰るわけではないのだから、ね?」
「「「……はい」」」
真琴の言葉に説得されたのか扉の前から去っていく姉達三人。
部屋の中に声が全部聞こえてたので真としては少し複雑な気持ちになっていた。
久しぶりに帰ってきて長く会っていなかったのだから気持ちはわからないのではないが逆に会えないフラストレーションが溜まっておりどうなるか予測のつかない怖さもある。
そんな事を考えながらも真は部屋の鍵を開けるために扉に近づこうとするのだが扉の外より真琴に話しかけられる。
「開けなくていいわよ真。まずは蒼空ちゃんとレイヤちゃんの部屋の準備と案内しなければならないから。何かあったら呼ぶからそのまま部屋にいなさい」
「……わかった」
真はそう答えると部屋にあるベットに横になると携帯をいじりはじめるのであった。
真の返事を聞いた真琴は後ろに振り返るとそこにいる蒼空とレイヤの二人に話しかけた。
「ごめんなさいね。何か見苦しいものを見せちゃって。気にしないでね」
「気にしてないですからいいですよ。それに真からお姉さん達の事は聞いていたから……」
「あら、そうだったの? 真が……。」
レイヤの言葉に何か思うところがあるのか足を止めて考え込んでしまう真琴。
蒼空もレイヤの事を懐疑の目で見つめていた。
蒼空が見つめているのは訳がある。
それは真の姉達の事を聞いていたところにある。レイヤが真が何処まで聞いたかわからないが蒼空は真から聞いたのは姉が三人いるということだけでそれ以外の事は全く聞いていなかった。実際のところ姉達の状況を知っているのは慧、七海、それと平野先生ぐらいに限られ、詳細を知っているのは慧と平野先生ぐらいなのだ。七海は昔の事を軽く覚えているだけで詳しくは知らないのである。蒼空が教えたれていないことをレイヤが知っている。其の事が蒼空がレイヤに対して懐疑の目向ける訳だった。
まあ、本当のところレイヤは真から一切教えてもらったこと等はない。単純に神の力を行使して知ったに過ぎない事をとある理由から真から聞いたと言ったに過ぎなかった。
「……まあいいわ。二人共こっちに来てもらっていいかしら?」
考え込むのをやめた真琴はとりあえず当初の目的果たそうと少し歩くと二人を呼び寄せる。
真の隣にある部屋の扉の前まで来ると扉を開け、二人を中に促す。
「汚い部屋だけど我慢してね」
そこの部屋はどう見ても汚くはなくあからさまに来客用の客室にしか見えないようなところであった。
「いえ、ありがとうございます」
「そんな事ないですよ。使わせてもらいまーす」
「何かあったら呼びに来るからそれまでゆっくりしててね」
蒼空とレイヤの言葉を聞くと真琴は部屋から出て行った。
二人は部屋に自分の荷物を置くとそれぞれがくつろぐようにしているのであるが蒼空はレイヤから視線を送り続けたのであった。
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