第36話
真はレイヤの姿を見た瞬間先程のミスコンでの一幕を思い出しその場から逃げたしたかったがそれは叶うことは無かったようだ。
真の後ろを歩いていた真琴がレイヤの騒動に気がつき、気がつくといっても簡単にはわかってしまうぐらい注目を集めていたのだが……。レイヤの姿を確認した真琴がすぐに真の横まで急いで来て真に声をかける。
「ねえ真。あそこに居る娘を見て思い出したのだけどあの娘とはどういう関係なのかしら?」
真にしか聞こえなくらいの小声で話しかけてくる真琴。
小声で話しかけてきたのは真琴なり気遣いだったのかもしれないがその言葉を霧散させてしまうくらいの怒気をはらんだレイヤの言葉に辺りは包まれる。
レイヤが怒った理由は単純だ。正座で座らせている男が真のほうに視線を向けてしまい火に油を注いでしまったである。
真は男がこちらに視線を向けて顔を確認した瞬間レイヤが怒っている理由を覚ってしまった。
正座をさせられているのがレイヤの兄であるファンだったからだ。
しかし顔はどう見てもファンなのだが容姿の感じが時の狭間であったときとは幾分違って見えていた。
真がそんな事を考えている中二人のやり取り、主にレイヤが落ち着く様子は一向におとずれる感じはしてこない。
ファンは怒られているその間も真のほうからは視線を外さない、というかよく見れば助けを求めているようにも見える。
「いつまで他のほうに向いているの!! こっち向きなさいお兄ちゃん!!!!」
レイヤがいつまでもそっぽを向いているファンに堪忍袋の尾が切れたのであろう実力行使でレイヤのほうに向かせる。
まあ、単純に頭を掴み向かせただけなのだが……。
そしてそのまま周りの目など知ったことじゃないと十分ほどレイヤの説教は続くのであった。
レイヤの声が怒声が響いている中、真はどうしようかと思い悩んでいた。
流石に見た当初は呆気に取られていたのだが真琴に声をかけられた事を思い出しすぐさまこの場から離れたいと思っているのだがどうやらそれは現状無理のようで時はすでに遅かったのである。
なぜかというと両肩と左側に真琴が、右側に慧が掴んでおりどうにも逃げ出せない状況になってしまっているからだ。
尚且つ周りを取り囲む感じで蒼空、七海、梓の三人が居る。
肩を掴んでいるのが慧だけであったのなら強行突破も辞さなかったのだが流石に真琴に掴まれてしまうとどうすることもできない。
結局そのままレイヤの説教が終わるまでその場に居ることになってしまう。
十分ほどでどうやらレイヤの怒りも程ほどに落ち着いてきたようで声のトーンもかなり落ちてきている。
しかしまだ許したわけでは無いようで終わったことで立とうとしていたファンにまだ立っちゃ駄目とお達しをしていた。
そしてレイヤは真達のほう顔を向けるとそのまま歩み寄ってきた。
「何をやっているの真君?」
近づいてきての第一声がそれだった。周りに居るみんなからの注目を集めるのは間違いない一言だ。
まあ今の真の状況を見ればそう言いたくなるのもわからないではないだろう。
どう見ても護送されている囚人の用であるのは一目瞭然の感じであるのだから。
しかし真はレイヤの言葉に口に出して答えることはない。だんまりを決め込んでいる様に見えるが頭の中でレイヤに答えていた。
(何やってるじゃねーよ!! 何でお前は普通に近づいてきて普通に話しかけてきているんだよ。それにさっきの事といい、どう考えてもおかしいこと見てわからねーのか!?)
真の心の叫びを聞いたレイヤは真以外に視線を向ける。
全員が全員というわけではないが殆どが興味あるいは疑問、驚きといった視線をレイヤに送っている。一人だけは冷たい視線を送っているのだが。
どうやらそれを見てレイヤも少しは気がついたようだ。すぐに真に返してきた。
(……あれ? なんかまずかった?)
(まずかった? じゃねーだろ!!どう見てもまずいだろうが。どうしてくれるんだよこの状況をよー!!)
(………………よし。私に任せて)
すぐに嫌な予感がした真はレイヤを止めようとしたが時はすでに遅くレイヤは真との頭の中での会話を切るとすぐに話しかけてしまった。
「こんにちは。変な顔して私の事見てるけどどうしたの慧君?」
ツッコミどころ満載の話の振り方に真は首をがっくりと項垂れてしまう。
話しかけるのにもせめて順序立てして話してくれればいいものを何もかもをぶった切り唯一の知り合いである慧に話しかけるのはどうかと思うところである。
項垂れた首を上げ慧のほうを見てみるが、話しかけられた慧はキョトンとしている。それは当たり前の事であろう。
「……ああ」
話しかけられた慧はそれだけ答えるのが精一杯だった様だ。その後沈黙が流れてしまい気まずい空気があたりに流れる。
しかし、そこはこちらにも空気を読まない人間がいたのを忘れていた真。
気まずい空気など気にもせずレイヤに話しかける人物。
蒼空である。
蒼空はレイヤに近づいていきレイヤの目の前まで行く。
「真とはどういう関係?」
「ん?」
「真とはどういう関係なの?」
「真? 誰それ?」
あからさまと言うか呆れて何も言えなくなる様な惚け方に蒼空以外はそれなりの反応をしてしまう。
真は真で口には出さずに文句を言いまくっていた。
(お、お前は馬鹿じゃねーかー!! そんなの誰も信じるわけねーだろ。それに――)
まだまだ真の文句は続いているのだがレイヤはそれを返すことはない。
意識は目の前の蒼空に向けているからだ。
「さっき普通に真って呼んでいた。それに会場でも呼んでいた。ちゃんと素直に答えて」
睨みつけるような視線で真っ直ぐレイヤの顔を見つめる蒼空。レイヤもそれに応えるかのように蒼空の事をしっかり見つめ返しているが蒼空とは反対ににこやかに見つめている。
一時、蒼空とレイヤの見詰め合いは続くが先に視線をはずしたのはレイヤのほうだった。
そして、レイヤは何かを考え込むような仕草を見せる。
(あれー? 何か間違ったのかな。完璧に隠し通せたと思ったんだけどなー。これはどうしたらいいのかなー)
どうやらかなり頭のネジが外れているようである。そして、そのレイヤの考えを聞いていた者がいた。それは真であった。
自分の頭の中で考えているつもりだったのだがどうやら真と話をするときの感覚で考えてしまっていたようだ。
すぐさま真はレイヤを呼びかける。
(おい! 聞いているのか?)
(あれ? もしかして繋がってるの?)
真の声に意識を考えからそちらに傾けるレイヤ。
レイヤの声が返ってきたことにより文句を散々言ってやりたい気分だったのだがとりあえずこの場を切り抜けることに気持ちを傾ける真。
そして真はすぐにレイヤに頭の中で話しかける。
(繋がってるし、完璧でも何でもねーからな)
(あら、聞こえていたのね。まあいいわ。どうしたらいいかな真君?)
(……はあ。もうどうすることもできないから知り合いだったとか言っておいてくれ。後は俺のほうで何とかするから。ただし、くれぐれも余計なことは言うなよ!)
(わかったわ)
考える仕草から一変して蒼空に視線を向けなおすレイヤ。
そして、一瞬何かを言おうと口が開くが言葉は発せられず、もう一度考えるような仕草をしたと思うとすぐに話し始める。その顔はなかなかの笑顔であった。
「ごめんなさい」
第一声の言葉を言うとレイヤは大きく頭を下げる。そして頭を上げ続きを話し出すのだがそれは真にとっては害悪以外の何者でもない言葉であった。
「実は……隠していたんですけど真君と私は恋人同士なんです」
レイヤの言葉に全員の視線が真に集まる。
真は口をあけてぽかーんとしているだけであった。
そんな真を尻目に左側の方から真の体を大きく揺さぶりものすごい興奮した言葉で真琴が話しかけてきた。
「ちょっとどういうことなの真? 詳しく説明しなさい」
しかし真は答えない。いや答えることはできない。どう見ても真には魂というものが入っていないようなの状態であった。
体はもう真琴に揺さぶられるまま流れに身を任すような状態になっている。
あまりの真琴の揺さぶり方に反対側の肩をつかんでいた慧はとっくに真から手を離していた。
慧としては自身も真に問い詰めたい気持ちはありそうではあるが真琴を差し置いては聞くことはできない。
それは蒼空も、七海も、梓も同様であろう。
揺さぶれること一分程であっただろうか、流石に疲れてきたのか揺さぶるのは落ち着いてきた。
だが問い詰めるのは変わっていない。
少しずつではあるが真の方も生きる気力を取り戻してきたところにレイヤからの言葉で一旦は落ち着くことになる。
「あ、あの……。冗談なんで落ち着いてください……」
真琴の勢いがすごかったのであろうあのレイヤが遠慮がちに真琴に話しかける。
しかし、真琴の耳には届いていないようで未だに真を問い詰めている。
だが、レイヤ寄りの方に立っていた慧の耳にはしっかりと入っていたようで慧が真琴を止めることによりこの騒動は何とか鎮静化するのであった。
何とか真琴が納得したことにより今は予定通り全員でご飯を食べに来ている。
しかしそこにはいつもと違い真琴と他に一名一緒に連れてこられた人物、レイヤが居る。
その性かどうかはわからないが場の空気としては何時もと違い殺伐としている。
その中で和んでいるのは真琴とレイヤぐらいであり二人は食事しながら楽しそうに会話を楽しんでいる。
それ以外の五人はそれぞれに何かを言いたい感じなのだが真琴が居る性なのかレイヤが居る性なのかはわからないが特にこれといった会話の無く静かに食事をしている。
全員があらかた料理も食べ終わる頃には真琴とレイヤはすっかり仲良くなっていた。
二人はミスコンの事や真との関係など話をしているようで真は余計なことを言わないかとハラハラしながら聞き耳を立てて聞いていた。
因みに今の席順としては長方形のテーブルに左からレイヤ、真琴、真、慧が並んでおり反対側に七海、蒼空、梓の順で座っている。
そんな必死に聞き耳をて立てている真を睨むよう蒼空が見つめていた。
だが真はそれには気がつかず必死に聞き漏らしが無いようにしている。
そんな蒼空の様子を横で見ていた梓が蒼空に声をかける。
「そんな顔してどうしたの蒼空? 珍しく怒っているのがよくわかるんだけど……」
しかし、梓の言葉は聞こえているのだろうけど梓のほうには何も反応も示さず只管真を見つめ続ける蒼空。
梓はそれには溜息をつくことしかできずできず会話もそれ以上続くことは無かった。
向かいに座っていた慧にもその様子ははっきりと見えており同じく溜息をつくとこの場を少し打開しようと行動を起こす。
隣に座っている真に対して肘で体を強めに肘打ちをしたのだ。
流石にそれには真も多少は痛かったようで険しい顔で慧に怒ってきた。
「いきなり何するんだよ!」
「お前……正面向いてみろよ」
慧からやってきたにもかかわらず呆れたような顔つきで謝るのではなく正面を向けという慧を見て不思議に思った真は言われたとおり向けてみることにする。
真は正面を向くとそこには怒っている中にも悲しさを秘めている様子の蒼空が真の事を見つめいたのだ。
真は隣の会話に集中しすぎており今になってようやく自分の置かれている状況を瞬時に理解する。
そして、この状況をどうすればいいのか頭を悩ますことになるのであった。
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