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第34話

先週は大変申し訳ございませんでした。


 会場のライトが再度消され音楽のエンドロールが流れる。

 そして次の瞬間レーザー光線のようなもので煌びやかにステージ上に並んでいる出場者達を照らしていく。


 そして次々に出場者をスポットライトが順番に左から順番に照らし司会者が照らされた順に再度紹介をしていく。

 司会者の紹介にあわせ出場者達も一礼をしていく。

 スポットライトを浴びるたびにそれぞれが着ているウエディングドレスも煌びやかに光っている。


 その煌びやかに輝いている出場者達やその演出に目を奪われている人達は多数いたが真はそうではなかった一人だ。

 真の見つめる視線の先にいるのはレイヤ唯一人に絞られている。レイヤを見つめながら真を思考に意識の大部分を傾けていた。

 もちろん考えていることはレイヤの事、そしてファンの事である。

 ファンからある程度の情報をもらったことに対する整理と今後の事を考えているのだ。


 色々な事を考えていたのだがその考えている最中に隣の慧より声をかけられ真は考えを中断し意識を表に戻すとそのまま慧のほう向く。

 すると慧の隣、真にとっては慧の反対側の隣にいる蒼空がいつの間にか居なくなっておりこれまたいつの間にか近くにいた坂本さんと、関係者であろうスーツを着た男の人と少し離れたところで話していた。

 見た感じ関係者の人が蒼空に何かを頼んでいるようで頭を下げ必死に頑張っている。

 何を話しているのかは聞こえないが状況を見る限り何かトラブルがあったんだろうと思うが、蒼空は鉄の感情とでも言うのだろうかいつもの抑揚のない顔で関係者の話を聞いている。

 真はそれを見ていて苦笑いしかできなかった。


 少しの間話していたのだがどうやら関係者の男の人が喜んでいるようなのでトラブルは解決したのだろうと思っていた所、蒼空がこちらのほうに戻ってくるようで真と慧のところに歩いてくる。

 そのまま座るのかと思いきや二人の前に立つと


 「ちょっと行ってくる」


 それだけを言うと踵を返し関係者と坂本さんの後を付いていこうとする。

 すでに男の人と坂本さんはすでに出口の扉のほうまで歩いていっていた。

 流石に状況がよく飲み込めていない真と慧は蒼空の歩みを止めるため声をかける。声をかけたのは近くにいた慧の方だ。


 「ちょっと待って蒼空ちゃん。行ってくるって何処に行くの?」


 流石に何も説明もないまま行かれるのはどう考えてもわからない事だらけなのはもっともなことなので真は慧に激しく同意するのを覚えながらも慧と共に蒼空の方を見つめる。

 

 慧の聞かれたことに対して蒼空が答えようとしてたのかもしれないが、慧の質問に対して答えたのは扉の前まで行っていたのだがいつの間にか二人の近くまで来ていた坂本さんであった。


 「蒼空さんはこれから私と共にやることがありますので少しの間お借りしますわ」


 「……やること?」


 坂本さんの言葉にすぐに反応したのは真であった。


 「そうです。本当は私ともう一人の真由美さんが行う予定でしたが真由美さんが来れなくなってしまったので急遽蒼空さんが代役でやっていただくことになりましたの」


 「はあ……それで何をやるんですか?」


 「簡単に言うと引継ぎ式みたいなものですわ。正確には多少違いますが同じ事と言っても差し支え有りませんわ。これは伝統的に準ミスの二人がやることなんですが……真由美さんが体調を崩されましたので代わりと言ったら蒼空さんに失礼ですがやっていただくことになりました。特に蒼空さんが出ても問題はないとのことですので」


 「そういうことでしたか。わかりました」


 坂本さんの説明にようやく納得した真と慧は説明が終わって再度出口に向かう坂本さんとそれに付いていく蒼空を見送るとそのまま視線をステージに戻すことに。

 どうやらステージのほうではタイミングよく発表のほうに差し掛かる手前ぐらいであった。





 音楽がかかり会場に響き渡る。

 そしてステージには司会者のみにスポットライトが当たりそれ以外が再度暗くなる。

 音が鳴り止むと司会者がマイクと通して話し出す。


 「それではまず始めに今年度の準ミス双葉二名の発表からまいりたいと思います」


 その言葉を合図にドラムロールが鳴り出し出場者達を二つのスポットライトがそれぞれの端に居る出場者達を順に照らしていく。

 二往復ぐらいスポットライトが当たりドラムロールが鳴り止むと同時にスポットライトも消える。


 「それでは準ミスの二名を発表します。…………まず一人目は――」


 司会者の言葉と共にステージ上にいる出場者達の間に緊張の空気が流れる。

 そして、司会者からの口から齎された名前に七海と梓の名前ではなかった。一応レイヤでもなかった。

 司会者に名前を呼ばれた二人にはスポットライトが当たり、列から前に出てくるように促される。


 名前の呼ばれた二人は真と慧どちらも知らない名前であった。

 真としてはホッとしていたのだが慧はとても悔しそうである。


 ステージ上では準ミスに選ばれた二名はスポットライトを一身に浴び嬉しそうに涙を流している。

 そして司会者に前に出てくるように呼ばれるとそれぞれが嬉しさを一杯にコメントとこれから一年間の抱負を語っている。


 二人のコメントが終わったところで会場のライトが点きステージ脇から新たに二名登場してきた。

 蒼空と坂本さんだ。

 二人の手にはそれぞれ花束を持っており選ばれた二名に花束を渡し握手をしている。

 花束を準ミスに選ばれた二人に渡すと会場からは割れんばかりの拍手と歓声が響き渡る。

 その響きは数分間続き鳴り止むことはなさそうな感じではなかったのだがそこに会場に声が流れる。


 「皆様、静粛にお願いします」


 司会者が進行を進めるためであろう会場の人達に通達をする。

 その司会者の声が聞こえたのか会場はゆっくりとながらも静けさを取り戻していく。 

 静かになったところで司会者が続けて話し出す。


 「ありがとうございます。準ミスに選ばれたお二人、おめでとうございました。続きまして今年度のミス双葉の発表に参りたいと思います」


 司会者の言葉に静けさを取り戻していた会場は多少のざわつきが木霊すがそのまま進行するようだ。

 会場には再度音楽がかけられ準ミスが選ばれたときとは異なり、日本楽器の音あろうか豪華にかつ美しい音楽が会場に流れる。

 その音の終わりを迎えたと同時に司会者が話し出す。


 「今年度のミス双葉に選ばれたのは……」

 

 司会者の言葉の後会場の電気は再び消されドラムロールの音だけが会場に響き渡る。

 ドラムロールが一分ほど鳴り、音が鳴り止んだ瞬間司会者が発表をする。


 「本名・F・レイヤさんです」


 名前を呼ばれたレイヤには色が違う四本のスポットライトが照らし、着ていたウエディングドレスを鮮やかに照らす。

 そして名前を呼ばれた瞬間会場からは準ミスが選ばれたときとは比べ物にならないほどの歓声、拍手が響き渡る。


 あまりの五月蝿さに真は耳を塞ぎながらも選ばれたレイヤのほうを見ているのだが、どうやらレイヤはよくわかってないような感じでどちらかというと喜ぶというより戸惑っている様子であった。

 ミス双葉に選ばれることを夢見て応募して選ばれたはずで、準ミスに選ばれた二人とはギャップの違いに呆れながらも真は頭の中でレイヤに語りかけることにした。


 (何やってんだよお前は……)


 通じるかどうかもわからなかったが直感的につながると思ってレイヤに語りかけた真だったがその考えは正しかったようですぐにレイヤの声が頭に響いてきた。


 (何やってるって見ればわかるでしょ!! どうしたらいいのかわからないから困ってるんじゃない)


 レイヤの言葉に全身から力が抜け果てしないほどの脱力感に襲われ、盛大に溜息を漏らしてしまう。

 開いた口が塞がらないというか呆れてものが言えないというかどう対処していいのか一瞬真はわからなくなってしまった。


 真がそのようになってしまうのは仕方ないことであろう。

 普通はミスコンと呼ばれるもの、特に学校などで行われるものなどは得られるものは栄誉、もしくはステータス、それ以外にも履歴として役に立つこともあるものであるが基本的には選ばれたからと言っても何かしらの報酬があるわけではない(双葉大学では学校のPRの為の広告塔としての役割があるためお金の発生がある)けど、それにでて選ばれたいと思っている人間もいるわけで、そんな人間を押しのけ訳もわからず選ばれ、あまつさえ喜ぶではなくどうしていいかわからないなどありえないことであろう。


 まあ、一瞬戸惑いながらも後から喜びを爆発されることもあるがどうもレイヤは選ばれてから戸惑ったままで、司会者も会場の歓声や拍手の音に未だに話せずにいるからレイヤの言ってることは間違いはない。


 一分ほどたったが未だに鳴り止むことがない中、真は何とか正常な思考を取り戻すと再度レイヤに語りかける。

 とりあえず真は根本的なことをレイヤに聞いてみることにした。


 (どうしていいかわからないって、じゃあなんでミスコンなんかにでてるんだよ?)


 もっともな真の質問に返ってきた答えは真を更に脱力させるもの、及び沸点をあげるものであった。


 (なんとなく面白そうだったから)


 (……はっ!? 何だって?)


 (だ、か、ら、面白そうだったからって言ってるでしょう)


 (お前ふざけたこと言ってんじゃねえよー!! 馬鹿じゃないのか!!!)


 一瞬の脱力と一気に上がった怒りのメーターに真は声に出して叫びそうになったが何とかこらえたが、頭には若干の青筋が浮かび上がっていた。

 まあ今声を出したとしても聞こえるのは近くに居る慧や関係者ぐらいな者であろう。


 (冗談よ、冗談。本当に真君はからかいがいがあるねー。そんなに怒らなくてもいいじゃない。本当は君の隣に居る男の子から出てみないかって誘われたのが切欠だよ)


 (…………………………………………)


 (ちょっとー真君ーどうしたのー?)


 衝撃の一言に真は一瞬時が止まってしまう。そしてレイヤの言葉は届いていないようで真はゆっくりと隣に座っている慧の顔を確認する。

 どうやら慧は真の様子など気がついてはいないようでまっすぐステージのほうを見ている。

 慧を確認した後またもやゆっくりと元の位置まで顔を戻しすぐさまレイヤに問いかける。


 (今度も冗談なんだろ?)


 (今度は違うよー。本当の事だよ)


 (何でそういうことになったんだよ!?)


 (実はね……あっ! なんか話しかけてくる人がいるみたいだから今度ねー)


 (おい!! ちょっと待て)


 しかし、何度も頭の中で呼びかけてもレイヤは答えることは無かった。その意識をステージに向けるとどうやら歓声や拍手は収まってきており司会者がレイヤに傍に近づいていく。

 

 「おめでとうございます、レイヤさん。……おや? どうしましたか?」


 司会者もレイヤの様子に気がついたようでレイヤに聞いていた。レイヤも今の現状をそのまま話す事にしたようだ。


 「ビックリしちゃってどうしていいのかわからないの」


 裏事情まで知っている真は頭を抱えたくなったが司会者は違うほうに捉えたようだ。


 「そうですよねー。驚かれるのは当然だと思いますよ。けど、あなたが今年度のミス双葉に選ばれたのは間違いないのですからもっと喜んでいいんですよ」


 「わかりました」


 司会者の言葉に戸惑いの表情から一変、弾けるばかりの笑顔で喜びを表している。

 それをみていた真はもう溜息しか出てこなかった。

 そのまま司会者はレイヤにマイクを向ける。


 「では、ミス双葉に選ばれた喜びを一言お願いします」


 そう言うと司会者はレイヤにマイクを渡す。レイヤがマイクを受け取ると同時に真には一瞬悪寒が走る。

 そして、その悪寒は正しいものであった。


 「やったよー真君ーーー」


 レイヤはマイクに向かってとんでもないことを言い出した。その言葉と同時に真に向かって大きく手を振っている。とびきりの笑顔で。その笑顔は会場を虜にするのと同時に真にも多大なる注目を集めることになるのであった。

 真にはその笑顔は全く違うものに見えたのは言うまでもないだろう。


 会場の視線を一心に集めていた真は俯き下を向いて何とか乗り切ろうとする。

 流石にそんな子供だましみたいなもので乗り切れるわけはないのだが真に援護射撃が齎せられる。


 「ありがとうございました。それでは選ばれましたレイヤさんにティアラの授与を行いたいと思います」


 司会者の言葉に会場のライトが点き会場ほぼ全ての視線は真からはずれステージ上のレイヤに向けられる。視線を向けていないのは隣に座っている慧、出場者の列に並んでる七海、梓、ステージ上で待機している蒼空、そしてステージ脇にいる人物が真のほうに視線を送っている。


 下を俯いている真に隣から声をかけられる。


 「なあ、真……「聞くな!!」」


 慧の聞きたいことはすぐに理解したが有無を言わさず黙らせる。

 そんなやり取りをしてる間にもステージ上ではティアラの授与が行われようとしている。


 「お、おいま「いいから何も聞くな!!」」


 再度問いかけた慧を黙らせようとしたのだが慧はそれでは黙らなかった。

 事もあろうか今度は真の肩を掴むとおもっいっきり揺すり再度真に声をかけてくる。


 「違うって真!! いいから前見ろって!!」


 慧の語調があまりにも焦りと驚きを含みそれなりに大きな声を出していたので今度は何も言わず渋々慧の言葉に従い顔を上げ前を見ることにした。


 顔を上げた真は本日最大の衝撃を受けることになる。

 見た瞬間に何が起こっているのか理解できず目を擦り再度見て見るが幻とかでは現実のようだ。


 ミス双葉に輝いたレイヤにティアラを持って行き授与しようとしているのは真の母親……。





 真琴であった。


お読みいただきありがとうございました。



当初の予定ではミスに七海、準ミスに梓ともう一人出場者という考えで進めていましたがそれでは面白くないと思いレイヤ、七海、梓の三人をそのままとも思いましたが更に考え直した結果がこの話になります。

これでよかったかどうかはわかりませんが楽しんでいただけたら幸いです。

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