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第32話

 扉を出てすぐに光に包まれた真は困惑していた。

 自分の周り一面何も無く、自分が立ってるのか浮いているのかさえ感覚としては無いし生物の気配さえ何もない。ただただ光の空間……どちらかと言うと光に包まれていると表現したほうがしっくりとくる。

 しかし何か懐かしさを覚える感覚があるのも事実だ。その感覚にしたがって頭の中で記憶を何度も何度も反芻させてみることに。

 数分であろうか、感覚に身を任せ思い出した結論はフレイヤに呼び寄せられていたときの感覚に似ていると言うことだ。

 しかし、以前に導いたフレイヤは現在……、今この場にいる自分の時間の流れと現実の世界の時間の流れが同じとは確証はないものの、扉から出る前にステージにはフレイヤ、いやレイヤが居たのは間違いがない。

 だが思っている常識が通用するほど簡単な世界でもないであろう。

 だったら別の誰かが……。

 

 色々な事を頭の中で巡らしながら何かが起こるのか身構えながらしばし時を待つことにした真。

 そしてそれは唐突にやってきた。


 「君は色々と賢いのだな」


 不意に真の後ろから声をかけられすぐに真は声のしたほうに振り向く。

 そこに先程辺りを見回したときには無かった背もたれの無い木製の丸い椅子。そしてそこには見た感じの第一印象が若そうな男が椅子に座り足を組んで佇んでいた。

 頭には月桂樹の冠のようなものを付け、白い一枚物の布に覆われておりよくギリシャ神話とかで出てくるような神のイメージそのまんまの格好である。


 真も流石になんとなく予想はしていたのでたいした驚きは無くそのままジロジロと舐め回すように男の全身を見ていく。

 パッと身では若そうな感じもしたがよく見るとそれなりに肌には張りがあるが瑞々しい感じは受けず、腕も筋肉隆々では無く頼りなさそうで女の腕と言われたも否定できないほどであった。

 顔のほうも特に目立つような特徴も無く可も無く不可も無くといったところであろうか。

 

 ある程度の観察を終えようとしていたところに目の前で椅子に座っていた男が急に立ち上がる。

 その事にすぐに真は警戒態勢を取るのだが、その後すぐに更なる緊張と驚愕が訪れる。

 男は立ち上がるとすぐに姿を消したのだ。

 

 「これでも私は結構強いのだよ」


 消えたと思った瞬間にまたもや後ろから声をかけられ距離を取り振り向こうとしたのが、声をかけられると同時に両肩を手で掴まれており離れることはおろか振り向くことさえ許されなかった。

 そして力を入れようにも入らずむしろ逆に抜けていくような感じでもある。

 何度も掴まれた手から向けだそうと試みるがどうすることもできないことを覚った真は力を入れるのを止め脱力することにした。

 力を緩めた瞬間肩から手がどかれ拘束から開放される。そのままゆっくりと後ろを振り向くと何も無かったかのように男はまたもや椅子に座りなおしており先程と全く変わらない様子にコピーしたものを見ているようであった。


 真は男と目が合うと何かの説明でもあるのかと思い待っていたのだが待てども待てども男は何も話そうとはせず唯ひたすらに真のほうを向いているだけだ。

 

 待つこと二分程。


 流石に真もこのままじゃ埒が明かないと思いこちらから話しかけようと口を開きかけた時、唐突に男のほうから話しかけてきたのである。


 「君はなかなか強いな、さすが我が妹が選んだだけはあるな」


 開きかけた口がそのままの状態になってしまい言葉の行き場をなくしてしまう真。

 どうしていいかと思ったのも一瞬、男が話した言葉にすぐに頭を切り替え男の言葉を再度頭の中で繰り返す。


 (我が妹が選んだ? ……やっぱりこの男は……)


 「頭の回転もなかなか速いしこちらとしては助かる限りだな」


 感心した様子で真の事を見る男。言葉には出さず考えている事に対して男の方が言葉を発してくる。前にも同じような感覚があったことから半信半疑ながらもなんとなく確信する。

 そして真は話すのよりも考えていることに対して答えてもらうことが早いと思い頭の中で質問を投げかけてみる事にした。

 

 真が考えたとおり目の前の男は真の思ったこと、考えたことに対して言葉を紡いでいく。


 (あなたの名前は?)


 「私の名前はファン」


 (あなたは何者?)


 「私は神の一人」


 (レイヤ……フレイヤとの関係は?)


 「フレイヤは我が妹」


 ――次々と質問を思ってはそれに答えていくファン。質問は多岐に亘りそれにより色々な事を教えて貰う事に。

 その結果多くの事を教えてもらった。フレイヤの時とは違いかなり親切な神のようで真にとって大きな収穫となった。


 まず、今いる空間についてだがどうやらファンやフレイヤの力で作り出した時の狭間と呼ばれる空間とのことだ。この場所は神なら誰でも作れるらしく別に招く人間が意識を失っていようが意識があろうが関係はないらしい。決定権は創った神にあるらしく出入りも創った者次第との事。そしてその場所は創った者の万能な空間らしく先程ファンが座っていた椅子も創造するだけで出てくるようで目の前で出したり消したりをやってもらった。

 ただしこれにも多少の条件があり有機物は創造出来ないらしく、できるのは無機物に限るらしい。有機物を創造すると何か神の戒律に触れるらしく場合によっては厳しく罰せられとの事だ。

 そして、この場所が時の狭間と呼ばれる様にこの場所は時間の概念が無く止まっているそうで、真自身も肉体がここに来ているのではなく意識と自分を象る姿が具現化してあるだけでそのまま来ているとは違うらしい。


 また、ファンはフレイヤと違う力があるらしく、神々にそれぞれに特有の力があるらしくフレイヤから真に授けられた眼の力もそれに当たるらしい。

 そしてファンの力は見た目からは想像もつかないが戦神らしく特に力が凄まじいらしい。

 詳しく聞いてみたところ肉体のスペックとしては人間と神は殆ど変わらないらしく違いといえば寿命くらいしか違いがないらしい。

 早い話が今この場で真とファンが特殊な力を抜きにしてガチンコの殴り合いをしようものなら勝利は確実に真のものになる。

 まあ、神とは肉体の力より特殊な力がそれを上回るものが殆どらしいのでそんなことはすることはないのだが。

 先程の真を抑えていたのも特殊な力の一部らしいのだが詳しくは教えてもらえなかった。


 それ以外にも細かいことなど教えてもらったのだが真の選ばれた理由などそこらへんのところはフレイヤしか知らないらしく本人に聞くしかないとのことだ。

 一番最後に真が聞いたことはなぜファンが真をこの場に呼んだのかということである。

  流石にこの質問をするときは言葉に出して質問をすることにした。


 「何で俺をここに呼んだんだ? そもそも俺をここに呼んだことに対する理由を教えてくれないか」


 「君を呼んだ理由か…………」


 椅子に座り考え込むファン。

 なんか見た感じどうして呼んだのか理由がなさそうで真は不安になりながらもファンが教えてくれるのを待つことにする。

 

 「……………………」


 「……………………」


 しかし、考え込んだまま微動だにしなくなったファンを待てども待てども教えてくれる様子はない。

 どうしてよいか真自身も困り果てていた。

 

 「……………………」


 「……………………」


 更に待つこと数分。

 ようやくファンが喋り出した。


 「……理由ねー……」


 話したのは良かったのだがどうやらまだのようであった。

 これ以上待っても出てこなさそうだったので真のほうから断りを入れようかと思ったところでファンがようやく、本当にようやく語り出した……のだがどうも様子がおかしくなっていた。


 「……グスッ、……グスッ、だってさ可愛いく愛しいフレイヤが人間の世界に行くって言うんだよ。それもすぐに帰ってこないで当分は向こうにいるって言われたらそりゃあお兄ちゃんとしては心配で心配で。……グスッ、最初はすぐに帰ってくるものだと思っていたから気にはしてなかったけど後から聞いたらすぐには帰らないって言われたから追いかけていこうとしたら、来たら嫌いになっちゃうとか言われてその時は我慢したんだけどやっぱり居ても立ってもいられなくてこうやって来てしまったんだよ。けど、……グスッ、きたのはいいけどどうしようか考えた末君に会って少しでもフレイヤの手伝いができればフレイヤがすぐに帰ってくると思って君に来て貰ったというわけなんだよ。という訳だから君はすぐにでもフレイヤが提示した条件をクリアしてくれたまえ、僕の為に!!」


 完全にキャラが百八十度変わっていた。

 最初の印象はクールなイメージだったのが今では完全にドン引きレベルまでイメージが塗り変わってしまっている。

 いきなり泣きながら話しだし、終いには自分でお兄ちゃんとか言ってるし完全にアレを疑うレベルである。


 「…………はあ」


 (これってどう見てもシスコンだろ。お兄ちゃんとかないわー)


 心の中で思っている事とは裏腹にとりあえず相槌をうつぐらいに留めておく真。

 もちろんファンが心を読めることなどすっかり忘れている。まあ、ここまで衝撃的なものを見てしまってはどうしようもないところではあるが。


 「はあ、じゃないよ! フレイヤがすぐに帰ってくるのは君に懸かっているんだからそんな気の抜けた返事じゃ困るんだよ。いいかいこれから君にはこうやってちょくちょく会いに来るからそのつもりでいてくれたまえよ」


 「…………はあ………はっ!? また来るの?」


 「そりゃあそうだろう僕の天使の為なら……これくらいの努力は惜しまないさ。だから君も頑張るんだよ。いいね?」


 「いや、もう来なくていいです」


 どんどんおかしくなっていくファンを見てこれ以上は関わりたくないと思った真は丁重にお断りすることにした。

 どう見ても僕の天使のところなど完全にトリップ状態に入っていたので懸命な判断だといえるのは間違いないだろう。

 だがどうやらフレイヤの事に関してはファンは妥協はする気はないようだ。


 「来なくていいとはどう言う事だい? 手助けをしてあげると言っているのに君は何が不満なんだ?」


 どう考えても手助けしてもらっても碌な事にはならないとはっきりわかる状況で首を縦になど振れるはずもない。

 どうやってうまく断ろうか色々考えていたのだがその全てがファンには読み取られていたようだ。


 「君もなかなか失礼なことを考えているようだね。だがこれは決定事項だから君も心を決めたまえ。

それではこれからよろしく頼むよ」


 ファンがそう言うと真の周りが目が眩むほどの光に包まれていく。

 あまりの眩しさに目を閉じてしまう。

 そして次に目を開けたときには扉を出たところに立っているのであった。


お読みいただきありがとうございます

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