第31話
レイヤがこれから登場すると言う司会者からの案内に真は心の中で身構えて出てくるのを待っている。
そんな真の様子など尻目に隣にいる慧はレイヤの出てくるのを心待ちにしているようであった。
「いやー出てくるの見逃さなくて良かったわー」
嬉しそうに独り言のように言っている。
その様子を見ていた真は気になっていた事をこのタイミングで聞こうと思ったのだが、慧の横にいる蒼空が先に慧に声をかける。
「あの娘とはどういう関係?」
蒼空が質問したタイミングでレイヤがステージに登場する。蒼空はレイヤを指差し慧に問いかける。
真と慧は声をかけた蒼空のほうへ視線を向けており、レイヤが登場したところを見逃してしまう。
拍手で迎えられるレイヤだったのだが出てきた途端どよめきが少し起こった後会場が静まりかえってしまう。
会場の異変を感じ取った真と慧はすぐにレイヤのほうに向ける。
蒼空は声をかける前と同じくステージのほうをずっと見ていた。
ステージにいたのはビキニを着て登場したレイヤの姿があった。その格好は男を悩殺するの相応しいすばらしいプロポーションときわどい部分が見えるか見えないかというところまで布地の面積をなくしたビキニであった。
それを見た真と慧は開いた口が塞がらないと言う言葉通りの状態に陥った。
特に真のほうはレイヤの格好を見た瞬間に何かを思い出す。
レイヤのその姿は初めて会った時の記憶をフラッシュバックさせるには十分なもので、真は瞬時に記憶を思い出し頭を抱えたい気持ちになった。
司会者もどうしたらいいか困惑しておりはじめは言葉をかけるのも躊躇していたのだが数秒の沈黙のあと我を取り戻した司会者がレイヤに近づいていく。
「あ、あのーレイヤさんその格好はいったい……」
「えっ! 特技を披露するって言うからそれなりの格好を調べてチョイスしたのだけど…………な、なんかまずかったりした?」
会場の空気を感じ取ったレイヤは司会者に逆に尋ねていた。
「その格好はちょっと……。と、とりあえずですね……ちなみにレイヤさんの特技はなんなんでしょうか?」
「特技? 特技はこれよ!!」
自慢げにたわわに実った胸を大きくはり手を前に出すと指を鳴らす。俗に言う指パッチンを司会者の目の前で行う。そして手のひらを広げると……。
広げられた手、レイヤの手のひらの上には赤いバラの花が乗せられていた。
会場の人達はそれを見た瞬間どよめきが起こる。
出てきたバラの花を司会者の人に手渡すレイヤ。呆気にとられていた司会者も花をもらったことで我を取り戻しレイヤに再度問いかける。
「これはもしかしてマジックと言うことでよろしいんでしょうか?」
「うーん……正確には違うけどそれでいいよ」
「そうですか。けど……なんでそんな格好をしてるんですか?」
司会者は会場にいる誰しもが思っていることを質問してみせた。会場にいる人達はみな司会者に対して惜しみない拍手を心の中で送っていることだろう。実際真もそのうちの一人だ。
「こういうことやるときは隠すような格好よりもさらけ出すような格好がいいって書いてあったから着てきたんだけど…………何か間違っていたかなー」
「ま、まあ間違っていないと思いますけど……流石にやりすぎなんじゃないですかね……」
「えっーそうかなー。いつもこんな感じだから気にしないんだけどなー」
「い、いつも……そうですか……」
司会者の視線がどう見ても下半身のほうを注目していたので流石にレイヤも悟ったようであったが、自分は間違っている……いや完全には間違ってるとはいえないが正解とも言いがたいのだがどうでもいいような感じである。
レイヤと司会者のやり取りに会場の所々から笑い声が起こる。
その笑い声なかに慧も含まれており、その声を聞いた真と蒼空は笑っている慧を二人揃って不思議そうにじっと見ていた。
「ど、どうしたんだ二人揃って俺なんか見て」
真と蒼空二人に見られていることに気がついたのか慧は二人の顔を交互に見ながら聞いてきた。
その様子に溜息をつき慧に話しかけようとした真だったが先に蒼空が話しかける。
「さっきの答え」
「えっ!? ああ……レイヤとの関係だっけ。唯の友達だよ。それ以上の事は何もないけどそういえば何でそんな質問したの蒼空ちゃん?」
「あんな格好で出てくるから気になっただけ」
「ま、まあ、そうだよね……。そっかそういうことね」
苦笑いを浮かべながら納得する慧。蒼空の言いたいことがよくわかった真は慧の見てないところで何度も頷く。
ステージ上では慧と蒼空のやり取りの間にどうするか決まったようで、どうやらレイヤは着替えるらしい。
レイヤが一時退出して戻ってくるとのことであったのだがしばらくして戻ってきたレイヤの格好は変わっていなかった。変わったところと言えば手には大きな白い布のようなものを携えてきている所だけだ。
着替えて戻ってくると説明していた手前レイヤの登場にかなり困惑してしまい焦ってレイヤの傍まで駆け寄り説得をしていた。
ステージ上で司会者とレイヤが話し合っているのであったが司会者もマイクの切って話していたため会場にいた殆どの人間には何を話しているのかは聞き取れていない。
数分ほど話していたのだが纏まりがついたようで司会者がマイクのスイッチを入れ会場にいる人達に説明を始める。
説明によるとどうやらレイヤはもってきた白い布を使ってこの場で着替えるとの説明がなされた。
そしてそのまま司会者の言葉と共に音楽が鳴り始めレイヤの披露が始まる。
レイヤはすぐにもってきた白い布を大きく広げ始め何もない唯の布であることを会場の人達にアピールをする。
司会者をつかって調べさせ何もないことを確認するとそのまま身体を白い布を被り自分の姿を布で隠してしまう。
そして三秒前からのカウントダウンをはじめ零になると蔽っていた布を取り外した。
するとそこにはビキニの姿から一変して赤いバラのデザインが入っているドレス姿に変身していたのである。
その変貌振りに会場からは歓声と大きな拍手が巻き起こる。
じっくり真剣に見ていた真もそれには驚きを隠せず周りの起こっている状況に視線を巡らせる。
何が起こったのかもわからず歓声が渦巻く中ただただ茫然しながらも回りをキョロキョロとしている所に真の頭の中に声が響く。
(どう? あたしの能力は!!)
頭に響いてきた言葉を聞いた真はすぐにステージ上にいるレイヤにまっすぐ視線を向ける。
レイヤのほうもどうやら真のほうを向いているように見える。
そして真はそのまま頭の中でレイヤに言葉を投げかけて見ることにした。
(どうって言われても……何をやったかわからないのに何を言えっていいのよ)
(寂しいこと言うのねー真君は。これは想像の能力よ。まあ、あたしは神なんだからこれくらいはなんてことなくできないといけないけどねー)
(それって単なるズルじゃねえかよ! それは特技とは言わねえんだよ)
(ひどーい。これは神にとっては特技なんだから間違ってないでしょうー)
真とレイヤが誰にも聞こえない頭の中でのやり取りをしていてレイヤにもう一度何かを言ってやろうとしたときに真の横から声がかけたれる。
「なあなあ、見たか真? すげーなー。あれってどうやったんだろうな」
「……あ、ああ…………そうだな…………」
(なによー無視しなくてもいいじゃないのー! いいよーだ)
慧に対して曖昧な返事をしている間にも真の頭のなかでレイヤからの声が響いてくる。
流石に横からと頭の中で声をかけられると思考が追いつかなくなる。
理不尽なレイヤの言いように何かしらの反論でもしてやろうかと思ったがすぐに面倒くさくなった真はそのままレイヤのほうは無視することに決めそのまま意識を横にいる慧のほうにむける。
「だよなー、真にもわかるわけないよなー。けど本当にすごいな。まさかあんなことできるなんて知らなかったわ」
慧をみるとどうやら興奮さめやらぬ状態でいつにもまして声が大きかった。
真は慧の言ってることに苦笑い――どうやってやったのかと言うところでレイヤから教えてもらってわかってしまっただけにそんな表情になりながらも慧が言ったことに対して聞いてみることにした。
「知らなかったって……おまえ彼女と友達なんじゃなかったのか?」
「友達って言っても知り合ったのごく最近なんだし、お前だって七海とか梓ちゃんの特技の事だって知らなかっただろう。それと一緒だって」
言われてみればそれもそうかと納得した真はそのまま視線を蒼空のほうに向けてみるとどうやら蒼空はレイヤのやったことに対して驚きのあまり固まっているようで気になった真はそのまま蒼空に声をかけてみる。
「どうしたの蒼空? なんか固まっているようだけど…………」
真に声で硬直していた身体が動く。そしてそのまま真のほうに向くと何かをいいたそうにはしているのだが言葉が出てこないようであった。
慧も一緒に蒼空の様子を見ていたので慧は真のほうに顔を向けると首をかしげてしまう。
それほどに蒼空の今の状況はわからなかった。
蒼空に対してもう一度声をあけようとしたところでステージのほうからはまたもや歓声が起こる。
その歓声にそれぞれのほうに顔を向けていた真、慧、蒼空の三人はステージのレイヤに向き直る。
そのではレイヤが再び衣装をチェンジしており次に着ていたのはバニースーツであった。
それには流石に真は呆れてしまい声に出さずつっこんでいた。
(なんて物をきてるんだよあいつは…………)
その真のつっこみにすぐに頭の中に返事がくる。
(えーっ!? よくないないこの格好?)
「よくねえよ!!!」
レイヤの反論に対して真はうっかり声に出してしまいハッと我に返り横にいる二人のほうを見ると、それを聞いた慧と蒼空が不思議そうに真の事を見ていた。
更に真は周りも見てみるとそれなりに声が大きかったのであろう近くにいる人間が何事かと真のほうを見ている。
その視線を感じて真は恥ずかしくなってしまい幾分か身体が縮んだようだった。
「急にどうしたんだ?」
当たり前の事だが慧から今の出来事に対してすぐに聞いてきた。
だが真は恥ずかしさのあまりすぐにはそれに答えることはできなかった。
一分ほどであろうか…………
気持ちを落ち着かせた真は慧が聞いてきたことに対して答えられる精神状態にまで多少落ち着きを取り戻す。
その間も慧と蒼空は何があったのか気になっているようで真が答えるのを待っている。
「な、何でもないから気にしないでくれ」
「そうか…………ならいいんだけど」
疑問の目を向けている慧であったがそれ以上の事を聞いてくることはなかった。
そのことに対して真は慧に心の中で感謝の言葉を述べておく。
慧と蒼空は真の言葉を聞くとステージのレイヤに目を向ける。
ステージでは未だに早着替えのマジック……真に言わせればチートズルじゃねえかよ思われるものが続けられている。
布を自分にかけるたびにめまぐるしく変わるレイヤの格好に会場からは変わるたびに拍手が巻き起こっている。
そしてそのたびに着ている服は男心をくすぐるような服ばかりのチョイスであった。
バニースーツの後はチャイナ服、セーラー服、メイド服などである。
そのうち真はそれを見るのが馬鹿らしくなったのと先程の恥ずかしさが消えなかったこともあり立ち上がると隣にいる慧に声をかける。
「ちょっと俺トイレに行ってくるわ」
「……わかった」
真の様子をみてすぐに真の状態を理解した慧はそれだけ言うとすぐにニヤッと笑い顔を浮かべながらステージに視線を戻す。
真も慧の思っていることを理解しそのまま出るために扉へ歩いていく。
そして扉に手をかけあけるとそのまま出て行き扉を閉めると同時に真の身体は光に包まれるのであった。
お読みいただきありがとうございます




