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第28話

遅くなりました。

遅くなった原因は活動報告のほうを見てください。

 ステージ上に出てきたのは真達が知らない女性からだ。

 それを見た三人はすぐに先程まで話していたことの続きを話し出す。

 

 基本、七海と梓を見に来たのが目的なのであってそれ以外に興味を示さなくなるのも納得なことであろう。

 ただし、真と慧にはレイヤの事も、特に真の方が気になっているのは忘れてはいけないことである。


 ステージ上では一人目の出場者が特技を披露し始めたのた。どうやら歌のようなのだが三人にとってはBGMに過ぎなかった。

 そしてそのまま話の続きに戻っていく。


 「なんか色々弾けるみたいだけど……そういえば蒼空ちゃんっていつからバイオリンは習っているの?」


 先程までは何が弾けるか、弾いてもらうときは何がいいとかの話をしていて根本的なことを聞いてなかったのを慧が思い出したかのように蒼空に聞いてきた。

 真もそれは聞いていなかった頭の中で思い返しそのまま慧の質問の答えを蒼空から話してくれるのを待つことにする。


 「気がついたらやっていたから小さい頃だと思う……」


 「やっぱりそうだろうねー」


 慧はある程度予想はしていたようで納得しているようだった。真もある程度の予想はしていたのでたいした驚きは無かった。

 しかし、もう少し詳しい年数なんかが出るかと思っていたところは若干違っているところでもある。

 そこの部分を更に聞こうかと思っていた真は聞いてみようと口を開こうとするがそれは不発に終わってしまう。


 「――ありがとうございましたー。続いての方は森本梓さんです。森本さんどうぞー」


 一人目が終わり次に出てくるのが梓だったからであった。

 流石に友達が出ているのを見ないわけにはいかない、と言うか先程のプログラムのとき殆ど見ていなかったという負い目もあり今度はしっかり見るためステージに視線を向ける。

 慧と蒼空も同じ思いのようで司会者の言葉の後すぐに視線をステージに向けていた。


 「本当に順番は決まってないんだね……」


 「なんだよ、蒼空ちゃんの言ったこと信じてなかったのかよ!」


 「見るまでは半信半疑だったよ」


 呟く程度の声で口から出た言葉は隣にいた慧にしっかり聞こえていたようで若干怒り気味な慧の言葉に真は素直に思っていたことを口にする。

 横目で慧と蒼空のほうに目を向けるが、慧はまだ何か言いたそうな顔をしていて真を見ており、蒼空は特に表情に変化も無く真の方を見ていた。

 何か言おうと口を開きかけた慧だったが思うところがあったのだろう溜息を吐くとステージに視線を戻す。それを見た真と蒼空は同じくステージにいる梓に視線を向ける。

 三人が視線をステージに戻すとちょうどこれから始まるジャストのタイミングであった。


 「森本さんはこれから何をしてくれるんでしょうか?」


 「私はバルーンアートが得意なのでこれからこちらの風船で色々な物や動物を作りたいと思います」


 「そうですかー。それは楽しみですね。それではお願いしまーす」


 司会者の言葉を合図にBGMがかかり梓は登場したときに一緒に持ってきたバックの中から白い風船と空気入れを取り出し膨らまし始めた。

 因みに、梓の格好は先程の浴衣姿とは打って変わって普段真達がよく目にする私服での登場である。


 風船は膨らましていくと次第に長細くなっていきバルーンアートでよく見慣れる形になっていく。風船を全部膨らまさず最後の方が空気の入っていない状態にすると梓は慣れた手付きで風船の口を結ぶと今度はどんどん風船を捻っていき丸い玉みたいな形をいくつも作っていく。

 真達が見ている遠目からでは細かい数とかはわからないが丸い玉を数個作ると気がつけば顔のようなものが出来上がっていた。

 そのまま梓は同じく丸い玉をいくつも作っていき次は前足のようなものが出来上がる。

 そして、同じ作業の三度目に突入する。作り方のわからない者が見れば傍目でも何をやっているかわからないが梓は慣れた手付きで後ろ足の部分を完成させる。


 見た目は完全に四足歩行の動物に見えるのだがまだ何かは真にはわかっていなかった。

 

 梓は最後に膨らましていないところの手前にある楕円形のの形のした空気の入っているところをいじり出すと風船の一番後ろのところに空気を移動させたようだ。

 そして、バックからサインペンを取り出すと顔らしき部分に何かを書いていく。


 「できました!!」


 「これは何ですか?」


 梓がそう宣言すると司会者が梓に近寄り何を作ったのか問いかける。

 余談ながら作成の時間は五分もかかってはいなかった。


 「これはプードルでーす」


 梓の手の上に乗っているのは遠目から見てプードルと言われると納得できる出来栄えであった。

 見せるのもそこそこに梓はバックから新たな風船、今度は色の付いたものを取り出し次のものを作り始める。





 「梓ちゃんあんな特技があったんだ……」


 「俺も初めて知ったわ……」

 

 梓がバルーンでプードルを作ってすぐにぼそりとステージを見ていた真から声がこぼれ、それに慧も反応した。どうやら慧も今まで見たことも聞いたこともなかったようだ。

 真は慧の方に顔を向けると蒼空も一緒に視界に入ってきたのだがどうやら蒼空は梓の特技の事は知っていたらしく真と慧と違い顔に驚きの色はない。蒼空の事だから表情に出ていないだけかもしれないが……。

 

 まあ、付き合いの長さでは全く違うのだから仕方ないと真は心の中で折り合いをつけたのだが実際のところは違っている。

 蒼空が梓からバルーンアートの事を知ったのはごく最近の事で、梓が蒼空より特技披露の場があると聞いたときに何をやったらいいのか梓が相談し目の前で見せてくれた一つで、その為知っていたのが本当のところなのだ。

 ただし、これは突然やり始めたものではなく以前から趣味の一つに梓が嗜んでいたという事は言っておこう。


 そんなこととは露知らず真と慧は蒼空にこのことを確認するべく聞いてみることにした。話しかけたのは隣にいて話しやすい慧だ。


 「蒼空ちゃんは梓のアレの事は知っていたの?」


 アレとはもちろんバルーンアートの事でその事を蒼空はしっかりと理解し慧の言葉に蒼空は頷いて肯定する。


 「知ってたんなら教えてくれたっていいのに。どうして教えてくれなかったのさ。流石に俺も、真もそうだと思うけど驚いたよ……」


 「梓に口止めされてたから……」


 慧のちょっとした非難の色が含まれているのを感じ取ったのか蒼空は少し申し訳なさそうに話さなかった理由を真と慧に教えてあげている。

 蒼空の表情を見て慧も言いすぎたと思ったのであろうすぐさま蒼空に対して焦りながら言い訳をはじめる。


 「い、いや、そんな口止めされてたんなら仕方ないよ……まあ教えてもらえれば嬉しかったかなーと思っただけだから………………な、なあ真?」


 余計な一言で更に蒼空の顔が暗くなったように感じた慧は横にいる真に同意を求めてきたのだが、真としては自分の方に振って欲しくなかったのに話を振ってきた慧には同意しないことにした。と言うか口止めされていたのであればどうしようもないと言うのが真の思うところであったので慧をきっちり否定してあげた。


 「俺は別に……普通に考えて口止めされていたのだったら言わないのが普通じゃないのか? 言いたくないことだって人にはあるんだから。俺だって……」


 「…………それもそうだな!」


 真の言葉の前半部分は蒼空の事に対してだが後半部分に関しては真自身の事も含むようにわざと慧にだけ聞こえるように声を小さくして言ったのを慧は理解してくれたようだった。

 しかし、真は慧の返事に違和感を覚える。

 自分の意見を否定され落ち込んで暗くなるのはわかるが慧の返事からは暗い感じの印象は受けなかった。どちらかというと納得はしつつそれでいて何かを思い出したかのような感じの答えに真は感じ取っていた。


 あながち真のその考えは間違っていなかったことを後に理解することになるのである。


 



 そんな話をしているうちにステージにいる梓は二つ目のバルーンアートを完成させていた。

 次に作られたのは司会者とのやり取りからバラの花であることがわかる。

 実際に見てみてバラの花といわれればそれらしく見えており、しっかりと花の部分と茎の部分が色の異なる風船、花の部分が赤い風船、茎の部分が緑の風船で作られているので違和感なんかも全く無かった。

 司会者とのやり取りもそこそこに再度バックから風船を取り出し次を作り始める。

 作る前に司会者のほうから時間のほうを言われており次に作るのが最後になりそうだ。


 三人は先程の話は慧の言葉を最後に話は終ったようで梓の最後に作るものに注目することにしたようだ。

 会場も最後に何を作るのか楽しみにしてるような空気が流れる。


 梓がバックから取り出した風船は青い風船と白い風船、それと小さな赤い風船を取り出し次々と膨らましていく。

 青い風船と白い風船をひねっては合わせひねってはあわせを繰り返していくが真にはまだ何を作っているのか理解しいない。チラッと横目で慧のほうを見るが慧もまだわかっていないようでブツブツと色々考えているようだった。


 梓の動きはかなり手馴れており次第に顔のようなものから出来上がっていく。次に出来上がってきたのは胴体のようでここまで来ると真にはなんとなく予想が付いてきた。

 横ではまだ慧はわかっていないようで顔を更に向け蒼空のほうを確認するが蒼空は何が出来上がるかわかっているようなわかっていないような顔だったのでそのままスルーをして梓のほうに向き直る。

 もう出来上がりは近いようで梓は最後の仕上げにかかっているようだ。手のような部分を少し残すと空気をしぼませその部分を切り取り結び、そして足の部分を完成させる。

 そこまで来ると流石に慧もわかったようで『あっ』という声をあげて納得顔になった。

 最後に赤い小さな風船を顔の部分に取り付けマジックで顔を書いていく。


 出来上がったのはドラ○もんだ。

 よく特徴を捉えており司会者のほうも確認しなくてもわかっているようでストレートに梓に確認をとっている。

 司会者の問いかけに肯定する言葉をマイクに向かって言うと会場からは拍手が巻き起こった。

 会場の拍手を一身に受けている梓はかなり照れくさそうで何度も会場の人たちのほうに向かってお辞儀をしている。


 そしてその拍手に見送られながら梓はステージから袖へ退場していく。この拍手の大きさは一人目のときより多いものであった。



 ◆



 梓はステージから控え室に戻る途中あまりの嬉しさから歩きながら笑みが零れる。梓自身もこれほどまでバルーンアートが受けるとは思っていなかったようで最後の拍手を聞いたときはどうしていいか戸惑ってしまった程だ。そんな精神状態で控え室までたどり着き中に入るととすぐに声をかけられた。声をかけすぐに近づいてきたのは七海だ。


 「お疲れ、梓。すごい拍手だったしあんなことできるなんて知らなかったよ!! 何であんなことできるの隠していたのさー教えてくれてもいいのにー」


 梓を出迎え声をかけた七海の声にはかなりの興奮の度合いが強く梓も少し引いている。気持ち的な意味でも物理的な意味でも。

 

 七海が控え室にいながら梓の様子を知っているのかは単純なことで、控え室にモニターがありそこにはステージの映像が流れているからである。

 その映像を控え室で全部見ていた七海は終わるや否や梓が戻ってくるのが待ち遠しい程興奮してしまったと言う訳だ。


 梓としては終わったばかりで緊張もありかなり疲れていたのだが目の前の七海を見て休めるのはもう少しかかるかなと思いそのまま七海と話そうと思ったのだが視線を控え室の中に向けると話そうとするのを後にしようと思い先にやるべきことをしようとする。


 「七海……とりあえずここ入口だから移動しない? ここにいたら邪魔になるしね」


 「あっ!? そうだね」


 梓の言葉に七海はすぐに控え室の入口から中に入っていく。

 それを見て梓は心の中でホッとするとそのまま七海の後についていく。


 七海は気がついてはいないようだったが早い話がかなり目立っていた。七海の興奮していた声は結構というかかなりの大きな声であったため他の出場者が二人に対して視線を向けていた。七海は他の出場者に対して背中を向けていたのだが梓はモロに視線を浴びる形になりそれにすぐに気がついた梓は移動を促した訳だった。


 控え室にある七海の場所まで移動し、そこにある椅子に座る梓と七海。興奮冷めやらぬ七海は座るや否やすぐに梓に話しかけてくる。


 「それにしてもさっきのはすごかったね! 拍手もすごかったし格好良かったよ梓」


 「……あ、ありがとう」


 顔をこれでもかと言うくらい近づけて話してくる七海に梓は返答に困りながらも褒められたことに対して何とかお礼を言う。


 「それであの風船のやってたのっていつからやり始めたの? 昔から? それとも最近?」


 「昔からだけど……」


 「それなら教えてくれたっていいのにー、何で教えてくれないのー?」


 「別に秘密にしてた訳じゃないのよ。機会が無かったから……」


 これは実際のところ本当の話で、普通に考えてバルーンアートなどすぐに披露できるものではないし、バルーンアートに必要な風船など常時持ち歩いているものではない。それに梓にとっては趣味の一つにしか過ぎないものであったので積極的に披露しようとは思ってなかった。


 「じゃあ、今度私にもやり方教えてね」


 よほどバルーンアートが気に入ったのか七海はとびきりの笑顔で梓にお願いをしてくる。梓としても断る理由は無かったので二つ返事で了承をする。

 その後も、梓は七海の質問攻めにあいゆっくりと休めたのは七海が出場の為に呼び出されるまで無かったのであった。





 (ふーん。なるほどね……)


 控え室にいる七海と梓を興味深く見つめている人物がいた。

 それは、レイヤである。レイヤは二人のやり取りを控え室に入ってきてからずっと見ていた。

 不自然にならないようごく自然な感じで……。


お読みいただきありがとうございました

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