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第27話

 音楽が変わり次にステージ上に出てきたのは七海が先であった。

 それを確認した三人の表情はそれぞれであった。


 真はやっぱりかとある程度予想していたような表情。慧は自分の予想に自信があったのだうかなりがっかりしている表情。蒼空は感情があまり表には出ていないのであるが予想の外した二人に向けてサムズアップしている。表情は真顔に近いのでわかりづらいのだが。

 慧は蒼空のそれにしっかり突っ込みを入れる。


 「リアクションと表情があってないよ、蒼空ちゃん」


 残念な顔で溜息一つで蒼空に言葉をかけ、真はその言葉に同意はしたものの横目で見ながら苦笑いをするしかなかった。

 苦笑いしながらものほとんどは蒼空には向いていなく向いているのはステージ上にいる七海に意識が向いている真。


 ステージにいる七海は音楽に合わせ会場にいる人達に自分の格好をアピールしている。

 真は七海の見たことのない姿に視線を外せずにいた。


 七海の姿は今まで見たことがないドレス姿である。

 胸元は大きく開いておりブルー一色のワンピースドレスのような感じで、普段の姿とはまるで正反対の格好であった。


 普段と違う感じに驚きをもって見ていたのだが横から不意に声をかけられ意識をそちらに向ける。


 「なんか真剣な目つきで七海の事見てるけど、どうしたんだー?」


 真は声のかけてきた慧のほうに顔を向けると慧はいやらしい笑顔でどう見てもからかう気満々の顔だ。

 その顔を見た瞬間真は隠すことなく嫌そうな顔で慧のほうに目を向けたのだが、慧の顔の向こうにある蒼空の顔が視界に入ってきたのだが、蒼空の顔を見た瞬間真は目を見開いてしまう。

 蒼空は先程とは違いとても悲しそう、真にも見てすぐにわかるぐらいの悲しげな顔で真のほうに顔をむけていた。


 「……そ、そんなことはない……ぞ」


 慧の言葉に答えるつもりは無かったのだが蒼空の顔を見てしまうと不意に言葉が口から出てしまっていた。

 しかし、素直に出てきたわけでは無く咄嗟に出て感じだったので多少どもってしまっている。

 

 「そうかー。それにしてはいつもとは違う感じだったように見えたけどな。どもっているのもなんか怪しいし、本当のところどうなんだ真?」


 どもってしまったのは七海を見ていたからではなく蒼空を見たからであったのだがそれも言い出せない状況であった。

 顔は慧のほうを向いてはいるものの真の視線は蒼空に釘付けなのだ。見ている間蒼空の表情は変わっておらず真はどうして言いか困惑しており慧の問いかけに答える余裕など無かった。


 「何も答えないところ見ると肯定と受け取ってもいいってことか真。どうなんだ、おい?」


 真が喋らないことをいい事に自分のいいように解釈を取ろうとする慧は真の状況には全く気がついている様子はない。

 真は慧が何かをいっているなぁぐらいしか聞こえておらず未だに蒼空と見詰め合っている。

 

 三人の意識はステージには向けられていなかった。



 ◆



 ステージいる七海は笑顔を振りまきながらも内心は不機嫌だった。


 (なんで三人とも私のほう見てないのよ。あの三人は何やっているのよ全くもう! それになんで真と蒼空は見詰め合っているのよ)


 そんな事を思うが会場に視線を戻すとすぐに七海の気持ちは切り替わる。


 (やばっ!? 詳しいことは後で聞くとして今はここに集中しなくちゃ)


 三人状況も気になると言えば嘘になるのだが今の自分のおかれている立場を理解しそれに全力でやることを再度認識する。

 気持ちの切り替えを済ませた七海はステージで今までに無く輝いているのであった。




 

 自分の出番が終わりステージ脇に下がっていく。

 ステージから下がったと同時に七海の身体には見えない重さや疲れなどがのしかかってきた。

 七海は緊張から開放されたことによりゆっくりそして大きく息を一つ吐く。

 

 「お疲れー」


 そんな七海に声がかけられる。かけてきたのは梓であった。

 梓の姿を見て幾分か気持ちが和らぐのを感じ取った。やはり知り合いそれも友達がいるのは心強いものだと今更ながら実感する七海。

 しかし、友達と言ってもここではライバルの一人には違いなかったが七海の心はそれほどの緊張で一杯だったのだろう。

 

 心に少し余裕ができた七海は梓に声をかける。


 「梓も頑張ってね」


 「うん」


 梓は緊張している欠片も感じさせない笑顔でステージへと向かっていく。

 七海は後姿を見送って七海も控え室へと向かうのであった。



 ◆



 真と慧、蒼空の三人は結局七海のところはほとんど見ずに終わってしまった。

 あの後は慧は蚊帳の外でひたすら会話も無く真と蒼空は見詰め合っていたのだった。


 流石に七海が終わる頃には慧も異変に気がついた様であったが、席も板ばさみであれば状況も板ばさみであった為会話などなく気まずい雰囲気が流れていた。

 この雰囲気をどうにかしようと慧は頭を悩ませていたのだが蒼空の一言がこの雰囲気を断ち切ってくれた。


 「賭けは私の勝ち。晩御飯だよ」


 先程の様子など微塵も感じさせない顔つきに真は違和感を覚えたのだが流石に先程までの雰囲気には耐えられなかったので蒼空に言葉に素直に乗っかることにした。それは慧も同様であった。


 「そ、そうだねー。い、いやー流石だね蒼空ちゃん……」


 慧の言葉に真も同意しているようで必死に何度も頷いている。

 そんな話をしていると音楽が切り替わり司会者が最後の一人の紹介をする。


 「それではラストの出場者の登場です――」


 司会者の言葉の後ステージ上に梓が現れる。現れた梓の格好を見て固まってしまうがその姿を見た瞬間ハッと思い出す真。

 

 「そういえばあの格好が去年の蒼空の格好だったの?」


 「そうだよ」


 真の疑問の言葉に蒼空はすぐに教えてくれる。

 しかし、真はステージに出てきた梓の姿に蒼空を重ねてみていた。


 梓の出てきた格好は時期としてはおかしいものではあったがインパクトとしては十分なのは納得していた。

 梓の着ている服は正真正銘の浴衣であった。

 紫陽花柄で薄いブルーが印象的で夏であれば爽やかなイメージがあるものの流石に今の時期には厳しいものがある感じは否めないところだ。

 まあ、それを差し引いたとしてもかなりのインパクトと可愛さは否定できないものがある。

 

 ステージ上で梓はとびきりの笑顔で登場し観客を魅了している。

 

 「あれがそうなんだー」


 真はステージにいる梓の格好を目に焼きつけると目を閉じて蒼空に重ね想像してみた。

 まあ、想像したところで蒼空にはほとんどのものは似合うのは間違いはなさそうだが。

 真がそんな事をしているのをほおって置かない男が声をかけてくる。


 「目を閉じてどうしたんだ真ー?」


 目を閉じている真は慧の姿は見えていないが声の感じからどんな顔をして聞いているのか想像できた。

 その為、真は慧の質問には答える気は無くそのまま目を閉じて無視を決め込む。

 慧のほうもからかう気が満々だったのが真の反応をみて諦めることにしたようだ、そのまま蒼空のほうに会話をふってしまう。


 慧から自分の興味がなくなったのを感じた真は心の中で安堵の溜息をつく。そして、意識をすぐに先程の想像したことを思い出す。

 浴衣を着て梓のように出てくるところまでは想像できるが、梓のように笑顔の様子は想像できなかった。その様子を考え出し目を閉じながらも口元はにやけて歪んでしまう。


 「何思い出し笑いみたいに笑っているんだよ気持ち悪いな」


 「べ、別にいいだろ!! 何を思って笑ってもいいだろう」


 慧の言葉に真は目を開きすぐさま反論をする。

 しかし、すぐに真は言葉がつまってしまうことになる。


 「何を思っていたの?」


 更に慧に何か言ってやろうと思っていたところに蒼空から思いがけない一言が真に投げかけられた。

 真の頭の中は考えが纏まらずぐるぐると回っていて言葉が出てこないでいる。

 二人の様子を間に挟まれている慧が見逃すはずは無かった。


 「で。何を思っていたんだ真?」


 「い、いや……そ、それは……」


 慧の顔に対して反論もしくは怒りたいのはやまやまだったのだが慧の後ろには蒼空が真を見つめ真の答えを待っている。

 その為言葉をうまく出せないでいたのだがなんとか答えずにすむことになる。


 「ありがとうございました。これで全出場者の――」


 司会者の言葉に真はステージに顔を向けるとすでに梓はステージからいなくなっており司会者が次のプログラムの話をしているところであった。

 それを見た瞬間慧が頭を抱え若干青ざめているようにも見える。


 「どうしたんだ慧?」


 「……いや、なんでもない」

 

 「……そうか」


 なんか気になるのだが状況的に答えなくてすみそうな感じに真は胸をなでおろし、顔をそのままステージに向ける真。

 慧の状況が蒼空も気になるのか慧に様子を伺っていた。それも一瞬ですぐに真のほうに視線をむけるのだがすでに真はステージに向いており蒼空は答えを聞けなかったことに少しムッとした顔で真を見るのだが真が蒼空のほうに振り向くことは無かった。





 司会者が次のプログラムの話をステージ上で観客に説明をしている。

 説明によると次は出演者それぞれが自分の一芸もしくは演技をするとのことだ。

 

 説明を終えるとステージは次の準備に取り掛かり始める。

 準備を待っている間三人は去年のミスコンの話や今回の話などで盛り上がりを見せていた。


 「それで蒼空は去年何をやったの?」


 「バイオリンを弾いた」


 「えっ!? そうなの?」


 蒼空の意外な特技を知って真は驚きを隠せないでいた。

 それもそのはず。このことは真にとっては初耳だったからだ。


 「すごかったんだぜ、去年のミスコンの蒼空ちゃん。バイオリンで……なんていったっけ蒼空ちゃんあの曲?」


 「……G線上のアリア」


 「そうそう。それそれ! それを弾いて終わった後なんてみんな総立ちだったんだぜ。いやー一年前だけどすぐに思い浮かべられるわ」


 慧はかなり興奮気味に真に去年の蒼空のすごさを語ってくる。

 ここまで熱く語ってくる慧を真は多少引き気味だったのだがしっかりと耳を傾けている。 

 蒼空のほうに目を向けてみると幾分か恥ずかしそうにもしているように見えていた。


 「そんなにすごかったんだ……。見てみたかったな……」


 「いいよ」


 「えっ!?」


 「聞きたいなら今度弾く」


 「いいの? 聞いてみたい!!」


 真の言葉に頷いて約束をしてくれた。真はものすごく嬉しそうだ。


 「俺も聞いてみたいな! いい蒼空ちゃん?」


 慧も聞きたいようでかなりの食いつきだ。


 「いいよ」


 蒼空の返事でこの後少しの間バイオリンについて長く語ることになるのであった。


お読みいただきありがとうございます。


話の区切りどころがうまくいかずいつもより短くなってしまった(>_<)

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