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第26話

 真は目の前に映っている光景に言葉を失っていた。

 再度完全に眼鏡を外してみるわけにはいかないが確認せずにはいられない。

 鼻のところにある眼鏡の支えられている部分を少し下にずらし上目ずかいでステージ上のレイヤを見てみると先程の光景は間違っていなかった。

 眼鏡を通してみるとレイヤ、眼鏡を通さないで見るとフレイヤであった。


 しかし、真は違って見れることにも驚いてしまったのだがそれ以上に驚いているのは服が変わって見れるところに驚いていた。

 レイヤの状態では見え麗しい格好でミスコンに出るような相応しい格好だが、フレイヤのほうだとよく神様のイメージとかに出てくるような白い布を巻きつけたような格好に変わるのだ。

 

 (何で服装まで変わるんだ?)


 もっともな疑問を思いつつも真はステージ上を見続ける。

 何度も眼鏡越しや上目ずかいで見ることを何度も繰り返し繰り返し見る。


 何度も見ているとそれ以外にも所々に違いが見えてきた。

 顔のほうも眼鏡越しで見ると若々しく大学生より若いといわれても不思議ではないくらいな感じで見えるのだが、眼鏡を外すと初めて見たとき思っていたような三十路にはいっていないが若々しさはないのがしっかりわかる。


 そんな失礼なことを考えているとまたもや頭の中に声が響いてくる。


 「(そのデリカシーのない思い。傷つくなー)」


 その声に真の中にある考えは一瞬にして吹き飛びしっかり眼鏡をかけなおすとステージ上に視線をむける。

 

 「――皆さん、よろしくお願いしまーす。それでは出場者の皆さんは一度お下がりいただきまーす」


 ちょうど司会者の説明が終わったところらしく出場者はそれぞれの準備があるようでステージの袖のほうへ歩いていく。

 レイヤは一番最後だったのだが、下がる途中こちらのほうに顔を向けたと思ったらウインクをして袖へと消えていったのだった。





 

 レイヤがいなくなるのを確認すると真は椅子の背もたれに大きく身体をうずめる。以外のほか前傾姿勢になっていたようだ。

 真のその様子を隣に座っている慧が見逃すはずも無く、すぐに声をかけてきた。


 「レイヤ出てきてからなんかすごい前傾姿勢で食い入るように見ていたけどなんかあったのか?」


 「いや、別になんでもないよ」


 「…………そうか」


 真は内心そんなに前傾姿勢だったのかと思い焦りを覚えたのだがそんなことなどおくびも見せずに慧の質問に淡々と答える。

 慧のほうも一瞬怪しむような感じで真を観ていたが、真の反応を見て諦めるとそのまま何も言わず視線をステージ上にむける。


 真も慧にならいステージ上に視線を戻そうとしたのだが……慧の向こう側から蒼空が真のほうを見ており、それに気がついた真は蒼空と見詰め合う形になってしまう。

 蒼空の目は悲しそうで声をかけずにはいられなかった。


 「ど、どうしたの蒼空?」


 真の言葉に慧も蒼空のほうに顔を向けるが蒼空は何も言わずにそのままステージ上に顔を背けてしまった。

 真と慧はお互い首をかしげ蒼空を見ていたのだが何も語ってくれることは無かった。


 どうしていいかわからず困惑しているところに会場のスピーカーから司会者の声が聞こえてくる。

 どうやら出場者が着替えて出てくるらしいので蒼空の事は気になるが意識をステージに向ける二人。


 会場の照明がおとされ暗闇に包まれる。

 音楽が鳴り始め、ステージ中央にいつの間にか設置されているスクリーンに映像が映る。

 大学のミスコンということもありこれらの音楽や映像などはそれぞれの学科の有志による作品になっている。

 実際のところ有志によると言われているが実は夏休み前の成績優秀者が作るという暗黙の了解になっており、多少(学生にしてみれば多少ではないのだが)ではあるが報酬も支払われることになっている。

 それに、会場にはそちら方面の関係者も来場しており就職などにつながる可能性もあるので生半可な作品など出てこないのが実情である。


 閑話休題


 三分ほどオープニングの映像が流れた後音楽が変わる。

 そして、映像が切り替わりスクリーンには出場者の映像が流れており、その後司会者から紹介があり一人目が出てきた。映像が流れている間それぞれの個性あふれる服装でファッションショーの様に順に登場し、最初の審査員にむけてのアピールタイムとのことだ。


 真は司会者の説明を詳しく聞いていなかったのだが横にいる慧が見ながら説明してくれた。

 二回目とあって説明の所々にちょっとした豆知識なんかも入れながら話しているので初めての真にとってはありがたい限りだった。

 

 「そういえば去年のミスコンで蒼空ちゃんが着ていた服ってあれ自分のなの? かなり蒼空ちゃんにはなかなかない服だったけど……」


 「去年のは梓から借りた服。選んだのも梓」


 「そうだったんだ!? てっきり蒼空ちゃんのものだと思っていたよ!」


 「違うし、サイズも合ってなかったから……特に胸のところとか」


 「そ、そうだったんだ……」


 二人の話からどんな服を着ていたか想像できない真は聞いてみたい衝動にとらわれたが蒼空の顔を見ると思い出したくないという感じがまざまざとあふれ出ており聞くに聞けなかった。

 しかし、そのまま慧が話の流れを真のほうに持ってきた。というかこれ以上は突っ込めなかったのが本音であろう。


 「どうな服着てたか気になるか真?」


 「ま、まあ、そりゃあね」


 そう答えながらも真は内心びくびくしながら蒼空のほうにチラッと視線をむけると先程よりなんとなくであるが雰囲気が柔らかくなっているように見えた。

 それを見た真は内心安心をを覚え、素直な気持ちで慧から聞いてみることにした。


 「蒼空ちゃんちょっと聞いていい?」


 「……何?」


 すぐに話してくれると思っていた真は話をおられてありありとがっかりとしてしまい、そのまま不満を慧にぶつけた。


 「お前なー。そのまま話すのが普通なんじゃないのか」


 「まあ、ちょっと待てって! それで蒼空ちゃん知ってたらでいいんだけどもしかして今回のミスコンの梓の格好ってまさか……」


 「去年、私が着ていた服で出るって言ってた。なんか験を担ぐって……」


 二人の話を話を聞いていた真は慧が何を言いたいのか理解した。

 

 「じゃあ梓の格好見ればわかるってことだな」


 「そういう事だ」


 自分の考えが合っていたことを慧から聞いた真は顔を横にいる二人のほうから前方にあるステージの方へと向き梓が出てくるのを待つことにする。

 ステージにはまだ一人目の女の子がおり二人目はもうすぐな感じではあるようだ。

 何番目に出てくるのかわからない真は事情の知っていそうな蒼空に聞いてみることにした。


 「ねえねえ蒼空。出てくる順番とか決まっているの?」


 「決まっていない。それぞれごとに裏でクジを引いて順番を決める」


 「へぇー、そうなんだ」


 慧も知らなかったようで素直に驚いている。


 これにはちゃんと理由があったりする。

 そんな深い理由ではないのだが出場者の緊張を和らげるのが大きな理由だ。

 何をするにしても始まりの最初と最後になるというのはどんな人でも大抵は緊張してしまい些細なミスなどはよく起こるものだ。それを少しでも平等にするため催しごとにクジを引き順番を決めるということなのである。

 その為、蒼空も梓がと七海がいつ出てくるのかはわからないのであった。

 真はわからないのでは仕方ないと諦め素直に出てくるのを待つことにした。

 

 一人目が裏へ下がり二人目が出てきた。そのときに音楽も変わるが梓でも七海でもなかった。

 二人目が裏へ下がり三人目が出てきた。司会者が出てくる出場者名前を紹介する。


 「三人目は『本名・F・レイヤ』さんです」


 それを聴いた瞬間真の体は硬直してしまう。

 しかし、視線は出てきたレイヤを追いかけている。そして出てきたレイヤをみて唖然としてしまう。

 

 レイヤの着ている服がなんと黒いレディーススーツで眼鏡をかけて、手には指示棒を持ちながら出てきたのだ。

 まあ、それだけなら個性的なファッションとして問題ないのだが二つ問題があった。

 一つは、下に着ているのはタイトスカートなのではあるが問題はその丈の長さが問題だった。

 長さが異様に短く屈もうものなら中のパンツなどすぐに見えてしまうのではないかという勢いの長さである。

 もう一つは、上に着ているスーツの中に着ているフリル付のピンクのブラウスのところだ。

 こちらは更におかしなことにボタンを留めていなかった。ボタンが上着もインナーも全開で空いているのだ。中には水着らしきものを着ているようで多少の安心はあったものの真としてはそれよりも見えている水着になんとなく見覚えがあったがあえて無視することに。

 顔の綺麗さも相俟って下手をしたらそのままアダルティなビデオに出ていてもおかしくはない様相であった。

 

 流石に真だけではなく会場全体が困惑の雰囲気をかもし出していた。

 そんな雰囲気など微塵も感じてる様子がないレイヤは時間の許す限り笑顔で会場全員に見せ付けているのであった。

 流石に最後のほうには会場の雰囲気を感じ取ったのか笑顔が多少引き攣っていたようだ。

 

 レイヤが裏へ下がったのを見届けた後すぐに真の横から笑いを我慢している声が聞こえてきたので見てみると慧が口を手で押さえ身体を前に抱え必死に笑いを押し殺していた。

 真としては笑いをこらえるほどの要素が無かったので呆れながらも慧が収まるまで待つことにした。まあ、逆隣にいる蒼空も呆れた様子で慧を見ていたのは言うまでもない。


 慧が収まったのはレイヤが下がり四人目が出てきて下がる頃であった。

 流石に状況がわからない真と蒼空は慧が前に身体を抱え込んでいたので視線がバッチリとあい、慧が笑っている間に目だけで会話をしていたので意思の疎通はできていた。

 慧が身体を戻し大きく深呼吸しているところに真が状況を聞いてみることに。


 「なあ慧。何でそんなに笑っていたのよ?」


 「ちょっ、ちょっと待て」


 まだ息が整っていないようで息がまだかなり荒かった。目には涙も見えている。

 待つこと一分ほど。

 ようやく慧が落ち着いたので再度真は聞いてみる。


 「それで、何でそんなに笑っていたんだ?」


 「実はさ、あの格好にしてみればって言ったの俺なんだよね」


 「はぁー!?」


 「いや、だから。あの格好で出てみればって言ったの俺なんだって」


 「…………」


 あまりのぶっ飛んだ答えに真は言葉が出てこなかった。蒼空も同様にかなり驚いているように見える。

 

 「まさか本当にやるとは思わなかったわー。流石に驚きを通り越して笑っちゃったよ。…………ん? どうしたんだ二人共」


 「……………………お前馬鹿じゃないのか」


 真と蒼空から辛らつな視線を送られ仕舞いには真からきつい言葉を投げかけられ流石に現状の空気を感じ取った慧。

 笑い顔から一変してしっかりと反省しているような顔で俯いてしまう。

 しかし、俯いたのも一瞬ですぐに慧は二人に対して言い訳を言い始める。


 「いや、だってレイヤが何着たらいいとか言ってくるからちょっとした悪ふざけで冗談言ってみただけなんだって! まさか本当に着てやるとは思わないだろうアレは!!」


 あまりの必死さに若干、いやかなり引いてしまっている真。蒼空は表情はあまり変わってはいないが同じようであろう。

 流石に慧の言い訳の声が大きかったのか周りにいる人達もこちらに注目しだしていた。

 

 周りの視線を感じ取った真はとりあえず慧を落ち着かせることに。


 「わかったから少し落ち着けよ慧」


 「あ、ああ…………」


 言い訳している間は周りが見えてなかったのであろう、真に促され少し落ち着きを取り戻した慧はようやく状況を理解したようだ。

 恥ずかしさもあってか俯き顔を隠すようにしている。


 慧が落ち着いてくれたことでホッと胸をなでおろし軽く一つ息を吐く。

 そうこうしているうちに四人目はとっくに終わっておりステージ上には五人目も終わりかけまできているようだった。


 慧が落ち着いたこともあり周りの視線はステージ上の出場者へと移っていった。

 晒されるような視線が無くなり真はこれ以上レイヤの事で慧に話しかけるのは止そうと心の中で決めステージに視線をむける。

 因みに慧は猛省しているのであろういつもより何割か小さく見える。


 その後、六人目、七人目、八人目と出てきたのだが未だに七海と梓は出てきてはいなかった。

 その間に慧も回復したようで三人ともしっかりとステージに視線をむけている。


 流石にここまで来るといやな予感しかしないのだが九人目が呼ばれ名前が違っていることを聞いて予感が的中したことを真は悟る。

 

 「あちゃー。なんという運の無さ…………」


 隣の席から慧が憐れみをかけるような感じで声を出して左手の掌を額に当てて俯いていた。

 梓と七海の順番は残りのラスト一つ前かラストしかない。


 「そうだな…………」


 慧の言葉に苦笑いを浮かべながら真は相槌をうつしかなかった。

 蒼空のほうを見ても同じような感じである。


 「どっちが先に出てくると思う?」


 不意に慧が言い出した。

 慧は真と蒼空二人に聞いているようで答えを待っている。

 真と蒼空の二人は一分ほど真剣に考え込んでしまう。なかなか言わない二人に対して焦れたかったのであろう、個別に聞いてきた。


 「真はどっちだと思う? そんな難しく考えなくてもいいからさー」


 難しく考えるのはやめて思ったとおりの事を答えることにした。

 

 「七海かな……」


 「蒼空ちゃんはどっちだと思う?」


 「梓」


 「おっ! いい感じで分かれたね。俺は七海かなー。そうだこのままじゃ面白みないから今日の晩御飯でも賭けないか?」


 「晩御飯なら俺は別にかまわないぞ」


 「私もいいよ」


 「よし。じゃあ決まりだね。どっちが出てくるか楽しみだなー」


 最後まで出てこない二人に対して急に始まった賭け事。

 そうこうしているうちに九人目が終わろうとしている。

お読みいただきありがとうございました

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