表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/127

第24話

 病院をでた真と慧はそのまま待ち合わせの場所に足を向ける。

 真の足取りは重たい。それに対して慧の足取りは見るからに軽そうだ。


 もちろんそれには訳がある。

 真は言わずもがななのだが慧は違うことで気分が高揚し楽しくなってきているのだ。

 歩きながらその様子を見ていた真は途中気になったので聞いてみたのだが聞けたのが平野先生のところで提案された案件での絡みでないことだけは教えてくれた。

 結局慧が何でなのかわからずそのまま待ち合わせ場所に歩いていく。


 待ち合わせの場所に近づくと真と慧は不思議な顔をしてお互い見つめ合っていた。

 なぜならそこにはなぜだかわからないが人だかりができており二人は待ち合わせの場所にたどり着けないでいた。

 人だかりのほとんどが女性ということもあり掻き分けていくこともできず二人はどうしていいか困っていた。


 どうすることもできず茫然と立っているだけの真だったが慧は何が起こっているのか確認するため真の傍から離れ周りの人達や人だかりにいる人などに聞いて回っていく。

 

 色々と聞き込みをしてきた慧が戻ってきて原因を教えてくれた。


 「なんかここでイベントやってるみたいでそれが原因みたいだな。まさかそんなのがあるとは知らなかったわ……」


 待ち合わせの場所にしていたのはちょっとした広場になっているところで噴水もあり普段は憩いの場になっているところである。

 わかりやすい場所ということで慧がチョイスしたのだったのだが、慧にとっても予想外だった様だ。

 実際のところ今やっているイベントはゲリラ開催であったので慧には全く非がないのは明らかであるのだが、こうなってしまっている以上はどうすることはできないのでどうするか二人で話し合う。


 「とりあえずどうする? こうも人が一杯だと蒼空ちゃん何処にいるか全くわからんな。探すにもお前はこの状況じゃどうすることもできないしな……」


 慧のいってる事は間違ってはいないのだが、簡単に言われると役立たずの烙印が押されたようで少しムッとした顔つきになるのだがその感情を押し込め蒼空を探すことに考えを傾ける真。

 この状況で真のできることは限られているがその中でもできることはないかと考えを巡らせる。

 思いついたのは蒼空に連絡をとり場所を確認するか、こちらに来てもらうしか思い浮かばなかった。けど、やれることはやろうとスマホを取り出し電話をかけてみるものの聞こえてくるのはコール音だけで蒼空の声は聞こえてこない。

 

 「どうだ?」


 慧の問いかけに否定の意味をこめて首を横に振る。

 それを見て慧は溜息を一つつくと人ごみのほうに目を向けるとそのまま歩いていく。そして、歩きながら真にどうするかを話してくる。


 「とりあえず俺は蒼空ちゃん探してみるからお前はここで待機していてくれ。なんかあったら連絡するから」


 「わかった」


 探しにいく慧を見送りながら自分の無力をかみ締める真。しかし現実的にそれしかできないのでその気持ちを受け止めつつもおとなしく待機してようと思う直す。


 待つこと数分。

 慧から電話で連絡が来た。

 

 「あのよ……蒼空ちゃん見つけたんだけど……」


 慧の第一声からなんとなく歯切れの悪さを感じる真。

 状況がわからない真は慧に聞いてみる。


 「見つけたけどどうしたんだ?」


 「それがな……このイベントで中心にいるのが蒼空ちゃんなんだわ」


 「はっ!?」


 「いや、だからイベントやってるの蒼空ちゃんなんだわ……」


 「…………」


 慧からもたらされた情報に何も言えなくなってしまう真。

 待ち合わせをしただけでそんな事前情報は蒼空からは聞かされていない。

 話を聞いた真も電話越しの慧も混乱の極みにあった。


 「と、とりあえず俺のほうで詳しいこと聞いてくるから真はもう少し待っててくれ」


 「……わかった」


 真の返事を聞いて慧は通話をきった。

 何もできずに残されてしまった真は茫然と立ち尽くして待っている以外なかった。


 



 待ち合わせの時間から三十分ぐらい経っただろうか、イベントも終わり人だかりも徐々に散っていきまばらになってきた。

 それにより人垣により全く見えなかったイベントの全貌が真にもようやく見えてきた。


 見えてきた光景……

 そこにはドレスのようなもので着飾った蒼空がたすきを着け今年のミスコンの宣伝をしているようであった。

 蒼空の周りには学校の関係者なのかスーツを着た人が何人か立っておりその中の一人になぜか慧もいた。一人だけスーツではなく私服なのでえらく目立っていたので見つけやすい。

 スーツの着た人間にお辞儀と握手をされていて蒼空の顔を見ると幾分疲れているようにも見える。

 

 真は蒼空のその姿を見て、改めてミスコンのグランプリに輝いていたんだなと実感する。

 イベントに出ていた蒼空は一通りの挨拶が終わると後ろに止めてある車に入っていった。

 蒼空がその場にいなくなったので慧は真の姿を見つけると真のほうに歩いてくる。


 「いやー。改めて近くで見るとマジかで見るとすごいな」


 慧は真に近づきながら興奮した表情で真に話しかけてきている。

 真としてはこの場で立って待っていただけなので何をやっていたのかは人垣で見てはいない。しかし、慧の顔をみてそれなりにはすごかったんだなとは理解はする。


 「蒼空は何処行ったの?」


 真は気にはなっているがまずはイベントの内容よりも車の中に行った蒼空の状況を確認する。

 

 「なんか今着てた服は自分のではなくて貸してもらっている服だから着替えに行ったぞ。着替えるからちょっと待っててだとさ」


 「そうか……それでさっきのは結局なんだったんだ?」


 「なんかミスコンの絡んでのイベントだったみたいだけど詳しくは聞けなかったけど。まあ終わったみたいだからもう大丈夫らしいぞ」


 慧の言葉にホッと胸をなでおろす真。

 そう思ったのも一瞬、なぜ自分が胸をなでおろしているのかにすぐに疑問が湧き自問自答する。

 何に対してホッとしたのか、そう考えただ答えはすぐには見つからない。当たり前のように出てきた感情に真は困惑し頭の中を混乱させた。

 しかし、蒼空の事をそう思うことに対しては不思議と嫌な感情は湧いてこなかった。


 真にとってはすぐでも意外と時間はたっていたようだ。

 慧に話しかけられ意外と時間が経過してたことを理解する。


 「おい! おい!! 真! 蒼空ちゃん出てきたぞ。なにボーっと突っ立ってんだよ」


 慧に身体を揺すられ意識を頭の中から現実に戻し車のほうに視線を向けるといつもの蒼空がこちらに向かって歩いて来ている。

 近づいてきた蒼空は真の傍まで来るとすぐに謝罪してきた。もちろん待たせてしまったことだ。


 「長い時間待たせてごめんね。真、慧」


 「気にしてないよ蒼空ちゃん。仕事だったんなら仕方がないよ」

 

 「そうだよ」

 

 「そう言ってくれると助かる」


 慧の言葉にすぐに真も同意する。そして、蒼空は二人の言葉に安堵しているようだった。

 待つことは待ったのだが仕方ないことである。

 因みに慧が仕事と言っているのは偽りのない事実から言っていることで、実際のところ蒼空はミスコンがらみの事は多少なりにお金をもらっているので間違いではない。


 「けど何でこんなことになったの?」


 真は気になったことを蒼空にぶつけてみる。元々こんな予定はなく突然の事だってので聞きたくなるのは仕方ないことだろう。


 「本当は違う子がやる予定だったんだけど体調崩したみたいで……。それで急にお昼頃に電話が着てやることになった」


 理由を聞いて慧は納得しているようだったがミスコンの事を知らない真は余りピンときてなかった様で蒼空に続けて質問を投げかけた。


 「違う子? 蒼空だけがこういうことをやるんじゃないの?」


 「違う。他にもいる」


 あまりにも簡単な説明に真は理解できていなかったが横から慧が補足説明を入れてくれた。

 

 「あのなー真。ミスコンで選ばれるのはミスだけじゃないんだよ。ミスと準ミス二人が選ばれるんだ。そして学校から依頼されて今みたいなイベントや行事なんかに出るんだが、基本的に多く出るのはミスに選ばれた子何だけど流石に一人では全て出ることができないからたまにこういうイベントなんかは準ミスの子なんかが出るんだよ」


 「はぁー……。なるほどねー」


 慧の説明を納得して聞きながらも流石に知らなさ過ぎかなと多少の恥ずかしさを覚える真。

 しかし、表情には出さず思いは心の中に留める。

 蒼空も慧も真がそんなことは思ってるとは感じなかったようで真はホッとする。もちろん同じく顔には出さずである。

 

 慧は真に説明した後、蒼空にこの後問題がないのかを確認をしてこれからの行動の話をする。

 当初の予定では十二時半に待ち合わせをし、どこかでご飯を食べて時間をつぶし十四時から始まるミスコンの予選に行くはずだったのだが蒼空の予定外の事で大幅に時間が過ぎてしまっている。

 時間を確認するとすでに十三時は過ぎておりあまり迷っている時間もなかったりする。

 救いとしてはここからミスコンの会場はあまり遠くないというのが唯一の救いであろう。

 三人は話し合いこれからの予定が決まる。

 どこかで落ち着いてゆっくり食べるという選択肢を止め、そこらへんにある適当な露天で食べ物を買いそれを食べたら会場に行くということで話は纏まった。


 話しが纏まると三人の行動は早かった。

 近くに露天があるのを知っていた慧に案内され、歩くこと三分ほどで露天が立ち並んでいた。

 三人はいかにも露天で売っているもの、たこ焼き、焼きソバ、フランクフルト、焼き鳥などの定番の物を買うと先ほどの広場に戻ってきた。戻る途中、自販機を見つけ飲み物もしっかり購入済みだ。

 

 もともとは憩いの場として普段からあるだけあってそこにはベンチがあり三人はちょうど空いていた四人がけのぐらいの長さがあるベンチに腰掛ける。

 左から順番に真、空き、慧、蒼空の順だ。

 これには真の事も関係しているが単純に食べ物の置くスペースが欲しかったということもある。

 

 慧が蒼空に食べ物を渡し、それぞれに行き渡ったの確認すると各々が『いただきます』を言って食べ始める。

 はじめこそ静かなものだったが真がふと気になったことを二人に聞いてみることに。


 「今日のミスコンは二時からって聞いたけど基本的になにするの?」


 ミスコンの事を全くわかっていない真だがそれは仕方がないこと。病気の対象となる女性達の美しさを競うものにそもそも興味が湧くはずもなかった。

 何の気なしに聞いた真だったが聞いていた慧は驚きの顔で真を見つめている。


 「ど、どうした? 何か俺変な事聞いたか?」


 「そりゃあ……まあいいや。ミスコンの事ね」


 慧が驚くのも無理はない。今までの真あればミスコンなどと言うものなんかには興味など示すわけがない。しかし、今慧の目の前で真が普通の顔で普通に聞いてきたのだ。これを驚かずにはいられない。

 慧は驚きを胸の中に閉じ込め真の質問に答えることに。


 「前にも説明したけどまずは学内のネットで予選投票が行われる。そこには自分で登録するのでもいいし、他人が登録するのも問題ない。蒼空ちゃんがそれだな。まあ、他人が登録したときは本人からの了承が必要だけどな」


 「私は梓に騙されたけど……」


 蒼空は真の説明の途中でボソッと言ってくる。慧は蒼空の言葉に苦笑いをしながらも続きを話す。


 「ま、まあ、それで登録された人達でまずは予選を戦うわけだ。毎年大体百人ぐらいがエントリーするらしいぞ。その予選は夏休み後から本戦までの長い期間やっていて、投票権があるのは学内関係者と学生だな。その予選で残るのは十人と前回のミス双葉から推薦された一人の合計十一人で本戦を戦うわけだ」


 「今回は梓を推薦した……」


 先程と同じように蒼空がまた呟く。慧も同じく苦笑いをしている。流石に真も二度目は慧と同じく苦笑いをするしかなかった。

 一瞬、慧の言葉が止まるのだが息を一つ吐くと再度話し始める。


 「……で、でだな。その十一人が今日の本戦でミス双葉を決めるわけだ。まあ、今日の本戦は見に行くから詳しくは見てもらえばわかるとは思うから今は詳しくは話さないわ。大まかで事はこんな感じだけど他になんか聞きたいことあるか?」


 「…………」


 慧は一通り説明を終わると真に何か他にないかと確認をする。真は今聞いた話しから何か他にないか考え込んでいるようで真からの言葉はなかった。

 慧は真が喋るのを待っていたのだがそこに蒼空が割り込んできた。


 「慧、少し足りない。今日で決まるわけじゃない。今日と明日で決まる」


 「えっ!? そうなの?」


 蒼空の言葉に一番に反応したのは慧だった。真も驚いているがそれは知らない事に対する度合いがあるので慧ほどではない。

 慧が知らないのは無理はない。実際、学園祭の予定スケジュールに書いてあるのは今日だけになっているのは間違いないからだ。

 流石に慧は気になったようで蒼空に聞いた。


 「それってどういうことなの? 予定表ではミスコンやっているのは今日だけでしょ? 他になんかあったっけ?」


 「今日で決まるのはとりあえず仮で、次の日に引継ぎしたら正式な決定」


 「あっ、そういう事ね……」


 蒼空の答えに納得するとともに心の中では落胆していた。

 真実を言っているのは間違いないが慧の期待を裏切るものだったのも間違いはないだろう。

 がっかりしている慧を他所に真が聞きたいことができたようで慧のほうに顔に向けると聞いてきた。


 「ミスコンに百人ぐらい出るって言ってたけど何でそんなに出るの?」


 「……基本的には名誉が一番だと思うぞ普通は。まあうちの大学のミスコンは他と比べれるとちょっと特殊だけどな」


 「特殊って……?」


 「そこは本人に聞いてくれ」


 そう言うと慧は蒼空のほうを目を向け真に促す。真もそれで理解したのか蒼空のほうに顔を向ける。

 蒼空は二人の視線を感じたが話を聞いていなかったのか口を動かし食べるのに夢中であった。


 「蒼空ちゃん。今、大丈夫? よかったら真にミス双葉のやってること真に教えてもらってもいいかな?」


 「ん? いいよ」


 口に入っているものを始末した蒼空は真のほうを向くとやっていることを話し始める。

 慧も蒼空に振ったのだが聞く気は満々のようで真剣な眼差しになっていた。


 「普段は学校のイベントに出たりとかしてるだけだよ」


 しかし、蒼空の言葉はそれだけで慧は座っていたところから滑り落ちそうになる。

 真も拍子抜けした表情で続きを待っていたのだが特に続きはなかった。

 流石に慧はほっとけなかったようで体勢を戻すとすぐに突っ込んだ。


 「それを詳しく話してくれるとありがたいんだけど……」


 「詳しく……詳しく……特にないけど」


 「はあ。そうなの慧?」


 「いやいや。そんなわけないだろ!!」


 「あっ、やっぱり」


 流石に真もわかっていたようだ。慧に聞いた後の答えはかなり早かった。

 溜息を一つ吐くと慧は蒼空の変わりに答えることにしたようだ。


 「うちの学校でミス双葉に輝いてイベントとかに行ったらお金もらえるんだよ!!」

 

 「それさっき言っていたじゃん……」

 

 「そうだっけ?」


 「ああ」


 なかなかのオーバーリアクション、座りながらであるがしていた慧に真は冷静に思い出し冷たく突っ込んでいた。

 慧は言っていた事を忘れていたようでオーバーリアクションをしたことに対して恥ずかしそうだ。

 

 「そろそろ行こうぜ」


 恥ずかしさを誤魔化すためなのが見え見えだったのだがその言葉も蒼空にバッサリと切られてしまう。


 「まだ食べ終わってないから」


 立ち上がってまで言った慧は蒼空の言葉にそのまま腰を下ろしおとなしく座りなおす。

 真はその様子を見て声をあげて笑い、蒼空はそれをキョトンとした顔で笑っている真の顔を見ているのであった。




 

 真が声をあげてベンチで笑っているのを遠くから見てる人がいた。


 「なんだか楽しそうじゃない真……」


 その言葉と共に優しい瞳で見つめているのであった。

お読みいただきありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ