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第21話

 蒼空の後ろについていく真。

 何処に行くかわからず蒼空はひたすら歩いていくだけだ。

 

 真は歩きながらも色々と予想を立てていた。

 前回はミスコンの会場に連れて行かれた。今回はどこか考えるがよくわからなかった。仕方ないので考えることを諦めもう一度直接聞いてみることにする。


 「蒼空、何処に行くか教えて?」


 「いいから付いて来て」


 蒼空はそれしか言わず唯ひたすらに歩いていく。

 これ以上聞いても駄目だと思った真はひとまず蒼空の後についていくことにする。


 蒼空はどんどん進んで行き、大学の敷地を出てもまだ歩いていく。

 大学の敷地を出たことに疑問を覚える真だが聞いても無駄だと思いそのまま付いていく事に。


 歩くこと数十分。


 見慣れた道を歩くに連れて真は蒼空が何処に向かって歩いているかわかってきていた。

 そこの場所は記憶にも新しいところで忘れるはずもない。


 蒼空はとあるマンションの前で歩みを止める。

 着いたその場所は蒼空が住んでいるマンションだった。

 五階建てのマンションでオートロック、管理人つきと防犯がバッチリなマンションだが真は蒼空がここに住んでいるのは知っているが部屋の場所までは知らない。

 送ったとしてもマンションの前までだから知るはずも無かった。


 蒼空は真が後ろを振り向き真がいるのを確認するとマンションに入ろうとする。

 しかし、真はその前に蒼空に声をかける。


 「ちょ、ちょっと待って」


 真の言葉にマンションに入ろうとした蒼空は真のほうに振り返る。


 「どうしたの?」


 「何で蒼空のマンションまで俺を連れてきたの?」


 「ん?」


 もっともなことを真は蒼空に質問するのだが当の蒼空はキョトンとした顔で首を傾げていた。

 大事なことだったので真はもう一度蒼空に聞くことにした。


 「い、いや……だから何で蒼空のマンションまで俺を連れてきたの?」


 「真に部屋に来て欲しかったから」


 「は!? なんで急にそんな事を思ったの? 意味がわからないんだけど……」


 真の顔には動揺と疑問がミックスされておりなんともいえない顔つきになっていた。

 そして、真の疑問には蒼空は答えてくれない。


 「いいから付いて来て」


 そう言うと蒼空はマンションの入口へ向かう。

 少し歩いてから後ろに真が付いて来てないのを確認すると、


 「早く付いて来て、真」


 声色を強くして真を促してくる蒼空。

 真はなぜそこまでして自分を部屋に連れて行こうとするのか考えてみるが全くわからず、そのまま付いていくことにするのであった。


 マンションの入口に入りエントランスのところにある自動ドワを開け、蒼空は入っていく。

 真も自動ドワがしまる前にくぐり向ける。

 次に見えたのがエレベーターだ。真は基本エレベーターのような密室空間は駄目なので階段を探して周りを確認する。すぐに階段は見つかったのだがそこは扉があり、扉の前まで移動した真はドワノブに手をかけるが鍵がかかっているようで扉はびくともしなかった。

 どうしようか考えていると真の様子を見ていた蒼空が声をかけてくる。


 「そこの鍵は共用の鍵がないと開かないから。五階の部屋だから先に行くから後から付いて来て」


 蒼空はエレベーターに乗り込むと先に行ってしまう。乗り込んで移動したのを確認した真はボタンを押し戻ってくるのを待つことに。

 蒼空の言葉通りエレベーターは五階で止まり、そのまま一階へ戻ってくる。

 戻ってきたエレベータに真は緊張しながらも足を踏み入れる。

 病気が発症してから密室になるものを避けてきた真は何年かぶりのエレベーターに感慨深いものを思いながらも五階のボタンを押す。


 エレベーターに乗り込みパネル表示のところに目をやる真。

 数字が上がるにつれて次第に自分の中で緊張感が増していくのを感じる。

 

 五階に到着し扉が開く。真はすぐには出られなかったが大きく息を吐き出し一歩を踏み出す。

 出るとすぐのところに蒼空が待っていた。

 真が出てきたのを確認すると蒼空は自分の部屋に向けて歩いていく。


 蒼空の住んでいるマンションは南北に長方形の形をしており一フロアに扉が対面状に三つづつある。そこの一番南側で東向きの部屋であった。

 蒼空は扉に鍵を差込ロックを開場して扉を開ける。そのまま蒼空は扉の中へと入っていくのだがここに来て真の中に心のブレーキのようなものが発生する。


 異性の部屋。

 実際のところ異性の部屋には真も入ったことはある。ただしそれは姉達の部屋であり肉親ということでもある。

 今回はそれとは全く違い、肉親ではなく友達。もっと簡単に言えば他人の部屋だ。そこの中に入るという事に対して躊躇いを扉の前で感じる真。

 

 なかなか入ってこないので蒼空が真の様子を確認するため顔を出してきた。

 

 「早く入ってきて」


 その言葉に真は覚悟を決め扉の中に入っていく。

 玄関で靴を脱ぎ部屋の中に入る。そこには蒼空らしい部屋が広がっていた。


 部屋の広さは結構広いようで間取りとしては1DKといったところでなかなかの部屋である。

 中の様子としては――見える範囲には一人がけのソファーがありそれにベットとテーブル、テレビ、冷蔵庫だけしかなくそれ以外は何も見当たらない。

 まあもう一つ部屋があるようなのでそちらに他のものがあるのであろう。


 真はキョロキョロしながら周りを確認し、一通り見終わるといきなりソファーに座るのも図々しいと思い床に腰を下ろす。

 もちろん警戒は怠らずに。


 蒼空は真に飲み物を出そうとしているのか冷蔵庫からペットボトルを取り出しコップに注いでいる。

 真は蒼空の様子を眺めていた。


 「どうぞ」


 蒼空はテーブルに飲み物ををもってくると真の対面に腰を下ろした。

 出された飲み物を一口飲むと真は蒼空に先ほど聞いたことを再度聞くことにした。


 「それで、なんで俺に部屋に来て欲しかったの? 答えてくれると嬉しいんだけど……」


 「……」


 蒼空は真の言葉に返事をしてくれない。まあ表情を見る限り話したくないと言う感じではなく考えが纏まっておらずどう話していいかわからないといった感じだ。

 真は蒼空が答えてくれるのを待つことにした。

 そして、真が飲み物にもう一口飲んだところで蒼空が口を開き話し始める。


 「……なんで真に部屋に来て欲しいと思ったのかはわからない。けどわかっていることが一つだけある……。それは私の事をもっと知って欲しいと思ったから。」


 「…………」


 開いた口が塞がらないとはこのことではないだろうか言わないぐらい真は茫然としてしまった。

 わざわざ部屋まで連れてこなくても知る方法などいくらでもあり、いきなり部屋に連れて行くなど少し男女関係に疎い真でも異常なことだと認識していた。

 しかし、そこは真としてもどう言っていいかわからずただただ茫然としているしかなかった。


 真の状況をみて蒼空がおずおずと聞いてきた。


 「何か変な事言った……かな?」


 「い、いや……まあ……うん……」


 真としては何か言いたいのだがただ頷くだけになってしまう。

 蒼空も真の言葉を聞いてどうしていいかわからないようで、そのまま顔を少し下げ項垂れてしまう。

 この二人だけで解決するには難しい問題だったようだ。


 真は何かを思い立ったようにスマホを取り出すと誰かに連絡をする。真は電話をかけながら立ち上がると蒼空からは聞こえないところへと移動する。

 蒼空は真の行動を不思議な顔で一瞬気にしながら見ていたが真の先ほどの答えを自分で導き出そうと考えこみはじめる。

 真がかけた連絡先はもちろん慧だ。


 通話口から慧の声が聞こえてくる。

 

 「いきなりどうしたんだ、真?」


 急な電話に流石に慧も驚いているような声色で聞いてきた。

 

 「実は――」


 真はそう切り出すと現在の状況と蒼空の言動を余すことなく慧に教えた。

 はじめ、話しを聞いた慧は笑っていたのだが真剣にどうしていいかわからないことを多少怒りながらも言ったところ慧は真剣な声になり真に色々と教えてくれた。


 最初のほうは細かいことを聞き色々と教えてもらっていたのだが、そろそろ一番大事なことを聞くことにした真。


 「それで一番大事なこと聞きたいんだけどいいか?」


 「なんだー?」


 「さっきも軽く話したと思うんだけど……蒼空にいきなり家まで連れてこられて、何でって聞いたら俺の事知りたいからって言われたんだけど、これって普通に考えておかしいことだよな?」


 「……そうだな。まあ普通に考えたらいきなり家には連れて行かないと思うけど……」


 「けど、なんなのよ?」


 「けどよー、あんまり蒼空ちゃんに普通って考えは当てはまらないと思うんだよな。そんなに長い付き合いがあるわけじゃないけどこれまでの付き合いからでも結構変わってるところあるから普通に行動するとは考えないほうがいいと思うぞ」


 「そ、そうか……」


 「まあ、お前を部屋に連れて行くってことは少なからず好意を持っているって取ることもできるけど……蒼空ちゃんだからなー、俺にはなんとも言えないわ」


 「やっぱりそうなるのか………………」


 慧の言葉に考え込んでしまいその後何もいえなくなってしまう。

 数十秒の沈黙の後慧が真に聞いてきた。


 「逆に聞きたいことあるんだけどいいか?」


 「……何よ?」


 「おまえはここまでしてもらっているけど、おまえ自身は蒼空ちゃんの事をどう思っているのか知りたいのだが……どうなんだ?」


 「おれ自身……」


 「そう、お前はどう思ってるんだ?」


 「俺は……」


 真はその後の言葉が続かなかった。

 何かが真の中にはあるのだがそれを言葉にするには今の真には難しかった。


 「まあ、お前には答えられないと思っていたよ」


 笑いながらも慧は真の答えを予想していたようで確信かのように言ってきた。

 真もそれには心の中で同意してしまい更に何を言えなくなってしまう。

 そして、慧は真にとって無茶なことを言ってきた。


 「今のお前はどうしていいかわからない事だらけだと思うけど、これがチャンスだと思って今の状況を楽しめ! そして考えて考えて考え抜いて自分で答えを見つけ出すんだな。見つけ出したときにはお前の眼の力も無くなるかもしれないしな」


 「……わかった。頑張ってみるよ」


 「あと追加で今日あった事今度会ったときにでも教えてくれよ?」


 「話せる範囲でな……」


 「じゃあ、頑張れよー」


 慧はそう言うと通話をきった。

 真は通話の切れたスマホの画面を溜息をつきながら見つめる。

 数秒見つめた後ポケットにスマホをしまい蒼空の元へ戻ることに。


 戻ってみるとそこには未だ考え込んでいる蒼空がいた。

 なんとなく声をかけづらかったのだが真が戻ってきたのに気がついた蒼空のほうから声をかけてきた。


 「誰と何を話していたの?」


 「慧とちょっと……」


 「そう……」


 真は聞かれたことに素直に答えることにしたが話していた内容は話しづらかったこともありそこの部分は教えないことにした。

 蒼空はそれ以上は聞いてこなかったが声の感じは幾分さびしさを帯びているようにも聞こえる。

 

 数分の沈黙が流れ、真はどう声をかけようか考えていたところ先に蒼空に声をかけられた。


 「お腹空かない?」


 蒼空に言われて真は窓の外を見るといい時間になっているようでかなり暗くなっていたし、意識すると結構お腹が減っていることを自覚する。

 

 「そうだね」


 「何か作るから待ってて」


 蒼空は立ち上がるとそのまま台所へ行き料理を始めてしまう。

 真は料理をしている蒼空の後姿を見てなんか嬉しそうに料理していると感じていた。

 何でだろうという疑問を覚えながらも先ほどの慧とのやり取りに思考を傾ける。

 

 『真自身が蒼空の事をどう思っているのか』慧のその言葉を真は待っている間懸命に考えた。

 考えれば考えるほど全くと言っていいほど考えは纏まってこない。

 普通の男として普通の生活、恋愛ができていればこんなに悩むことは無かったのだが、そこは真の病気のせいで女性は苦手あるいは敵と認識して育ってきたのだから仕方のないところではある。

 ただ、蒼空ほどの人物からいきなり家に連れ込まれてしまえば普通の男なら気後れしてしまうか飛びぬけて自信があるものであれば襲ってもOKと捉えられても仕方ないシチュエーションなのだから蒼空としては真だったのが幸運と捉えられるのかもしれない。


 悩んでいる真の向こう、台所では蒼空が料理を作っているのだが作っている料理の匂いがしてきたところで真の思考が止まる。

 漂ってきた匂いに記憶があったからだ。それもその匂いの記憶は最近かいだことのあるものだった。


 先ほどの思考は匂いに全てかき消され、真自身もお腹が減ってきたのを自覚してきたのを相俟って視線は料理を作っている蒼空の後姿に向けられていた。


 数分後。


 蒼空が作った料理がテーブルの上に置かれる。

 置かれた料理をみて真は驚く。作った料理は三品あったのだが一つはスープ、もう一つはサラダ、最後の一つは昼間学園祭の慧達がやっているブースで食べたカルツォーネだった。


 同じものが出てきたのも驚いたが蒼空にこれほどの料理スキルがあったことに真は更に驚いたのは言うまでもない。


 「おいしくないかもしれないけど……」


 蒼空は小皿を持ってくるとサラダを取り分け真の前に置く。


 「そんなことないよ。おいしそうだけど……けど何で同じもの作ったの?」


 真が聞いているのはカルツォーネのことだ。

 実際、本音を言えば流石に二食続けて同じものを食べたくは無かった。しかし、作ってもらった手前それはいえないので単純に疑問に思ったことを聞いてみた。


 「何でだろう……なんとなく」


 蒼空自身もなぜ同じものを作ったのかわかっていなかった。

 真はその言葉に苦笑いを浮かべるしかなかった。


 話はそれ以上続かず二人はとりあえず料理を食べることにした。

 真がカルツォーネに手をつけ食べようとすると蒼空がジーッと見てきた。


 「あ、あんまり見つめられると食べづらいんだけど……」


 「……」


 真の言葉は耳に入っていないのか蒼空はずっと真の食べるところを見ようを視線を逸らさない。

 諦めてカルツォーネを口に入れる。

 真は食べた瞬間目を見開いて


 「おいしいね、これ」


 満面の笑みで蒼空に言う真。

 それを見て蒼空はホッと胸をなでおろすと自分も食べ始める。


 二人は黙々と料理を食べ始め、時折軽く話しながらどんどん食べていく。

 数十分後には全て食べ終わり真はお腹をさすりながら満足感で一杯だ。

 昼間食べたものと中身が違っていたので真としてはありがたかった。


 そのまま蒼空は立ち上がり片付けようとするのだが流石に食べさせてもらって何もしないのは悪いと思った真は少し遅れて立ち上がると


 「このままじゃなんか悪いから片付けは俺がやるよ」


 「真は座ってていいから」


 「けど何か悪いよ」


 そう言って真はテーブルに置いてある食器を手に取ろうとするが……。


 「駄目」


 蒼空も取ろうとする。

 真が取る前に勢いよく取ったのがよくなかったのだろう、バランスを崩し皿を手に抱えたまま倒れそうになる。

 普段の真であればそんな状況になっても助けたりはしなかったのだが今日は違った。


 考えて動いたというよりは反射的に動いたといったほうがいいだろう。

 蒼空を抱きかかえるような状態になった瞬間、真の中で女性に触れていると考えが過ぎった後すぐに真の意識はブラックアウトするのであった。


お読みいただきありがとうございます

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