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赤翼のワイダー  作者: 忍絵 奉公


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第96話 師の庭、降る隕石


夕焼けの道を抜け,アリューとユウは、ブモーに乗って村へと辿り着いた。

「……着いたな」

「ここが、師匠の村だね。久しぶり」

ユウが周囲を見渡す。

どこか懐かしい空気。

素朴で、静かな場所。

「まずは――」

アリューがブモーを降りる。

「村長に挨拶だな」


村長の家。

「おお……アリューか!」

扉を開けた瞬間、驚きの声。

「久しぶりです」

軽く頭を下げる。

「今日は報告があって」

「報告?」

村長が首を傾げる。

アリューはまっすぐに言った。

「国を、作りました」

沈黙。

「……は?」

理解が追いつかない。

「王国を建立しました」

言い直す。

村長の目が見開かれる。

「お、お前が……王に……?」

「はい」

静かに頷く。

「……なんということだ」

椅子に座り込む村長。

だがその顔は、驚きだけではない。

「立派になったな……」

誇らしさが滲む。

しかしアリューは続けた。

「ただ……」

空気が変わる。

「父は……王国に殺されました」

その一言。

村長の顔が曇る。

「……そうか」

ゆっくりと目を閉じる。

「すまん……」

「いえ」

アリューは首を振る。

「だからこそ、変えます」

「……」

村長は何も言わなかった。

だがその目には、確かな想いがあった。


「ザックル師匠は?」

「家におるはずだ」

村長が指をさす。

「あいかわらずじゃ」

苦笑する。


その家。

庭。

そこにいた。

上半身裸。

筋肉は削ぎ落とされているが、芯がある。

杖を掲げ、目を閉じている。

「……」

空気が張り詰める。

アリューとユウは、黙って見ていた。

あまりに集中している。

声をかけるのもためらわれる。

その時・・

「そこにいては危ないぞ」

低い声。

目は閉じたまま。

「……え?」

自分たちに言われているとは思わない。

そのまま立つ。

次の瞬間・・ピュ~ン。

何かが落ちてくる音。

上を見る。

「……は?」

空から火の玉。

小さなそれが、いくつも降ってくる。

「危ない!」

アリューが叫ぶ。

剣を抜く。

ブモーが慌てて飛び上がる。

ユウは、すでに弓を引いていた。

「っ!」

次々に落ちる火球。

アリューが斬る。

バシュッ!!

一つ、二つ、三つ。

細かい火球を正確に砕く。

ユウが放つ。

矢が火球に当たる。

「爆ぜろ!」

ドンッ!!

爆発。

周囲の火球を巻き込んで消し飛ばす。

連携。

一瞬で場を制圧する。

そして静寂。


「おう」

軽い声。

ザックルが目を開ける。

「弟子たち、元気してたか」

まるで世間話。

「……」

アリューが固まる。

ユウも呆然。

「い、今の……」

やっと声を出す。

「魔法は……?」

ザックルは肩をすくめる。

「ああ」

「メテオストライクだ」

さらっと言う。

「隕石じゃよ」

ユウの目が見開かれる。

「……隕石?」

「そうじゃ」

当たり前のように頷く。

「儂はお前らと違ってな」

自分の胸を軽く叩く。

「4センチくらいの魔石しかない」

「……」

アリューが黙る。

だが・・

「これが5センチになれば」

ザックルが指を立てる。

「火球一粒、30センチ」

さらにもう一本。

「6センチになれば――」

少し笑う。

「3メートルくらいになるかの」

空気が凍る。

「広範囲攻撃じゃよ」

軽く言う。

まるで日常。

「……」

ユウは言葉を失う。

アリューも同じだった。

(これが……師匠……)

規格が違う。

グラナディスとはまた別の“技”の化け物。


「で?」

ザックルが首を傾げる。

「どうした、お前ら」

「……」

アリューが一歩前に出る。

言葉を選ぶ。

だがその前に

「まあいい」

ザックルが手を振る。

「まずは上がれ」

家を指す。

「茶でも入れよう」

いつも通りの口調。

まるで、昨日も会っていたかのような距離感。


アリューは、ふっと笑う。

「……はい、師匠」

ユウも小さく頭を下げる。

三人は家へ入る。

外ではまだ微かに、焦げた匂いが残っていた。

それはまるで、この先に起こる“何か”を静かに予感させていた。


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