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赤翼のワイダー  作者: 忍絵 奉公


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第12話:初飛行と月刃熊の襲来


 三日後の朝、山は冷たい霧に包まれていた。

 赤翼アルフェリスとブモーはすでに空を自在に舞い、翼を広げて稜線を駆け抜けている。その後を見ながら、スノウィルは地面から見上げていた。

 小さな白い体が、兄弟の飛翔を羨望の眼差しで追う。

「よし、今日こそ……!」

 アリュウが声をかけると、スノウィルは背中の羽を大きく広げ、走り出した。

 最初は足元のバランスを崩し、何度も転びそうになる。

 しかし、一度飛び上がると、その感覚を身体で覚えたらしく、鋭いフットワークで風を切る。

 アルフェリスやブモーの後を追いながら、岩場を縫うように旋回し、飛行のコツをつかんでいく。

「やった……飛べる!」

 ユウが歓声を上げる。

 スノウィルは嬉しそうに空中で羽を広げ、低く鳴いて喜ぶ。三人は互いに顔を見合わせ、成長を確かめ合うように微笑む。

 しかし、その平穏は長くは続かなかった。

 上空を舞うアルフェリスが突然、鋭く警戒の鳴き声をあげる。

 赤翼の鳴き声は遠くまで響き、地上の空気を震わせる。

「何だ?」

 アリュウが空を見上げる。

 裏山の林の影から、巨大な影が現れた。

 体高は三メートルにも達する巨大な熊。

 白く光る牙をむき出しにし、筋肉を隆々と震わせながら、村の方へゆっくりと迫る。

 胸には月光を思わせる刃のような模様が走り、月刃熊――冬眠前の餌を求めて村に現れると恐れられる存在だった。

「くそ……また、戦うしかない!」

 アリュウが剣を握り、シリューとユウも武器を構える。

 スノウィル、アルフェリス、ブモーも翼を広げ、低く唸りながら地上と空中の連携を整える。

 戦闘は即座に始まった。

 月刃熊は驚異的な力で突進し、地面を揺らしながら木々をなぎ倒す。

 小屋の残骸にまで影響するほどの威力だ。

 アリュウは剣で熊の足元を狙い、突進の勢いをそぐ。

 シリューは短剣で素早く脇腹や脚を突き、回避と攻撃を同時に行う。

 ユウは弓を引き、正確な射撃で熊の注意を分散させる。

 空からはアルフェリスとブモーが飛び込む。

 アルフェリスは空中から爪を振るい、月刃熊の視線を上へ引き上げる。

 ブモーは高速で旋回し、背後から体当たりするように接近。三人と三匹の連携は絶妙で、まさにギリギリの戦いとなる。

 熊は力強い攻撃を繰り出すが、赤翼二頭の俊敏さと地上の三人の戦術で、徐々に攻撃の余裕がなくなる。

 アリュウが大きく踏み込み、剣で熊の脚を斬り、シリューが短剣で耳の後ろを突く。

 ブモーが空中で体当たりを行い、アルフェリスが旋回して頭部に爪を当てる。

 ついに熊は力尽き、倒れ込む。

 三人と三匹は重い息を吐きながらも、無事を確認する。スノウィルは小さな体を震わせながらも、赤翼たちの勝利に安堵の声を上げる。

 戦いが終わり、静寂が戻った村の周囲には、倒れた月刃熊の影と荒れた地面、そして勝利を知らせる赤と白の翼が揺れる。

 三人は肩で息をしつつも、空を舞うワイバーンたちを見上げ、互いに無言で頷き合う。

「……これで、俺たち、本当に強くなってきたな」

 アリュウは低く呟き、握った剣の柄をしっかりと確かめる。

 ブモーとアルフェリス、そしてスノウィルの赤と白の翼は、勝利の余韻を背に、これからの冒険への希望を静かに告げていた。



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