第13話:月刃熊の恵みと奇跡の石
戦いが終わり、月刃熊の巨大な体が静かに横たわる。
三人と三匹は息を整えながら、その場に立ち尽くす。
倒した熊は脅威であると同時に、命を与えてくれた存在でもあった。
アリュウは深呼吸をして剣を地面に置く。
「……やるしかないな」
シリューが低く言った。
ユウも頷き、三人は熊の解体に取りかかる。
まずは毛皮だ。
地下室で読んでいた古い本を思い出す。
毛皮のなめし方――古代の知恵を頼りに、毛を剥ぎ、木の灰や樹液で揉み込み、硬い毛皮を柔らかくしていく。
作業は思った以上に骨が折れ、手は傷だらけになるが、三人は集中して作業を進めた。
次に肉の処理。切り分け、骨や内臓を分けていく。
焼きやすい部位を火にかけ、香ばしい匂いが辺りに漂う。
スノウィルは尻尾を振って喜び、ブモーは興奮して低く唸る。
アルフェリスも翼を広げて周囲を見回し、戦いの疲れを癒すかのように静かに身を震わせた。
解体の途中、アリュウは捨てようと思った内臓に手を伸ばした。
すると、肝臓の奥から何かが光を反射した。取り出してみると、それは丸く、美しいオレンジ色の石だった。
直径は約五センチ。滑らかで、光を受けると内部から温かい輝きが滲む。
「……なんだ、これ……」
アリュウは息を飲む。
シリューも覗き込み、ユウの目が一層輝いた。
アリュウは慎重にその石を拭き、ネックレス用に加工する。
穴を開け、丈夫な紐を通すと、オレンジの光が首元で柔らかく揺れる。
ユウに手渡すと、ユウは思わず微笑み、石を大事そうに握りしめた。
「ありがとう……」
ユウの声は小さくても、心からの感謝を感じさせる。
そして、熊の肉を火で焼く。香ばしい匂いが立ち上り、三人と三匹は空腹に耐えられず、口に運ぶ。
スノウィルも小さな体で前足を地面につき、アルフェリスやブモーも嬉しそうに肉をくわえる。
肉は脂が乗っていて、噛むごとに旨味が口いっぱいに広がった。
肝臓も特別に焼いてみると、香ばしく、野生の力強さを感じる味がした。
三人は黙々と食べるが、その目は互いを見つめ、静かな笑みが交わされる。
赤翼たちも3人と一緒に楽しそうに食べる姿を見せ、戦いの疲れと緊張が少しずつ解けていく。
夜になり、月光が山を照らす。ネックレスのオレンジ色の石が、ユウの胸元で柔らかく輝く。
その光は、戦いと努力の記念であり、また奇跡の象徴のようにも感じられた。
アリュウは思った。
「……この山には、まだまだ知らない力がある」
スノウィル、アルフェリス、ブモー、そして三人――仲間と命を共有し、得たものの重みを胸に、彼らは静かに夜を過ごした。
赤翼の仲間たちとともに、未来の冒険への小さな一歩を感じながら。




