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赤翼のワイダー  作者: 忍絵 奉公


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第90話 王の第一声


拍手と歓声が、まだ鳴りやまない。

その中心でアリューは一歩、前に出た。

王として、初めて民の前に立つ。

胸に手を当て、大きく息を吸う。

そして――

「私が、新しいこの国の王!」

一瞬で静まる広場。

「ワイダー・アリューだ!!」

歓声が爆発する。

だがアリューは、手を上げてそれを制した。

静寂が戻る。

「私は――この街が好きだ!」

真っ直ぐな声。

「私を強く育ててくれた、この街が好きだ!!」

人々の表情が、柔らぐ。

「皆を――幸せに導く!!」

力強い宣言。

アリューは続けた。

「だがしかし!!」

空気が引き締まる。

「王国は黙っていないだろう!」

ざわめき。

「我らは脅威とみなされる!!」

現実を突きつける。

「私は命は惜しくない!!」

その言葉に、誰もが息を呑む。

「そして、師であるグラナディスも同様だ!!」

空を見上げる視線。

旋回していた青竜が、一声鳴いた。

アリューは拳を握る。

「ゆえに、私は宣言する!!」

観衆が前のめりになる。

「第一に!」

指を高く掲げる。

「この国の名を――」

一拍。

「チェリーから――ワイダーチェリーとする!!」

「おおおおお!!」

歓声。

新しい名が、空に刻まれる。

「さらに!」

「今日この日を永遠の休日とする!!」

どよめきのあと・・一気に歓喜へ変わる。

「記念日だ!!祝え!!」

爆発するような歓声。

だが、まだ終わらない。

「そして!!」

声がさらに鋭くなる。

「この街に王国と対抗できる力を作る!!」

静まり返る。

「ワイバーン乗り、すなわちワイダーを育成する!!」

ざわっ!!

現実的な戦力の話。

「校長先生!!」

突然の指名。

群衆の中の校長がビクッとする。

「新たに“ワイダー科”を設立してくれ!!」

「は、はいぃ!!」

思わず返事。

周囲から笑いが起きる。

「さらに!!」

「民間からも希望者を募る!!」

「年齢・性別は問わない!!」

「給金は銀貨20枚!!」

「おおお!!」

現実的な条件に、ざわめきが一気に熱を帯びる。

「そして皆も知っている通り――」

アリューは広場の端を指す。

「大衆浴場には、オーガたちが働いている!!」

観衆がうなずく。

「彼らは知能が高く、身体能力にも優れている!!」

力強く言い切る。

「魔物でも生きられる国にする!!」

一瞬の静寂。

そして、どよめき。

価値観が揺れる音。

アリューはさらに踏み込む。

「変化を恐れるな!!」

拳を振り上げる。

「乗りこなせ!!」

その言葉が、広場に響いた。

その時、ドンッ!!

青竜が地に降り立つ。

グラナディスだ。

光に包まれ、次の瞬間、人の姿へと変わる。

だが。

「……あ」

服がない。

またしても、完全に丸裸である。

そのまま堂々とアリューの肩に腕を回す。

「よく言ったな」

キャーーーッ!!

悲鳴と笑いが同時に起きる。

天幕の中からシリューが飛び出してくる。

「ちょっと!!これ!!」

布を投げる。

アリューが受け取る。

グラナディスはまったく気にしていない。

「いらんだろ別に」

「いる!!」

アリューが即答。

慌てて腰に巻きつける。

なんとか最低限の体裁を整えた。

場が少し落ち着く。

そしてグラナディスが一歩前へ出る。

深く息を吸い。

次の瞬間。

「わしは――!!」

空気が震える。

「ワイダー・アリューの師である!!!」

轟音のような声。

広場全体に響き渡る。

一瞬の静寂の後、大歓声。

「おおおおおお!!」

「師匠だ!!」

「最強の後ろ盾だ!!」

空も地も揺れる。

そしていつの間にか、広場の端に露店が並び始めていた。

肉を焼く匂い。

酒の香り。

踊り出す人々。

歌う者。

笑う者。

ワイバーンが空を舞い新たな国の誕生を祝う。

それはもう、完全な祭りだった。

ワイダーチェリー。

その最初の日は、歓声と熱狂の中で、幕を開けた。



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