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赤翼のワイダー  作者: 忍絵 奉公


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第4章 ワイダーチェリー王国 第89話 戴冠の空


翌日、昼――

街の中央広場は、人で埋め尽くされていた。

子供、大人、冒険者。

商人、職人、そして――

校長先生の姿もある。

学校の子供たちも、目を輝かせて集まっていた。

ギルドの面々もいる。

そして空には――

四匹のワイバーン。

大きく円を描きながら、旋回していた。

「何があるんだ……?」

「領主から重大発表らしいぞ」

ざわめきが広場を包む。

中央には高台。

その横には天幕――控室。

昼の鐘が鳴る。

ゴォォォン――

その音とともに。

天幕が開いた。

ゆっくりと、うやうやしく。

サルダル領主とアリューが姿を現す。

二人は高台へ上がる。

領主が中央へ進み出た。

まず両手をあげて、観衆を制した。

そして声を張り上げる。

「この街、チェリーは――」

一瞬の静寂。

「王国から見放された!!」

ざわっ――!!

観衆が揺れる。

「現状、この街は――独立している!!」

さらにざわめきが広がる。

不安と、興奮。

「ゆえに我々は――」

拳を握る。

「これまで以上に結束せねばならん!!」

観衆のざわめきが、少しずつ収まっていく。

空気が引き締まる。

「そして!」

領主が胸を張る。

「実は――私がこの街の王だった!!」

「えぇ!?」

どよめき。

だが、すぐに続ける。

「だが、それでは足りん!!」

一気に空気を引き戻す。

「今まで以上に――強くならねばならんのだ!!」

静まる広場。

全員が聞いている。

その時。

領主が声を張り上げた。

「今、この場において宣言する!!」

一拍。

「我が町には――」

指を天幕へ向ける。

「あの!青竜グラナディス様がいる!!」

ざわっ!!

次の瞬間――

天幕が弾けるように開く。

ドンッ!!

現れたのは――

青き竜。

全長五メートルほどの姿へと変じたグラナディス。

翼を広げる。

バサァッ!!

一度、強く羽ばたくと――

ふわりと浮き上がり、空へ。

観衆から歓声が上がる。

「おおおおお!!」

ワイバーンたちも反応し、空で鳴いた。

領主が続ける。

「この方のお陰で!」

「王国すら手出しできぬ街――いや、国だったのだ!!」

歓声がさらに高まる。

だが。

領主の表情が引き締まる。

「しかし!」

声が重くなる。

「王国には――空軍がある!!」

観衆が静まる。

「ワイバーン乗りの部隊が――千!いや二千!」

ざわ……。

「グラナディス様をもってしても!」

「この数は……厳しい!!」

沈黙。

空気が張り詰める。

そして――

領主は、静かに言った。

「ゆえに私は――身を引く」

一斉に息を呑む音。

「この国の宰相となり――」

「新たな王を迎える」

完全な静寂。

その中で――

領主は、アリューの方を向いた。

「ワイダー・アリューに!!」

一瞬の間。

そして――

「おおおおおおお!!」

爆発的な歓声。

アリューを知る者は多い。

ワイバーンに乗る姿。

スタンビードを止めた男。

学校の貴族優位の制度をぶち壊した男。

期待が、一気に膨れ上がる。

横で、シリューとユウが小声で笑う。

「ワイダー・アリューって、なんか貴族みたいだな」

「なー」

アリューは苦笑いするしかない。

その時。

サルダル子爵が、部下から何かを受け取る。

丸い石。

直径十二センチほどの、透き通る美しい魔石――

(※実はただの綺麗な石)

領主が掲げる。

「これが王の象徴である!!」

「おおおお!!」

歓声。

そしてその石は――

座布団に乗せられたまま。

そのまま。

アリューへと差し出される。

「受け取れ!」

アリューは一瞬迷う。

だが――

ゆっくりと、受け取った。

その瞬間。

空から光が降り注ぐ。

グラナディスだ。

口を開き――

ふわりと、息を吐く。

キラキラと輝く魔法の粒子。

太陽の光を受けて、無数の光が舞う。

まるで祝福。

広場全体が、黄金色に染まる。

静寂。

誰もが、その光景に見入っていた。

やがて――

一人が拍手をする。

パチ……パチ……。

それが広がる。

やがて大きな波となり――

拍手喝采。

なぜか涙を流してるものが、何人もいる。

歓声。

「王様だ!!」

「アリュー様だ!!」

空にはワイバーン。

地には人々。

そして中央に――新たな王。

こうして。

ワイダー・アリューの戴冠が、世界に刻まれた。



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