第87話 門前の雷鳴
翌日、アリューとグラナディスは、サルダル子爵の屋敷へ向かっていた。
「……なんだあれ」
屋敷を見た瞬間、アリューが眉をひそめる。
高い石壁。
その上には、有刺鉄線。
「要塞かよ……」
庭の中にはざっと二十人ほどの警備兵。
門前にはさらに五人。
完全武装。
グラナディスは一言。
「ビビりすぎだろ」
そして、そのまま歩いていく。
止まらない。
門の前で、警備兵が槍を構える。
「止まれ!何者だ!」
「うるさい」
グラナディスが言った。
「どけ」
一歩も引かない警備。
次の瞬間ドンッ!!
軽く押した。
それだけで。
警備兵が吹き飛び、門に激突。
門が耐えきれず、バキィン!!
倒れた。
「……は?」
アリューが呆然とする。
警備兵の叫び声。
「曲者だァ!!」
その声で、庭の警備兵二十人が一斉に集まってくる。
武器を構え、取り囲む。
グラナディスはため息をついた。
「……めんどくせぇな」
完全にやる気がない。
アリューは慌てて前に出た。
「待て!俺たちは――」
両手を上げる。
「領主に会いに来たんだ!」
しかし。
「黙れ狼藉者!」
「門を破壊しておいて何を言う!」
「不審者め!」
まったく聞く気がない。
アリューのこめかみに青筋が浮かぶ。
(話にならねぇ……)
それでも堪えようとした。
だが、一人の警備兵が、アリューを指さした。
「その格好……変質者か!」
――ピキッ。
止まる。
アリューの動きが止まる。
「……今、なんて言った?」
低い声。
「変質者だろうが!」
言い切った。
完全にアウトだった。
「誰が変態だァ!!」
バチバチバチッ!!
空気が弾ける。
アリューの手に雷が集まる。
電撃が渦巻く。
地面の小石が浮く。
警備兵たちの顔色が変わる。
「ま、待て――」
もう遅い。
グラナディスが横目で見て、ニヤリとした。
(あーあ)
アリューが腕を振り上げる。
「話聞かねぇなら――」
雷が膨れ上がる。
「こっちもやり方変えるぞ!!」
その瞬間。
屋敷の奥から・・
「待てぇぇぇぇ!!」
必死な叫び声。
全員が振り向く。
豪華な服を着た男が、全力で走ってくる。
息を切らしながら。
顔面蒼白。
「や、やめろぉぉ!!」
サルダル子爵だった。
「その方々は!!」
転びそうになりながら叫ぶ。
「お、お、お客様だァァァ!!」
静寂。
アリューの雷が止まる。
警備兵たちが固まる。
グラナディスは笑った。
「遅ぇよ」
子爵はその場で膝をついた。
「申し訳ございません!!」
全力謝罪。
警備兵たちは青ざめる。
アリューは雷を消しながら、ため息をついた。
「……やっと話が通じる奴が出てきたか」
こうして――
王を決める話し合いは、最悪の入り方で幕を開けた。




