第76話 誤解された英雄たち
空の旅は順調だった。
出発から約三時間。
風を切り、雲を抜け、ただひたすらに前へ。
だが。
「……腹減った」
アリューがぽつり。
ユウも頷く。
「そろそろ限界」
シリューも苦笑する。
「着地するか」
アリューは懐から地図を取り出す。
広げる。
風でばたつく。
「この辺りに……」
指でなぞる。
「中規模の街、バンナドゥ」
決まりだ。
三匹はゆっくりと高度を下げる。
やがて見えてくる。
街。
中央には大きな噴水広場。
人の流れ。
市場の賑わい。
そして。
「……あれ?」
誰かが空を指さす。
「ワイバーンだ!!」
一人が叫ぶ。
次の瞬間。
ざわ……ざわ……
人々の視線が一斉に空へ。
三匹の影。
降下。
ドォンッ!!
噴水広場に着地。
静寂。
一瞬。
そして。
「おおおおおお!!」
歓声。
三人は固まる。
人が集まる。
一気に。
「ワイバーンライダーだ!」
「すごい……本物だ……!」
さらに。
「いつもご苦労様です!」
「ありがとうございます!」
「助かってます!」
三人、完全に困惑。
アリューが小声で言う。
「……なんだこれ?」
ユウも戸惑う。
「知らない人たちだよね?」
シリューが周囲を見る。
「なんか……祝福されてない?」
明らかにおかしい。
感謝。
称賛。
敬意。
だが。
理由がわからない。
アリューが苦笑する。
「まぁいい、悪い気はしない」
ユウも笑う。
「うん、なんか人気者」
シリューはまだ警戒している。
とりあえず、現実的な問題。
「なぁ」
アリューが近くの男に声をかける。
「ワイバーンをつなぐ場所、ないか?」
男がすぐに答える。
「あります!」
やたら元気だ。
「冒険者ギルドの隣の宿屋に厩舎があります!」
「そこなら安心です!」
「ありがとうございます!!」
なぜか深々と頭を下げられる。
三人が顔を見合わせる。
(なんなんだこの街……)
案内された方向へ向かう。
ワイバーンたちをゆっくり歩かせる。
その間も。
「かっこいい……」
「すごいな……」
「初めて見た……」
視線が痛い。
シリューが小声で言う。
「目立ちすぎだろ」
アリューが笑う。
「今さらだな」
ユウも苦笑する。
「もう慣れよう」
やがて。
ギルドの建物。
その隣。
宿屋と厩舎。
ワイバーンをつなぐ。
三匹とも落ち着いている。
ブモーが大きく息を吐く。
「よし」
アリューが伸びをする。
「飯だ」
ユウが即答。
「それな」
シリューも頷く。
「腹減った」
4人は歩き出す。
賑やかな街の中へ。
飯屋を探しに。
だが。
まだ知らない。
この街での“意味不明な歓迎”の理由を。
そしてそれが、新たな出来事を呼ぶことを




